Thursday, August 30, 2007

Saturday, August 18, 2007

Los Angeles>>San Francisco, 最終日

8月2日、移動日

予定より4週間近く延び、ようやくLAに向かう事となる。Salt Lake CityからLAまで約10時間の運転。UtahからArizona、Nevadaを抜けCaliforniaに入る。California州に入ってから約4時間でLAに着く。Arizonaに入ってからの景色には圧巻。グランドキャニオンからさほど離れていない所為か、それに似た地層の山々が高速を囲む。赤土の流れる川なども目に入り西部劇を観ているようだ。Nevada州に入ってもその景色はしばらく続く。渋滞を抜けるとLas Vegas。ベガスに入って直ぐ高速の右手に、California、NevadaとArizonaにしかないIn-N-Out Burgerを発見。Coadyがそれを運転手のJaredに教えると2車線横切り高速の出口へ1直線。In-N-Outを出て給油をして帰路につく。ベガスを抜けた頃から急に風が熱風と変わっていく。エアコンの壊れているこのバンの中は外より暑く思えた。幾つかの山を越えようやく暑さがましになってくる。LAについたのは10時前であった。


8月3日、Los Angeles、 California

久々にゆっくりした昼間。ラッシュアワーを予測して早めに出ることに。前座のTweak Birdの2人は近所であり、酒を飲まないので迎えにきてもらうように頼んだ。彼等のリハーサルスタジオに行き、機材積みを手伝い会場に向かう。サウンドチェックを済ませるとCoadyとJaredはあまり腹が減っていないというので自分はTBを連れて隣のタイ料理屋に夕飯を食べに良く。ここはお薦め。カレーも麺類も量こそ少ないものの、味は品があり、幾らでも食べられそうだ。とまた、やたらと食べて動くのが辛くなってしまった。

開場されるとさすがBBの地元ともあり、友人達の顔が見られる。BuzzとDaleも来てくれた。一つ目のバンドはJaredの友人でSan DiegoのヘビーロックバンドOaks。この時、ステージ前には半分を埋める客が既に来ていた。Tweak Birdの出番になると、はじめはTBの家族、そしてDaleと自分だけがステージ前に立つ。曲を重ねる後とに人が増え始め、終わる頃にはステージの前に大勢の客で盛り上がる。Buzzも遠くから目を離さず観ている。

BBの出番になるとはじめからステージの前に大勢の人が集っている。友人が多くいるため自分への声援も聞こえる。地元を意識した所為か始めの内はミスが目立つ。3曲くらいになりようやく調子が出てくる。演奏も客の反応もうなぎのぼり。客が楽しんでくれているのがはっきり分かる。多くの女性客はCoadyのドラミングに釘付け。最後から2曲目の"Eastern Romantic"では中間部いつもジャムをする部分があるのだが、そこでJaredはステージを降り観客の目の前で歌い始める。しばらくすると自分の前に座って歌うので自分も座ってギターを弾く。すると今度は腹ばいになって歌い始めたので自分も横になってギターを弾き始める。写真を撮っている人が多く思えた。Photo by Shiya Aoki

公演は大成功。ステージを降りる時、何人もの人が自分に声をかけてくる。でも今日は何かがおかしい。女性客から声をかけられたり、一緒に写真を撮りたいと頼まれたりする。いつもは髪の毛の長い、根暗そうな野朗どもから声をかけられるのが殆んどだが、この公演だけは違った。しばらくすると知り合いの女性が2人自分の顔を見て「トシが凄いロッカーだなんて、知らなかったわ」と同時にハグされる。そのうちの一人Jは自分が汗をかいていない事と体臭がないことに気付いた。すると彼女は「日本人の体質なのね」と勝手に決めつける。前にも書いたが昔から自分はあまり汗をかかない。決して日本人の体質ではない。日本にいる時も真夏に友人達は背中がびしょびしょになっているのに、自分だけ脇のしたが少し濡れているだけのような事がしばしばあった。こうした友人たちとのやり取りは店の者に追い出されるまで続いた。


8月4日、休み

ただダラダラと過ごしてしまった。


8月5日、San Francisco、California。最終日。

12時を過ぎ、CoadyとJaredがバンで迎えに来る。LAから約6時間。日曜で道は空いているかと思いきや日曜ドライバーが多く、高速をゆっくり走る者が多い。LAから1時間ほど走ると急に車の数は減り始めた。途中給油のためスタンドに寄った時、SFと言う事でJello Biafraに電話をしてみた。「BBが来る事は知らなかった。でも多分行くと思う」と言う返事が返ってきた。

会場に着き機材を運び、即、サウンドチェック。サウンドチェックをしていると携帯に何度か電話が入る。メッセージを聞いてみるとAltamontのベースのDanとJelloからそれぞれ一つづつ伝言が残っていた。Jelloに電話をかけなおすと他のバンドが誰だか知りたかったらしい。一番手がSFのバンド、Replicatorと言うと「えっ!好きなバンドだ。早めに行く」2つ目のバンドを話すと「え~!俺は奴等、あまり好きじゃないんだよな。まいったな~。順番がちがったらよかったのに」とわがまま。自分は「その間、楽屋で喋ってたら良いんじゃない」と言うと納得してくれた様子。Danとは2ブロックはなれたメキシコ料理屋で待ち合わせ。自分はそこでタコスを2つ頼む。Coadyが「ここのブリトは最高だ」と自分がタコスを頼んだ後に言ってきた。Danとは数ヶ月ぶりの再会。

開場され客が沢山入ってくる。Replicatorが準備をしているとJelloも到着。挨拶をすると数枚のCDのお土産をくれた。Replicatorのショーが始る。演奏技術もしっかりしているし、アグレッシブで非常によい。Jelloは自分の横で「な、いいだろ!」とまるで自分のバンドのように言ってくる。電話で話した通りにJelloは2バンド目のになると楽屋に来てCoadyと話している。自分はDanと話が盛り上がる。楽屋にはどのバンドの友人か分からない、バンドのメンバーでない人間が多くいる。狭い部屋でタバコを吸っているものが2人いたので外ですうように言うと、一人は「ごめん、ごめん。気を使わなくて」と言い即座に外にタバコを吸いに行ってくれる。もう一人は凄い目をして自分をにらみつけ外に出て行く。Jelloは「トシがそんなにタバコに敏感だったとは知らなかったよ」風邪の前兆か、喉の調子がおかしいことを伝えた。にらめつけた男に対して自分が「なんだあの野朗!」と言うと、Coadyが「トシがバンドの一員だって知らなかったんだろう。まあまあ」と自分をなだめる。険悪な雰囲気を作るつもりはなかったので「まぁそうだな」とそれを忘れて、Danとの話に盛り上がる。

このツアー最後のショーともあり3人とも気合が入る。公演は大成功。間違えも(少)なく非常に楽しめたライブであった。公演後、ステージで片づけをしていると何人かの客に話し掛けられる。一人の客と話しているとDanがやって来て、自分に別れを告げる。しばらくすると今度はJelloも帰ると言い出す。別れ際にJelloは「トシがこんなギターを弾くとは思わなかったよ。色んなタレント持っているんだなぁ」あのJello Biafraから言われた。"自信が付いた。明日からのショーはのって来れそうだ!"と思ったがこれが最後の公演。Jelloは家に泊まりに来いとも言ってくれる。Jaredは友人の家に泊まると言う。機材をバンに積んだ後、Jelloの誘いに甘え、CoadyとJello宅に厄介になる事となる。会場からさほど離れていないJello宅。Jelloは歩いて会場に来ていたらしい。都心からも離れていない、景色の良い丘の上にある一軒家。中に入ると階段だらけ。何階建てだかわからない。もの凄い量のレコード・コレクションは幾つかの部屋に広げられている。オフィスが何個あったか分からない。昔のホラー映画に出てくるような家だ。大抵、人の家に止めてもらう時、BBの面々と同じ部屋で寝ることが多い。が、Jelloの家ではCoadyと自分が違う部屋どころか違う階で寝ている。「良いタイミングで買った」とは言っているものの、とんでもない家である。話をし出したら止まらないのがJelloである。この夜も例外ではなかった。4時まで話は続いた。Coadyの3回目の「じゃ寝るわ」でようやく床についた。


8月6日、帰宅

寝る前「起きれたら一緒に朝飯を食おう」と言っていた夜行性のJelloを起こすこともなく、紙にお礼を書いてJello宅を離れる。またバンがかからない。だが今回は5分でかかった。Jaredとその友人Sとレストランで待ち合わせをして、食事を取り帰路に着く。いつもは5番高速を使っていくのだが、今日は少し遠回りをして海の見える101番を使ってLAに向かう。自分の最も好きな町Venturaに近づくとやっと見慣れた景色が広がってくる。3人はIn-N-Outのことを考えている。自分はVenturaに行く時必ず行くIn-N-Outがある。そこへ寄りちょっと早い夕食。ツアーの最初と最後の食事がIn-N-Outであった。そこから約40分で自分のアパートに夜の8時に到着。こうして約25000km、2ヶ月に及ぶ28州での38公演の旅は終了した。

Friday, August 17, 2007

Lawrence>>Denver>>Salt Lake City

7月28日、Lawrence, Kansas

Adamは今日を最後にOlympiaに戻る。彼と移動中、色々と話していた。Adamは売店で色々なことを客から聞かれたと言う。その中で面白かったのが「BBのギターの奴はMelt Bananaのギター(あがた氏)だろ?」と聞かれた事が何度かあったそうだ。アジア人は皆同じに見えるアメリカ人に対しての嫌味を込め、自分は「今度から"いや、違う。あいつはジャッキー・チェンだ!"って答えろ」と言うと車内は大爆笑。そんな話をしているうちに会場へ到着。機材を降ろし、サウンドチェック。開場後、出番まで時間があり、楽屋があまり綺麗ではなかったので、自分とJaredはホテルへ行き休憩を取ることにした。

ホテルから戻ってくるとAdamが「君等は今までで最も酷いオープニングバンドを見逃したよ」と言う。少し後悔。次のバンドはWhiskey Bootsと言うギターとドラムの女性2人組のバンド。ドラマーが1曲ラップ・スティールも弾くし、2人とも演奏がしっかりしている。かなり楽しんで観れた。客数はLittle Rockの時より少ないと思われる。自分の演奏は最初の2、3曲がいまいち。やけになりビールをがぶ飲みすると気分がよくなってきた。後半は最高の出来と言っていいほど良かった。数少ない観客も大喜び。公演後の反応で演奏の良さは分かる。多くの客が納得してくれたようだ。


7月29日、移動日。

Adamをシャトル・バス(空港行き)の停留所で降ろし、3人は今日の内に次の開催地Colorado州Denverに向かう。自分が運転をし始めると強い雨が降り始める。しばらく走るともの凄い音で数台のバイクが高速に入ってくるのが分かった。Hells Angels。アメリカでもっとも崇拝者(とでも言うべきか)の多いバイク・ギャング。1970年、The Rolling StonesがAltamont Speedway(無名バンド、Altamontの名前の由来でもある)で開いたコンサートにHells Angelsが警備員として雇われ、一人の男性客を刺し殺した事件はロック史上最悪の出来事とも言われている。自分はHAを肉眼で観るのは初めて。運転しながら写真を撮ると一番後ろにいたごっつい兄ちゃんが親指を立てて"Yeah!"のポーズ。20分くらい彼等の後ろを走る。8時間でDenverに到着。宿を抑え、飯を取り就寝。


7月30日、Denver, Colorado

当初は"The Simpsons Movie"を昼過ぎに観に行く予定だったが、Coadyが幾つかの用事を抱えていた為、それを諦め、残されたJaredと二人でホテルで映画を観る事にした。観たのはコメディー映画"Blades of Glory"。 映画を観終えた自分はホテルのベットで昼寝ならぬ夕方寝。Jaredに起こされ開場に向かう。サウンドチェックを済ませるとDeaf NephewsがプロデュースしたバンドAction Friendの連中が来ていた。CoadyとJaredはあまり腹が減っていないと言うのでAFの連中と夕飯を撮りに行く。会場の近所はあまり治安の良さそうな場所ではないが、会場から車で約2分くらい車で走るとかなりお洒落な街並みとなる。洒落たメキシコ料理屋でサラダなど軽い食事を取る。AFのベースのSは自分と同じ釣りキチ(自分は最近やっていない)。昨日あった事を自分に聞いて欲しいと言い出す。最近、昼間の仕事を釣具屋に転職したらしく、新しい竿を試して来いと上司に言われたらしい。山深く入り、人の気配すらなくなってきたと言う。ビーバーが多く見られる川を見つけ、そこでマス釣りをし始める。するとビーバーの群れからやたら大きい一匹がSの方に向かってくるといる。Sのところから30mくらいの所で泳ぎを止め川岸の岩に腰を降ろしたと言う。それはビーバーではなく熊であった。熊はしばらくするとSの反対方向へと消えていった。あたりが暗くなる前に山を降りようと帰宅し始めるS。大きな物音とともに自分の目の前に乗馬をした女性がSの前に立ちふさがる。馬が何かに驚いたらしい。Sが何があったのかと辺りを見回すと、Sの後ろにはクーガー(アメリカライオン)が草薮の中から顔を出している。前を振り返ると馬はいなくなっていて、女性は馬に放り出され地面にしりもちをついていた。そしてまた後ろを振り向くとクーガーはいなくなっていた。女性は立ち上がり携帯電話で馬が逃げたことと自分の安否を伝えると一人で山を降りようとする。Sがクーガーを見て馬が逃げたのではと伝えると彼女はSとともに山を降りることを決心した。と、滅多に見れない獣を2種見たと言う話であった。

会場に戻ると一つ目のバンドが終わっていた。多くの客が集っている。グッツ販売がいないのでBBの二人が交代で担当している。何故かロースト・ビーフ・サンドイッチが売られている。出番になるとAFの連中は最前列を占拠。自分がギターから変わった音を作って出すと、その弾き方をじろじろ見るAFのギターのJ。自分はそれに気付き後ろを向いて隠すように弾く。振り向くとJは笑っている。数曲が終わるとCoadyが「このツアーの終わりが近くて自分達はかなり疲れている。悪いな、半分くらいの力で演奏して」と冗談を言うとか弱いブーイング。男性客が「一番面白い冗談を言え」と言うとJaredが「...冗談...あるんだけど...日本人についての冗談だからな。今、制限されているんだよ」と言い自分を指差す。すると客は大笑い。続けてJaredは自分を紹介する。「(何に付いてかは分からないが)geniusだ!」とまでの誉め言葉に自分はふかぶかと一礼。その後調子にのって弾いていると最後の曲でタイミングを間違え大きなミス。直ぐにJaredの方を見ると自分を見て笑ってる。そして最前列のJを見るとJも笑っている。公演後2人にその間違えは酷かったか聞いてみると2人とも気付いてはいなかったようだ。自分が2人を見て間違えたのだろうと思ったと言う。知らん振りをするべきであった。自分はミスを隠す天才ではなかったようだ。


7月31日、移動日。

Colorado州を北上してWyoming州を抜けUtah州に向かう。Wyomingは人口が最も少ない州でその分大自然が広がる。高速以外は山と草原。空と山のコントラストが素晴らしい。自分はそれに見とれていながら運転。我に帰りバックミラーを見ると警察があとをつけていた。丘を下る時かなりのスピードが出ていたらしい。罰金$120。その女性の警官は「何をしにWyomingに来た?」と言うので、バンドで各州を回っている事を伝えると「Nice!」と言う。彼女は「バンドと言っても3人しかいなかったじゃない?誰か他に後で来るの?」と"ロックバンドは5人編成だ"とか決め付けて考えていたらしい。怒られているのか何だか分からないままチケットを切られる。その後、過ぎた事は気にせず安全運転でUtahに向かう。Utahに着いた時は真っ暗であった。


8月1日、Salt Lake City, Utah

昨日の内にSalt Lake Cityに入って為、時間が余っている。一行はバンのオイルを取替えに行く。オイル交換中、近くに楽器屋を見つけそこで時間を潰す。自分は$1でノーズホイッスルを購入。これがまた面白い。吹き口を鼻にあて、その穴は口の方へと繋がっている。つまり鼻で笛を吹き、その笛の音を口の開け閉めでコントロールしてノートを作っていく。見た目が凄く間抜けで良い。

そして2回の機会を逃した末ようやく観ることが出来る"The Simpsons Movie"。バンを取り戻した後、ネットで調べておいた映画館に向かう。待ちつづけたこの映画。最高だ!はしゃいで映画館の飾り物と記念撮影。大満足で映画館を出る。

夕方になり会場に向かう。プロモーターのJが挨拶に来る。Jは楽屋に夕食を用意しておくと言っていたのだが、それが用意されていない。とりあえずサウンドチェックをしようとすると、しなくて良いと言う。「サウンドエンジニアのEはいい奴だから大丈夫」と言う。早めに来た意味がない。それに人を紹介する時に"悪い奴"と紹介する事はなく、経験上"サウンドエンジニアは良い奴"と言う時に限ってろくな奴でないときが多い。それに初めて会ったのだがJの様子が何かおかしいと感じた。あまり腹は減っていなかったのでコンビニエンス・ストアーでサンドイッチを買ってきて、楽屋に戻ると、案の定、JとBBの二人がもめている。金銭的なもめごと。開場された後に客が入ると思わなかったのか、BBへの報酬を減らしたいと言ってくる。勿論、それはありえない話。Coadyがエージェントに電話をしてその件は片付いたものの、公演前に何とも険悪な雰囲気。

2バンド目のバンドが遅れていた為BBの出番が早くなる。Jの予想を裏切り、会場は多くの客が集っていた。機材を運ぶとき始めてサウンドエンジニアと対面。自分の予想は当たった。嫌な人間ではないかもしれないが楽をするタイプ。Coadyはいつものようにドラムをステージの前、つまりはベース、ドラム、ギターが横一線になるようにしようとすると、「ドラムは後ろに置いてくれ。音が悪くなる」と言う。ケーブルやモニターが後ろに置かれているから、それを動かすのが嫌なのだろうと自分は思った。BBと自分とはお互いを見てタイミングを取ったりする。Coadyが後ろにいては非常にやり難い。それにサウンドチェックを行っていない為、モニターからどう聞こえるかが分からない。案の定3曲目のエンディングで大きなミス。Jaredは「ああ~間違えたよ。まぁこう言う時もあるさ」と客に伝える。それでも客はのりまくっている。一人の中年っぽい(老けているように見えた)男性客が、最前列で曲が終わるごとに自分にビールでの乾杯を求め、自分に飲ませようとする。勿論自分はその度に飲んだ。モニターが聞こえ難い上、Coadyが醜かったものの、客とビールと”明日の夜にはLA"と言う気持ちが楽しいステージにしてくれた。

2バンド目のバンドがBBの後になったので早めに機材を片付けバンに詰め込む。多くの客が楽しんだと自分に声をかけてくれる。その中の一人が「2ヶ月ツアーだったんだって。自分のベットが恋しいだろう?」と言うので、冗談半分で「自分のコンピューターが恋しい」と言うと大笑い。ホッとした表情を浮かべるJに「心配しすぎたんじゃないの(嫌味)?」と言うとJは苦笑い。全ての公演が終了してグッスを詰め込みホテルに向かう。ホテルのテレビを付けると総合格闘技の番組がやっていたのでそれを観て就寝。

Thursday, August 16, 2007

Baton Rouge>>Little Rock>>Oklahoma City

7月23日、移動日

PaulとCheetieの家で午後一時まで寝てしまった一行。家を出た時には4時を回っていた。無理せず行ける所まで行こうと着いたのがAtlanta。この辺を行ったり来たり。Atlantaの南にホテルを取る。ホテルのフロントでやり取りをしているとバンの面々の所に自称"ホームレス"の男が現れる。「小銭をくれよ」「タバコくれよ」Jaredが少しの小銭を渡しても「これだけかよ。俺はホームレスなんだよ。I'm fu◯◯ed up(俺はメチャクチャなんだ)!」とやたらと強気な"ホームレス"。それにしては体格が良すぎる。筋肉むきむきのホームレスなど見たことがない。うそくさい。また治安の悪そうな所を選んでしまった一行。ゲート付きの駐車場を見つけその奥の方にバンを止め、遠目から機材を見えないようにした。


7月24日、Baton Rouge, Louisiana

高速は沼地のを横切って走るかのように川と沼が増えてきた。Mississippi川が流れる街の一つBaton RougeはLouisianaの首都でもある。会場Spanish Moonは都心からはなれ寂しい場所に位置していた。機材をステージに運びサウンドチェックを済ませ食事を取りに一旦会場を後にする。3分ほど走ると学生街となって人の姿も増え始める。The Chimeと言う店を会場の者から聞いていたのでそこに入る。ウェートレスが飲み物の注文に来たので, ビールは何を持っているか聞くと彼女は「A lot(沢山)!今、メニューを持ってくる」と言った。"また大袈裟だな"と思い彼女の持ってきたメニューを覗くと、決して大袈裟ではなかった。40種類前後はあった。その中から日本のヒタチノと言う地ビールを頼む。ちょっとフルーツっぽく自分にはあわなかった。それとは正反対で頼んだ料理は最高であった。Po-boyと呼ばれるLouisianaの名物料理。簡単に言うとシーフード・フライのサンドイッチ。自分が頼んだのはシュリンプ・ポーボイ。海老はあげられているのだが油が良いのか軽く、ソースがまたあっさりしていて美味い。このツアーで食べた物の中で最も美味しかったものの一つであることは間違えない。つまみにはワニの肉を炒めたもの。ワニ肉は以前、横浜の友人に食べさせてもらったことがあるが、その時よりやわらかく美味く感じた。確かその時はから揚げだった。

3人とも一日空き休養をとり,良いものを食べた所為か皆機嫌が良い。やたら広い楽屋でおおはしゃぎ。消防隊(又はストリッパー)が使うような滑り棒(正式名称不明)で記念撮影。ステージでもかなり気楽に演奏をしている。その雰囲気に流され自分も曲の間にキーボードでThe Whoの"Heinz Baked Beans”を弾くとJaredが"What's for tea, mom?" Coadyが”What’s for tea, darling?”とのってくる。女性客の一人が"今日は私の彼、Bの30歳の誕生日なの。バースデーソングやって!"と言うと、Jaredが嫌そうに"ハーッピバースデェートゥーユー"と歌いだす。自分がThe Beatlesの”Birthday"のリフを弾きだすとそれに続いてJaredが歌いだす。しばらくしてCoadyがドラムで続く。客は大喜び。BBの演奏に戻りしばらくすると自分の背後に数人いることに気付いた。ステージの上にいるので会場の者かと思いきやただの客であった。Coadyは迷惑そうにその連中をちらちら見る。自分も最初はやりにくかったが(ステージの前にいる)観客の雰囲気が自分を楽しませてくれ、ステージの上の連中のことをどうでもよく思うようになっていた。公演後ステージの上にいた連中に「なんでステージの上にいたんだ。今日の前座のバンド(観ていない)のメンバーか?」と言うと、ただ近くで見たかっただけだと言う。地元のバンドに入っている為BBの前座をやりたかったらしい。かと言いステージの上に上がるのはどうかと思った。


7月25日、移動日

Baton Rougeを発つ前にもう一度The Chimeで昼食をとる。Arkansas、Bill Clinton前大統領の出身地としても知られる。もの凄く田舎だ。大統領になりまわりからもてはやされ、舞い上がって秘書と寝てしまうのも何となくうなずけた。約6時間の運転でLittle Rockに到着。周りの田舎の景色に比べれば高層ビルが幾つか立ち並び大きくは見えるが、他の都市とは比べ物にならない。夕方の割合早い時間に着いたが何も遊ぶような所はなさそうなのでホテルでテレビを観てその夜は老けていく。ケーブルテレビでやたらとシュワルツネッガーの映画をやっている。"The Running Man(バトルランナー)"と"End of Days(エンド・オブ・デイズ)"を観て就寝。


7月26日、Little Rock, Arkansas

ダウンタウンまで歩いて行って見る。町自体は決して大きくはない。近くに川が流れていてやたらと橋がある。お洒落な路面電車も走っているし、舗装されているし、町並みも綺麗だ。でも特に観るようなところはない。ホテルに戻ってネットやテレビを観て時間を潰す。夕方になり会場へ向かう。会場のJuanita's Cantinaはバーとメキシカン料理屋とを経営していてかなり広い。楽屋は会場から離れた場所の2階。Coadyがリクエストしていてくれようで、地ビールが用意されていた。ドイツのPaulaner Hefe-Weissbier。これが苦味が強くあと味が悪い。でも何故か止められない。自分はタバコを吸わないがそんな感じではないだろうか。出番になり会場へ行く。集った客はこのツアーの中ではもっとも少なかった内の一つ。観客の数とは関係なしに演奏は納得の行くものとなった。来てくれた人々は大喜び。客が10人であろうと10000人であろうと喜んでもらえるのは嬉しいことだ。


7月27日、Oklahoma City, Oklahoma

Little Rockのイメージからまた小さい町を想像していたが、高い建物こそ少ないものの思っていた以上に人の数が多く見える。郊外と言った感じであろうか。Little Rockに比べ色んな人種も多く見られる。サウンドチェックを行い、サウンドエンジニアの勧めでヴェトナム料理やを探しに行く。バンで10分ほど走った所に数件発見。一番近くにあったものを選らぶ。ここを選んだのは良かった。久しぶりに食べる、あっさりとした麺類。皆上機嫌。Adamはスズメのから揚げを注文。自分は何度か日本の飲み屋で食べた事があったが、それらと同じように小さい鳥だけあって食べられる所が少ない。一つもらって食べるとこれが結構いける。日本で食べたものより美味く思えた。勿論、日本にも他に美味い所はあると思うけど...

会場には数人のMelvinsマニアが来ている。その中の一人、TはTの11歳の息子を連れて早々開場された時から待っている。Tは自分に色々と聞いてくる。自分の手がけた作品を気に入ってくれているようだ。ステージの熱気でBBが大汗をかきながらの公演はまずまずの出来。ちなみに自分は昔からあまり汗をかかない。だがそのステージは汗はあまりかかなかったものの息苦しくなるくらいの暑さだった。公演後、一人ステージ横で呼吸を整える為、座って休んでいると数人の客が声をかけてきた。その中に一人の女性客がいた。彼女は自分に向かって「あなたがBBの中で一番のお気に入り!」と言って来る。自分の使っている機材を気に入ったようだ。彼女はCircuit Bending(音の出るおもちゃやキーボードをショート・サーキットする寸前のところまで改造して、それらから変わった音を作り出す方法や楽器のことを指す)にも興味があり、自分も一台持ってきて使っていたので、それについて話をしたかったらしい。自分が作った物がもしあまっていれば売って欲しいとも言われた。頭の中では"カチン!カチン!"とレジスターの音が鳴り響く。彼女との話を済ませると2バンド目、Whiteshipのドラマー、Bが自分の所にやってくる。BBの前座を勤められた事でかなり興奮している。それ以上にMelvinsの大ファンだそうだ。最も気に入っているアルバムがHoudini Liveで、その中でも"Sky Pup"が気に入っていると言う。自分がエンジニアをしたと伝えると、Bは一言「うそだね!」"Sky Pup(Houdini Live版)"の歌詞の内容を伝えると「うそだ~。絶対信じないぞ~」と頑なに自分がMelvinsと仕事してきた事を否定しようとする。「家に帰ってCDのクレジット見てみろよ」と言うとようやく納得し始める。すると「じゃ、それが本当だったら、トシに次のアルバムを作ってもらいたい」と言ってくる。またもや"カチン!カチン!"。自分がツアーに出る理由に、このようにバンドに出会いスタジオの仕事につなげると言う事もあった。"ライブも営業だがライブ後もまた営業"と言う事を再確認した夜であった。

Tuesday, August 14, 2007

Charlotte>>Atlanta>>Carrboro

7月18日、移動日

Toolのショーをやる為、当初の予定のBoltimore以降の公演は全てキャンセルした。だがAlabama州Birmingham公演以外全ての公演を日にちを換えて埋め合わせが出来た。明日はNorth Carolina州Charlotte。この公演だけは当初の予定にはなく突然決まった。Holmdelから656km。7時間走ったVirginia州South Hillに宿を取る。部屋にDVD付きのテレビがあり、Coadyが買っていた"Reno 911"を観て就寝。


7月19日、 Charlotte、 North Carolina

ベースキャビネットの換えのスピーカーをCharlotteで見つけ、それを購入した後ホテルを取る。BBは何度か会場のMilestoneでは公演を行っていて、会場の近くの通りを何となく覚えていた。ホテルの駐車場に着くと男が全長1メートル50センチはあろうニシキヘビをクビにぶら下げて歩いている。あやしい。ホテルのキーをフロントからもらい裏の駐車場に回ると2台のパトカーが止まっている。ホテルの階段近くで警官に見つからないよう隠れながらそれらを見ている男もいる。大丈夫であろうか。ホテルに荷物を置き会場に向かう。

会場はホテルから1kmと離れていない。辺鄙な所にある。ここ数週間、Toolが選んだ大きな会場を見慣れていたため、久々に戻る小さな会場。その中でもここはよりファンキーに感じられた。会場の横にはまた他の警察がパトカーを止め住民と話している。あとで聞いた話だが、安否は定かではないが少年がその日の午後、この近所で打たれたらしい。警察が多いわけが後になってわかった。会場に機材を積み込む。Toolのツアーではこの作業をしていなかった為皆の体はなまっていた。Jaredは「俺達はSoft(やわ)になった」とそのだらけ具合を認める。オーナーのNが挨拶に来る。BBはNと仲が良い。Nのお母さんの手作り料理がこの会場の名物でもある。それを予めリクエストしておいた。ケージャン料理。辛いイメージがあるがさほど辛くない。辛い物が苦手な自分でもなんなく食べる事ができる。スパイスの効いたBBQ。やわらかく拭かされバターのかかったトウモロコシ、インゲンの煮物。どことなく日本の家庭でも食べれそうとは思ったが、やはり違いはスバイスとジャンバラヤ。

このショーはもともとヘッドライナーが決まっていて、BBはその後に追加された。ヘッドライナーのバンドはBBとはちょっと違う感じの軽いのりのバンドであった。そのバンドを観にまあまあの数の客が集っている。BBの出番になって帰ってしまうものもいたが、1週間くらい前にきまった公演にもかかわらず、BBを観に来た者、他のバンドを観に来たついでに残る者と、なかなかの人数の前で演奏する事となった。久々の観客との一体感。大きな会場も良いが反応が分かり易い小さな会場への思いも格別だ。Toolとのショーでは最後の2曲を省いていた為、数週間ぶりに弾くその2曲。Jaredはその曲を演奏する事にかなり自信なさそうに言っていたがそれをなんなくこなす。何とかなると思っていた自分の方が間違えてしまう。だが全体的にはショーは大成功。ステージを降りると多くのファンから握手などを求められる。中には「(地方で良いバンドがめったに来ないからと言う意味をこめて)来てくれてありがとう!」と言って来た客も多かった。ビールを買ってきてくれた者もいた。ステージを降りた自分はもらったビールを飲み終え、またバーに行き次の飲み物を注文する。その時カウンターの上にドンと置かれた拳銃を見てこの地域の治安の悪さを再確認。バンに機材を残しホテルの駐車場に止めるのは危険と判断し、機材を会場に残し、明日の朝取りに来る事にした。


7月20日、Atlanta, Georgia

BBの友人であり、今日のショーのプロモーターでもあるHの家に向かう。今日は彼の家にやっかいになる。家で少し休憩をした後、会場のThe Drunken Unicornに向かう。機材を運び、サウンドチェックを済ませ、少し早い夕食を取りに会場の直ぐ隣のLocalと言うBBQレストランに入る。南に下ってきた為暑さが増してきている。その所為もあり自分はさっぱりした物を食べたかった。メニューの中で最も軽そうに思えたチキンBBQサンドイッチを注文。これが大当たり(美味いと言う意味で)。タレもしつこくなくサラダも一緒に撒かれ、ビールにも合う。

ショーが始ると多くの客が会場に集る。今日は4バンド構成で、2バンド目が演奏する頃には会場は満員。その中に今アメリカで人気のあるAtlanta出身のメタルバンド、MastdonのギターBrent Hindsも着ていた。BBとBrentは以前から交流があり、Mastdonのツアーの前座のオファーもあったとか。Coadyは自分にBrentを紹介するものの「話が長いから気を付けろ」と耳元で囁く。確かに長い。どこできれば良いのか分からない。「トシ。俺にギター弾かせてくれ。俺はBBが大好きなんだ。俺の家に残っていいから、代わりに俺にBBのツアー行かせてくれ!」とまで言う。「じゃ、今日、飛び入りしろよ!」と言うと快く承知する。と思いきや「あっ、俺、曲知らないよ!」Jaredが「じゃ、口笛でも吹いてくれ」と言うとBrentは大喜び。だがBrentは結局ステージには上がらず、しばらくBBを会場から観ていた後、楽屋で友人と話しこんでいたらしい。

ショーはまあまあの出来。Coadyは疲れが溜まってきたようで、ステックを3、4度落とすくらい、今まで観たことのないほど演奏に現れていた。Jaredはと言うと、公演前に「"...Something Cry About(最後の曲)"は思ったより簡単だったな」と大きな事を言ったものの、その曲の時にJaredのみが章節数を間違え3番の歌詞を早く歌い始めていた。自分は自分が間違えたと思い、公演が終わった後Coadyに「最後の曲、なんかおかしかったよなぁ?」と言うとJaredが間違えた事と断言してくれた。


7月21日、Carrboro、 North Carolina

埋め合わせのショーで、会場のスケジュールに無理やり合わせたこともあり、またNorth Carolinaに逆戻り。日が落ちた頃会場に到着。BBはこの会場でも以前公演を行った事もあり、近くのレストランを薄っすら覚えていると言う。その2人の意見は全く当てにならず結局歩いて探す事に。タイと日本料理のレストランを見つけそこに入る。自分の意見で1品づつ頼み皆で分けて食べることに決定。Jaredと自分の頼もうとしたものが重なり、自分は「じゃ、皆で同じ物頼んでそれを皆で分けよう」と言うと、皆、大爆笑。このところBBQなどが続いていたので、久々に食べるタイカレーやヌードルは全く新しい物のように感じられた。ちなみにそこで飲んだビールがYuengling。タイ料理屋と名前の響きから勝手にタイの飲み物だと思い込んでいた。これはPennsylvania州Pottsvilleの伝統のあるビール会社で作られている。でも軽くて好きにはなれなかった。

会場にはその半分を埋めるくらいの客が集っていた。その中にBBの旧友でBirds of Avalon(http://www.myspace.com/birdsofavalon)と言うロックバンドのPaulとCheetieが駆けつけてくれた。彼等とは前回のツアーのSxSWで会っている。今日は彼等の家に泊まらせてもらうことになっている。公演は3曲目のエンディングでCoadyとJaredのどちらかがカウントを間違えミスをしたものの、全体的には納得の行くライブであった。公演がそのミスの原因をお互いに責め合ってたのが笑えた。Paulはステージに下りた自分に「今までBBのショーで一番良かった。トシの役割は大きいよ」とまで誉めてくれた。BBを長年見つづけてきた人間にそう言われて自信が少し出てきた。

Albany>>Reading>>Holmdel

7月14日、Albany, New York

予めホテルを予約をしていたのでホテルに直行。今日は友人が来るので皆で泊まれるように自分も一部屋予約しておいた。流石はNew Yorkの首都のど真ん中にあるホテル。今まで泊まったホテルとは比べ物のにならないほど清潔感があり豪勢だ。自分は荷物を置いて一人で会場に向かう。会場はホテルから徒歩2分。楽屋でギターの練習をして時間を潰す。サウンドチェック前になりCoady、JaredとLAから遊びに来たJaredの彼女S が到着。あとはいつもどおりに行われショーも好評。Toolの公演もいつもどおりに盛り上がる。

後2日の公演でこの夏のToolのUSツアーは終了する。そのこともあり、今日はToolの公演終了後パーティーを開くと言う。観客が全て会場を出たのを確認して自分たちも一度ホテルに戻る。綺麗なホテルのエレベーターのど真ん中に大きな下呂が。多くのToolファンもこのホテルに泊まっているようだ。一休みした後また会場に向かう。Toolの面々、クルー達と飲んで騒ぐ。Coadyはかなり酔っていた。明日は短いが運転を控えている自分達は1時間ちょっとでそこを去った。ホテルに戻ったときエレベーターの中の下呂はきちんと掃除されていた。


7月15日、移動日

明日の公演がPennsylvania州Readingとさほど遠い距離ではないので皆New Yorkの友人の家などでバラバラになり過ごす事にした。運転好きのCoadyは都会での運転を嫌っているようだ。東京の運転に慣れていた自分がNYの人込みの中を運転する事に。BBの友人Reubenとも再会。Coadyと3人でReubenの家の近くのバーに飲みに行く。そこでまたお気に入りの Brooklyn Lagerを飲む。その後は自分は他の友人の家に行き、そこへ泊まり、明日の朝地下鉄でReubenの家で待ち合わせすることにした。


7月16日、Reading、Pennsylvania

地下鉄でReubenの家に向かいそこからCoadyとホテルに泊まっているJared達を迎えにいく事に。またもや自分の運転。 Chinatownのホテルに泊まっていたJaredとSを拾い、大都会の人込みとおさらばする。SをNew Jersey州New Wark空港で降ろしSはLAに向かう。Pennsylvania州に入りReadingへ繋がる高速を見つけるが工事中で閉鎖されている。地図で一般道を調べながら予定より少し遅れて会場に到着。楽屋に入るとビールが既に用意されている。Molson Coors Brewing CompanyのBlue Moon。甘味が強いがあと味はそれほど悪くない。しばらくするとケータリングの飲み物担当のZが楽屋に来て「今日は地ビールもう一本見つけたから持ってきた。俺も後で飲んでみるけど感想を聞かせてくれ」と言い, Pennsylvania州Adamstownの会社、StoudtsのSmooth Hoperatorを持ってきてくれた。これは果汁の味が強くカクテルのようで、自分はこのツアーで飲んだ中、最も好きになれない味であった。せっかくZ が用意してくれたが正直にそれを話すとZも試すのをやめておくと言った。

BBの出番となる。演奏は自分達も納得が行くくらいうまく行っていたのだがブーイングこそなかったものの客の反応はいまいち。同じ州の PhiladelphiaのBB単独公演では客が狂っていたと言っていいほど盛り上がっていたので、その分期待してしまった。だが曲を重ねるごとに歓声は次第に大きくなっていく。そこでJaredは最後から2番目の曲で「ブーイングしてくれると良いんだが」と客にリクエスト。曲が終わると同時に大ブーイング。最後の曲が終わっても同じようにブーイング。しばらくするとその半分くらいが歓声に変わったものの、中にはやけになって罵倒している者も数人いた。その中の一人が半端ではなかった。ステージで片付けをしていると「早くToolだせ。お前達は最悪だ!」と会場の全ての客が聞こえるような声で叫び続ける。だがその男はこう続けた「お前達は酷い。もう2度と観たくない!けど何かくれ~。ドラムスティックくれ~」自分は笑いながらステージを降りようとすると「なんだよ。お前等!ピックくれ。なんでも良いからくれ~」と言い出す。機材を降ろし終えた自分はバックからピックを一枚取り出しその男の方へ向かう。 Jaredも同じ行動をとる。Jaredと同時にその男にピックをあげるを男は「君達は素晴らしいよ!Toolのコンサートなんども観たけど、前座は君達が一番よかった!」と小声で話し掛ける。笑いながら礼を言ってその場を立ち去ると男は「早くTool出せ~」と続けた。

Toolの公演はいつもどうり大盛況。会場から車で約40分の町でWhitehallにホテルを取り会場を出てそこに向かおうとする。まただ...バンがスタートしない。今度はNew Yorkの時と違い幾ら待っても全くウンともスンとも言わない。会場の係りのものが心配になって車を開けて調べようとしてくれる。その中の一人は車にかなり詳しい。マニュアルを見てああでもないこうでもないと。それでも部品を取り替える必要があるから牽引しないとどうしようもないと言う。明日は移動日で休みなため、とりあえず保険会社に電話をしてホテルまで牽引してもらい、明日なってから修理工に持っていくことにした。Jaredが牽引車に乗ってホテルに向かい、自分とCoadyは会場の係りの者に送ってもらう。悩みを抱えて床に着く。


7月17日、移動日

朝起きてバンのエンジンをかけようとしてもかからない。たまたま歩いていける距離に大手カー用品店のPep boysがあった。Pep boysには必ず修理工も備えられている。牽引を頼みバンを診てもらう。2人はバンのことが心配であまり眠れなかったようだ。夕方に近くになるとPep Boyから電話が入る。バンを診ようとエンジンをかけたらかかり、一応調べたがどこも悪くないと言う。結局バンは修理されないままBBのもとに戻ってきた。このWhitehallと言う町はBilly Joelの曲でも知られるAllentownの直ぐ隣にある。一行は戻ってきたバンでAllentownにレストランを探しに行く。だが曲の歌詞にも表されているよう、とても活気に溢れている町には見えず、めぼしいレストランも見当たらなかった。結局Whitehallに戻りメキシコ料理屋を見つけそこで夕食を取る。そらにはLAでは見られないいわし雲が。それを見ながら自分の頭の中では”Allentown"が流れつづけていた。


7月18日、Holmdel, New Jersey。Tool公演最終日

明後日からまたBBの単独公演が始まり、Dustyに代わるグッツ販売の者が必要だった為、JaredのOlympiaの旧友Adamが駆けつけてくれる。New JerseyのNew Wark空港までAdamを迎えに行く。会場は空港からさほど離れていなかった。が会場に近づくと大雨が降っていた。午前中から降っていたらしく、その所為で機材の取り入れも遅れていた。また野外だった為屋根のない所の席の客のことが気になったが開場の時間になると雨はすっかりあがっていた。

雨の影響か客の入りも遅れている。それでもBBを観た客は喜んでくれている。最後の曲になると上空からなにかが落ちてきた。一瞬発泡スチロールの雪にも見えたが...ポップコーンだ!しかももの凄い量。後ろを見ると覆面をかぶった痩せた二人組みが工業用の扇風機を使ってポップコーンを舞い上げている。覆面をかぶっていてもAdamとJustinであることは直ぐに分かった。自分のペダルボックスはポップコーンで埋まっている。しかもそれと同時にまたもやJaredのメインスピーカーがやられてしまった。曲はメチャクチャになった状態で終わってしまったが最後と言う事でステージ前に立ち観客にお辞儀をする。Coadyは客席に降り客に挨拶。自分はJaredに頼みスノー・エンジェル(雪の上に仰向けに寝て両手で雪を掻き分け羽に似た模様を作る)ならぬコーン・エンジェルを作っている所をカメラに収めてもらった。この後の片付けは大変なものとなった。

楽屋に戻った一行はToolへの逆襲の案を練り始めた。逆襲は3人でドラムバトルに参加することとなった。3人が準備をするのを見たクルーも大喜び。誰かが買ったソンブレロ(メキシコの帽子)が何故かステージ横にしかも3つあった。クルーからそれを渡され”Three Amigos(サボテン・ブラザース)"のように登場する。自分はステックと鉄のパーカッション、Jaredはカウベルを持ってCoadyの両脇に立つ。それを見たJustinとDannyは大笑い。MaynardとAdamは"聞いていない..."と言うような顔をして2人でこそこそ話し出す。話を終えるとAdamは自分を見てクビを横にふって"Japanese..."と口が動いたのが分かった。笑いたかったがステージの上だったので堪えた。この時点でかっこよくするはずのバトルを笑いに変えたので逆襲は成立したように思えた。自分とJaredはドラムバトルの邪魔にならない程度の簡単なリズムを刻む。自分はCoadyとDannyの間で彼等のアイコンタクトの邪魔にならないよう気を配らなければいけなかった。Coadyのソンブレロはいつの間にかに床に落ちていた。Coadyがドラムバトルに参加するようになって3回目あたりから、そのパートでは観ること意外なにもしないMaynardは工業用の扇風機を使い、これまた工業用のトイレット・ペーパーを舞い上がらせ客を喜ばしていた。ここ2公演、それをCoadyのドラム目掛けて舞い上がらせていた。今日もCoadyのドラムはトイレット・ペーパーで埋まってしまう。バトルが続きいつもはそのまま曲に流れ込むのだが、今日は最後という事もあり、曲の途中ではあるがバトルが終わった時点でCoadyとDannyは席を立ち硬い握手を交わす。その近くにいた自分を見てDannyは笑顔で"もっと叩け、もっとやれ~"。Coadyはトイレット・ペーパーをドラムから取り除きそれを自分の頭の上に。Dannyのリクエストに反してそれを知らずに引き際と思ったJaredがソンブレロを客席に投げステージから下がる。それを見て見た目のバランスを考えた自分はトイレット・ペーパーを抱えたままフェイドアウトしていくように後進してステージから去る。それを見ていたJustinは大笑い。負け時と思ったかJustinはCoadyが落としたソンブレロをピックとして持ち替えベースを弾き始める。客も大喜び。

こうしてToolとBig Business最後の公演は幕を閉じた。多くのクルーは明日の朝の飛行機でそれそれの家路に着く為パーティーはなし。BBの単独公演に戻るので機材をバンに詰め込み出発の準備。JustinとDannyと楽屋で長話をした後、クルー達に別れを告げ会場を離れる。そこから30分の所にホテルを取っていた。 Adam以外は皆多少酒が入っていたので運転はAdam。自分は突然、New Jerseyと言う事でBon Joviの曲を歌いはじめる。Jaredも一緒に歌い始める。それを止めるかのようにCoadyがPoisonの曲を歌い始めJaredがそっちに乗り出す。その後は80年代ヘアー・メタル・バンド・ソングが次から次へとバンの中で合唱される。Extreamの"More Than Words”になった時、皆が曲と歌詞をはっきり覚えていず、だらしない合唱となり、Adamに「お前等プロの音楽家だろ?」と言われ、皆返す言葉を失いバンの中でのライブも終了。その直後、ホテルを着き明後日からの単独ツアーに向け深い眠りにつく。

Sunday, August 12, 2007

Mansfield>>Portland

7月8日、移動日

Huntingtonを出て次はカナダで2公演続くのでまた国境近くのBuffaloに向かう。自分はまたもやアメリカで待機。昼食を取るためにレストランを探す。Jaredがこの旅の始めの方で手に入れたアメリカの定食とでも言うべきか、南部料理というのか、チェーン店Cracker Barrelの地図を見る。州と高速の出口の番号が書いてある為に非常に見つけ易い。10分と経たないうち1軒を見つける。そこで昼食。以前BBの春のツアーの時この店に付いて書いたが、その店も同じ作りをしていて、店の半分はお土産やになっている。食事を済ませた後そこで鶏がシンバルを2つ持ったオモチャ付きのキャンディーを見つける。音の出るものには直ぐに反応してしまう自分。それを手にとるとCoadyが「No~!」と自分が何をするか分かっているようだ。戻すフリをした上で購入。バンに持ち込み、それを片手にカズー(ツアーの始めの内に4つ買ってバンの中に置いてあった)を加えて演奏を始める。何故か出てきた曲が the Spencer Davis Groupの"Gimme Me Some Loving"。ベースラインをカズーで奏で鶏のシンバルでリズムを刻む。するとJaredがもう一つのカズーを取り出し、オルガンのパートの前奏を始めメロディーラインへと続ける。ドゥドゥドゥドゥドゥ、パーン。ドゥドゥドゥドゥドゥ、パーン。ドゥドゥドゥドゥドゥ、パーン。ドゥドゥドゥドゥドゥ、パーン。...コーラスに入ろうとした瞬間、運転手のCoadyが「いい加減にしろ!」Jaredは「Coadyおじちゃんが怒った!」と子供のように言う。車内は大爆笑。その後はただもくもくと運転が続く。


7月9日、休み

朝5時半に目を覚まし、タクシーで6時20分発のAmtrackに乗るために駅に向かう。New YorkのPenn.Stationまで8時間の一人旅となる。高速もそうだが、鉄道もBuffaloからNew Yorkまでは両脇が木々に挟まれている為景色はさほどよくない。隣に座ったWachinton DC.で警官をやっているおばちゃんと長話をして時間を潰す。4時を回りNew Yorkに着く。友人、Yと待ち合わせをしてTime Squereなどを案内してもらう。Yの旦那、Rと合流。Rは自分のことを"Rockstar"と呼ぶ。その3人でYの親友でBrooklynに住むMの家に向い、そこでBBQ。MはベジタリアンなのでベジタリアンBBQ。その時購入したビールがうまかった。Brooklyn Ale。皆Mの家に泊まり次の日の仕事に備える。自分は明日Bostonに向かう。


7月10日、休み

Mの家から地下鉄に乗りChinatownに向かう。そこからバスが出ていてBostonまで3時間。しかも料金が$15と格安。Bostonの友人はFung Wahと言うバス会社を最初に勧めるが事故が多いと聞き、Lucky Starを代わりに勧める。Lucky Starは一時間に一本の間隔で出ている。地下鉄を降り、2ブロック歩くとバスは待っていた。3時間強でBostonに着く。駅まで友人、Jが迎えにきてくれ、そこから電車でJとアパートへ向かう。荷物を置き、Jと二人で夕食に出かける。彼女が以前働いていたスペイン料理や行く。アンチョビーなどが酢に漬けられたものやチーズと肉を使った料理(名前は全く覚えていない)がビールに合い、食が進む。ビールはスペインのAlhambra Especial。味はまあまあ、自分にはちょっと薄め。そこを出てJの旦那、Gが近くのホテルの寿司バーでテキーラパーティーをしていると言うのでそこに向かう。Gは95種類のテキーラが選べるバーで働いている。Gが働くバーとその寿司バーの宣伝をかねたパーティーであった。ショットグラス3杯のテキーラのサンプルは無料。口当たりが強いのでビールをチェイサーとして注文。サッポロの小瓶が1本$7。馬鹿馬鹿しくなってきたのでそこを出てJとアパートに向かう。彼等は数日前に彼等のアパートでパーティーをやったようでビールがあまっている。12種類の地ビール。多くは果汁っぽく自分の好みではなかった。Geary's(Maine州) Hampshire Special Ale(写真右から3番目)とSamuel Smith(Tadcaster、英)のTaddy Porter(同5番目)は味が濃く、カクテルっぽくないので気に入った。


7月11日、休み

今日はGも休みなので3人で遅い昼飯に出かける。シーフードで有名なBoston。お洒落なレストランに入りカキとヒラメのフライを注文。BBの Boston公演、Middle Easternの飯が不味かったのでBostonに対していい印象を残していなかった。だがそれも一気に忘れることが出来た。ビールはお気に入りの1本、 Brooklyn Lager。2人は自分にBostonの町を案内してくれると言っていたのだが、暑さと満腹感でその気も失せ、部屋でのんびり飲むことにした。夕飯はタイ料理を出前で注文。久しぶりに(?)だらだらした午後であった。


7月12日、Mansfield, Massachusetts

会場はBostonから電車で約30分の所にある郊外。駅に着くとタイミングよくJaredがバンで迎えに来てくれた。そのまま会場に直行。今日は野外ステージ。またもや大きな会場(19900人)。しかも前売りの時点で売り切れだと言う。いつものようにサウンドチェック、食事を済まる。そして BBの出番となるのだが、会場の関係でいつもより30分早めの7時半開演。まだ空席が目立つ。いつものように1曲目を始める。2曲目の途中でベースが聴こえ難くなった。2曲目が終わるとJaredの様子がおかしい。慌てふためいている。メインのベース・スピーカーが壊れたようだ。もともと2人組だった為、全ての音域をカバーしようと、Jaredは3つのアンプとスピーカーキャビネットを使っている。その一つはツアーの前半で故障。それ以来2つのセットでここまで問題なしにやってきた。だがメインのスピーカーがやられてしまうとたった一つのアンプだけが残り、そのアンプは高音域専用であった為ギターの音に近い。それでもショーを勧めなければいけない。2本のギターだけのような薄い音で残りの4曲を終わらせる。それでも観てくれた客は喜んでくれたようだ。

楽屋に戻り一息ついたところでいつものようにビールを持って会場へ。今日のビールはカナダはQuebecのBoréale Rousse。どうもカナダのビールは自分には刺激が弱い気がする。カナダのウィスキーは大好きなんだが...Toolの出番になると予想通りの満員。大歓声が鳴り止まない。公演終了後には観客が駐車場で花火を打ち上げたりもする。それを聞きつけたAdamとDannyが楽屋から外に飛び出し「花火はどっちだ?」と観たかったようだが、その一発のみであった。


7月13日、Portland, Maine

早めにホテルを出てベース・スピーカーをBostonで購入する事に。サイズと種類を確認した上で、ホテルを出る前に電話とネットで探していておいたのでスムーズに買い物が済む。Bostonを出て1時間ちょっとで会場に着く。サウンドチェックを済ませるといつものように食事なのだが今日はロブスターがメインディッシュ。
Geary's Pale Aleと言うロブスターの絵の書かれたビールとともにロブスターをほうばる。
Pale AleはBostonで飲んだHampshire Special Aleよりやや薄く感じたが、口当たりも良く味もしっかりしていた。スピーカーを交換して、ロブスターを食べ終えた一行は昨日のアクシデントを借りを返すとばかりにステージに向かう。鬱憤を晴らすかのようショーは大成功。Toolとのショーも残すところ3公演となった。

Saturday, August 11, 2007

Milwaukee>>Grand Rapids>>Huntington

7月4日、Milwaukee, Wisconsin

ここ2年ほど、朝早く起きる(早くない、音楽業界の人間としては早いと思う)習慣をつけていたため8時半に目が覚める。シャワーを浴びコーヒーを飲み外を歩くことにした。すると直ぐそばにショッピング・モールがある。まだ開いていない店が殆んどだが歩き回っているうちに10時を過ぎ殆んどの店がオープンし始める。大手電気製品店Best Buyに入るとデジタルカメラがいい値段で売っている。生まれて初めてデジタルカメラを購入。ホテルに戻り早速写真を撮りまくる。

約2時間で会場に到着。Summerfest(http://www.summerfest.com/) と呼ばれるこのイベントは今年で40回目。この11日間のイベントは遊園地や出店が並んだりフリーコンサートがいたるところで行われている。Tool、 BBが公演を行うMarcus Amphitheaterはメインステージで他のイベントとは別料金。7月2日にはRoger Watersが公演を行った場所でもある。ちなみに3日がJohn Mayer。5日がBon Jovi。会場は2万人を収容できるほどの大きさ。1万4千枚が既に前売りで捌かれていた。

楽屋は景色の良い3回。直ぐ隣にはAdamの楽屋が。AdamがBBの楽屋に入ってくる。自分を捕まえ、出店を見に行こうという。AdamとツアーマネージャーのMJと3人で20分ほど敷地内を歩き回る。かなりでかい。
準備があるので会場に戻りサウンドチェックを行い、食事、そして出番となる。2万人規模、全ての席が埋まってはいないもの凄い数の人が集っている。ショーはまあまあの出来で無事終了。客も喜んでくれた。一度ステージを降り、忘れ物をしたのでまたステージに戻ると何故か大歓声。アンコールをするとでも思ったのであろうか。上機嫌で楽屋にもどる。しかも楽屋にはBB単独のChicagoの会場で飲んで気に入っていた地ビール、Great Lakeが用意されている。ますます上機嫌。

他の会場ではオリジナルメンバーのAsiaやBlack Crowsが公演を行っていると聞き少しづつ覗いてみた。メイン会場に戻ると凄い数の人。Toolの専属警備員で巨漢のJTが、Maynardの格好を真似したベロベロに酔っ払った客を猫のクビをつまむようにして会場から追い出している。その男は会場の門から追い出されるとそこに立ち止まり「なんでだよ...俺はなんも悪い事していないのに...」とかなりいじけている様子。ToolのコンサートにはTool専属の数人と会場専属の多くの警備員の他、救急救命士までがいつも忙しくしている。どのショーでもステージの裏近くに担架等が置かれていて、1公演平均3人ほどが運ばれてくる。怪我をする者、失神する者、酔いつぶれる者と理由はそれぞれ。自分はステージからもっとも遠い場所で芝生の立ち見エリアからToolを見物。すると酔いつぶれた若者が自分の直ぐ隣で寝ている。会場の警備員が他の客に呼ばれやってくる。警備員達の声に「寝ているだけ」と言いかえすが起き上がれない。彼もおそらく救急救命士の世話になった事であろう。


7月5日、Grand Rapids, Michigan

Chicagoを抜けまたMichigan州に戻る。3日から今日までが運転の面でこのツアーでもっとも厳しかった。何とか会場に着き、いつも通りのことを行う。今日がローディー兼グッツ販売のDustyが付き添う最後の公演。彼のために燃えた公演は大盛況と終わった。ちなみに今日のビールは Chicagoの会社Goose IslandのHonkers Ale。好んで飲むかはわからないが口当たりが良くあと味も悪くはない。そしていつものようにビールを持って会場へ、と行きたかったがコップが見つからなかった為手ぶらで会場に。良い席がなかなか見つからない。一般席とは区画されたVIP席のような所を見つけそばにいた係りの者に入ってもいいのかを尋ねる。パスをみせると少し間のあいた返事でOKが出る。そしてそこに入り間もなくすると、横にいた数人の若者の中の一人がじろっと自分を見て「お前はどこから来たんだ」と言う。説明しようとすると曲の盛り上がり部分と重なり、大声で言っても何を言っているか分からない様子。諦めてそこを出て行くとその係員が自分を止め彼等に説明する。「この人は前座のバンドのメンバーだ!」すると若者達は「なんだよ。そう言ってくれよ。さぁ入った、入った」数回断ったのだが無理やり連れて行かれる。ビールまでご馳走になる。この中の一人が会場の関係者を知っていてこのVIP席を抑えてもらったと説明された。「何とかしてバックステージに行きToolの面々に会いたい」とまで言ってきたので、この場所で最後まで観ていては面倒になると判断して1曲を観終えてその場から去る。 DustyをOhio州Columbusの空港まで送るのでそこからそれほど離れていないAnn Arborまで運転して宿を取る。


7月6日、移動日

Dustyを空港で下ろした頃は2時を回っていた。そこから次の公演地West Virginia州Huntingtonまでたったの180km。2時間ちょっとで着くため今日はColumbusでのんびりする事にした。しばらく一人で街をぶらつきホテルに戻ってくるとCoadyが寿司屋を2軒見つけたのでどちらかに食いに行こうと言う。1軒目はスタッフを入れ替え中でメニューが少なくなっている。2軒目に移動。生まれて初めて回転寿司。寿司はまあまあ。ビールはサッポロ。今、アメリカではサッポロ生、アサヒスーパードライ、そしてキリン一番搾りがスーパーなのでも簡単に手に入る。だがサッポロとアサヒはカナダで作られ、キリンはバドワイザーが製造している。日本産に比べると明らかに味は落ちる。

寿司屋を出ると3人ともが飲みに行こうと言いだす。ホテル裏にバーを見つけそこに流れ込む。小さなステージでバンドが演奏をしている。ジャムバンドなのか適当に弾いている。客が増えてくるとファンキーなナンバーを弾き始める。Prince、Bill Withers、Stevie Wonder等のカバー。3人はそのバンドなど無視して多く置かれているテレビの一つに釘付け。総合格闘技(STOと呼ばれる団体)の番組がオンエアーされている。多くの客の中で観ているのは3人だけ。すると一人のバーテンダーの兄ちゃんが誰もそれを観ていないと判断して、チャンネルを換えてしまう。 Jaredがすぐにその兄ちゃんにチャンネルを戻すように言う。兄ちゃんは快く承知する。試合をみて興奮してか酒の量が増えてくる。だがその番組が終わるとバーは音楽でうるさかったのでそこを出て次の店を探しに行く。他のバーを探し歩いているとDaleから携帯に連絡が入った。2人は店を見つけそこに入るが自分は通りに残りDaleと話し込む。10分立たないうちに2人は店から出てきて次を探そうとまた歩き始める。かなり歩いたのか腹が減ってきた。目のは前にはWhite Castle。Coadyはもう飽き飽きのようだ。自分とJaredはまたCrave Caseを頼みホテルに持って帰ろうとする。一つ食べると2人ともその味に飽きていた。2人は通りで大声で"スライダー(バーガーの名前)はいかが"と街行く人に配ろうとする。一人の中年男性がやって来て1つくれと言うので手渡した。Coadyは洒落た店でピザを頼むと言う。しばらく待っても出てこないので2人はホテルに戻ることにした。

ホテルの前にコンベンションセンターがある。今日はゲームのコンベンションらしい。そこでJaredは思いついた。「トシ!カメラ回してくれ。潜入するぞ!」と興奮気味でCrave Caseを持ったまま会場に潜入。警備員に声をかけられるがそれを無視してメイン会場まで進入。コンベンションは終わっていたようだが、まだ多くの人が残っていて幾つかのグループのようになって机の周りに座って話し込んでいる。それらのグループのテーブルにスライダーを一つづつ置いていく。ゲームコンベンションと言う事もあり、Jaredは「100ポイント。今度は500ポイント」と大声で叫びバーガーを置いていく。警備員はあきれた様子で追いかけては来ないものの、遠目でしっかり監視している。全てのバーガーがなくなると2人は会場をあとにする。

大笑いしながら部屋に戻るとCoadyがピザを食べている。今起こったことを話すと急いでピザを食べ終え自分も行くと言い出す。もうバーガーがないためホテルの枕を服の中に詰め変装(?)して行くと言い出す。プランはJaredがパフォーマーでCoadyが第一カメラで自分が第二で遠目からのショット。会場へ入ると警備員が「またかよ。勘弁してくれよ」とつぶやきまた警告をうける。Jaredのパフォーマンスはテーブルの上でわけのわからない事を言い、寝そべったり立ったり。Coadyはそれをしっかりカメラに収めている。自分は入り口から会場全体を捉えている。笑いが止まらずカメラがゆれる。警備員が一人増えて3人。Jaredがメイン会場の出口まであと10mと行った所で3人がかりでタックル。Jaredの巨体が崩れ落ちる。Coady のカメラは没収(出口まで)。自分は隠れようと笑いながら走って会場の出入り口も先回りして、彼等がつまみ出されるのをカメラに収めようと待っていた。すると彼等は裏口から追い出され貴重な映像は捕らえられなかった。こうしてColumbusの夜はふけていった。


7月7日、Huntington, West Virginia

高速、一般道の道幅も小さく、山と川に囲まれた田舎町。会場も小さめで6000人規模。だが会場についた時、チケット売り場、入り口には多くの人で溢れている。楽屋を見つけるとその直ぐ隣にはMaynardの楽屋。そこでチーフセキュリティーのTがマットを敷いた上で、道着を着た見知らぬ男2人と柔術の稽古をしている。ちょっと覗くと寝技をかけているTが「よ~トシ。元気か?」と汗だくになりながらも清々しく挨拶をしてくれる。

Tに触発され、運動をしたくなった自分は外に出てストレッチをする。だが暑さでその気持ちも一気に冷める。その代わりに町をぶらついてみる。多くの若者で町は溢れている。多くの人がToolのTシャツを着ている。町の全ての若者がこのコンサートに来るようにも思えた。開演されると既に満員に近い状態。このToolとのツアーではありえなかった大歓声。まるで自分達がヘッドライナーのようだ。大都会とは違いコンサート自体の数が少ないからであろう。観客は知らないBBの曲であろうが大喜び。公演を無事終えいつものようにビールを持って会場に向かう。楽屋からは一度外へ出てから客ようの出入り口を使って観客席に行かなければならない。一番近い出入り口に喫煙所が設けられている。まだそとは明るかったため、そこを通り抜けようとした時、3人組の客が自分の事に気付いた。その中の若いんだか若くないんだかよく分からない女性が「知ってるわよ。あなたの事。知っているわよ」と自分に握手を求めてくる。BBをかなり気に入ってくれた様子。Toolを観たいのでそこから立ち去ろうとすると「口紅でサインして」とバックから口紅をだし、彼女の真っ白なTシャツ(背中)にサインしろと言う。こんなにでかでかとしかも口紅でサインしたのは初めてだ。

Toolの公演でも観客の反応は素晴らしい。Coadyのドラムバトルでも大歓声は止まらない。もっとも小さな会場からもっとも大きな歓声をもらったことで、ショーの楽しさを再確認。

Friday, August 10, 2007

Youngstown>>Clarkston

6月30日、移動日

Cincinnatiから同じOhio州のYoungstownに移動。距離が短かった為、夕方早くに着き、Youngstown郊外に宿を取り、荷物を置き、時間があるので映画館に向かう。観たのは"Live Free or Die Hard(Die Hardの4作目)"。映画館を出て、夕食を食べに行く。ステーキハウスを見つけそこへ入るとプロダクションマネージャーのCがその店に入ってきた。「明日は(サウンドチェックの時リクエストする曲を)期待しているぞ!」と言って彼は自分等とは別にカウンターに座る。食事を済ませてCに別れを告げホテルに戻る。ホテルの駐車場には中年のバイカー達が多く見られた。部屋に戻り相部屋のDustyとESPN(スポーツチャンネル)で野球の結果を確認した後2人とも深い眠りにつく。2人は真夜中の部屋の外で起こっていることに気付いていなかった。


7月1日、Youngstown, Ohio

朝起きてシャワーを済ませるとDustyも目を覚ましていた。Coadyからコーヒーを買いに行こうと声がかかる。まだ寝ているJaredをおいて3人で近くのStarbucksへコーヒーを買いに行く。Coadyは「昨日の夜中、外、うるさかっただろう?」と言って来る。自分とDustyは熟睡していなにがなんだか分からない表情を浮かべるとCoadyがそのことについて説明し始める。午前3時あたりに警察がホテルにやって来て、バイカーの中の数人を尋ねこう言ったという。「お前達が今投げた物が何だか分かっているんだ。今からお前等の服と荷物を調べる」その後ごそごそと言う音だけになり Coadyはどうなったかは全く分からなかったと言う。コーヒーを買いホテルの駐車場にもどって来た時、Coadyが「これだ!」と叫び地面を指差す。そこにはそのバイカー達が投げ捨てたと思われるコカインが袋に入って放置されていた。クスリをやらない3人は恐る恐る近づき覗いてみる。それを確認すると部屋に戻ってJaredも呼びカメラを取ってきて皆でその袋と記念撮影。タオルを使ってそれを掴み草叢に投げ捨てる。

会場はホテルから約20分バンで走った所にあった。楽屋を見つけるとCの言っていた曲(4曲中1曲)のリクエストシートがドアの前に貼られていた。その中で自分が選んだのは"Keep Yourself Alive" 。天気が良かったのでサウンドチェックまでの時間を外潰そうと会場の駐車場に出る。するとToolのチーフセキュリティーでMaynardの大親友のTが運転するパトカーが自分の方に向かってくる。助手席に座っているMaynardは自分の方を指差し"あいつを追え"と言わんばかりのジェスチャー。パトカーはもの凄い遅いスピードで自分に襲い掛かってくる。しばらく走って逃げた(付き合い)後、縁せきに非難。するとパトカーのサイレンを鳴らしメガフォンを掴み、また自分を指差し「メキシコ人だ!誰か捕まえろ!」それに大して自分は「Oh!No!Me No Speak England!」とわけのわからないことを言い返すとMaynardとTは大笑いしてパトカーは後退していった。その後はCoadyとキャッチボールをやり時間を潰す。久々にいい汗をかいた。

今までで最も規模が小さい会場。動員数6000人。来てくれた客はBBを気に入ってくれたようだ。公演終了直後、自分がステージで機材の片づけをしていると、客席から40歳前後の男性が大声で"オイ、オイ"と自分のことを呼んでいる。それに応えると男はこう言った。「I don't know who you are, but you guys KICK ASS(お前達が誰だか知らないが、お前等はかっこいいぜ)!」サンキューと言い返すと"俺は言ってやったよ"といわんばかりに大きく数回うなずきながら男は去っていった。誰だか知らない...BBが演奏する時は何時もステージの背後の高さ10m横幅25mくらいの大きなスクリーンにでかでかと"Big Business"と書かれている。嬉しいんだか嬉しくないんだか...

いつものようにビールを持って会場に向かう。今日のビールはCincinnatiの時と同じ会社の違う種類、Summit Extra Pale Ale。Grandほど濃くは無いが味がしっかりしていて飲み応えがある。そのビールをコップに入れ、今日は空いている席を見つけ座って観る。数人の客が自分のことを知っていたようで話し掛けてくる。「BBのべーシストだろ?」またもや嬉しいのか嬉しくないのか分からない質問。それでも喜んで握手を求められるのでこっちも笑顔で答える。しばらく集中してコンサートを観ていると、自分の斜め前のいかにも軟派な兄ちゃんはまたもやちょっとケバイねえちゃんとイチャイチャしていることに気付く。キス以上のことをしようともぞもぞしている。姉ちゃんは嬉しくなさそうだが、兄ちゃんの手が姉ちゃんの...書けない。官能小説じゃないのでここから先は書きたくない。

7月2日、移動日、

明日の公演がMichigan州Detroitの郊外Clarkstonと言う事だがその間293kmとあまり離れていない。どちらかと言うと休みである。そのことを知ってか、Toolのプロダクションチームのはからいで映画、"Transformers(トランスフォーマー)”の試写会をみせてくれると言う。宿から焼く20分の映画館で待ち合わせをしてToolの面々、クルーそしてBB、約40人ほどで映画を観覧。


7月3日、Clarkston、Michigan

会場は静かな森の中にある。着いてしばらくしてDustyと2人木陰でキャッチボール。キャッチボールを終わらせ楽屋に戻ろうとすると廊下が水浸しになっている。部屋の一つのトイレの配水管が逆噴射。ホテル等が臭い時のために買っておいた線香が役に立つ。Coadyの古い知人3人が尋ねてきた。彼女等はとにかく喋る。演奏中はステージ横で大声で叫びまくっていた。まぁ励みにはなった。お陰(?)でショーは大成功。なかなかの反応。楽屋に戻った後も彼女達の話は止まらない。自分はいつものように地ビールを飲みそれらの話を聞いているふり。今日のビールはカナダのSleeman。ライトビールなので好んで飲もうとは思わないが、この季節と仕事の後と言う事で多少美味しく感じた。明日はWisconsin州Milwaukeeと言う事でまた Chicagoの渋滞を考えなければいけない。そのことを考慮してBBの公演終了のみで会場を発つ事に決めていた。よってドラムバトルは無し。Toolの面々にもその事は伝えてある。彼女達の話をようやく切り上げChicago郊外まで4時間強のドライブに出る。会場を出た瞬間Jaredが「(彼女達の話にあきあきして)あ~たまんね~」Coadyは「これでもましになったんだよ。許してやってくれ」と彼女達を煙たがっていたのは自分だけではなかったようだ。大雨雷の中、バンは無事Chicago郊外のホテルに到着。

Thursday, August 09, 2007

Chicago>>Cincinnati

6月27日、Chicago, Illinois

St.Paulを発ち、予定の時間よりちょっと送れてChicagoの郊外に入る。コンピューターで場所を調べるのを忘れた為、会場に電話をして上、地図で場所を確認。会場はChicagoの南に位置すると判断。渋滞に巻き込まれ30分近くたちようやく会場のある通りに辿り着く。だがどう見ても会場があるような地域には見えない。住宅地である。もう一度会場に電話をしてみて場所を聞くと間違えなく同じ名前の通り。Jaredが「Chicagoの都心の北か南か?」と尋ねると北にあると言う。完全に行き過ぎた。また渋滞に巻き込まる。今度はもっと酷い渋滞。1時間半がたち、予定より2時間半遅れて会場に着く。クルーの皆に詫びを入れ、直ぐにサウンドチェックをなる。

BBの出番になる。昨日に比べ緊張は和らいだものの、普段上るステージとは比較にならないほどの照明の明るさ。まだ慣れきれていない。曲の途中でストロボの断続的なフラッシュ効果をやられて驚きのあまりギターの何処を弾いているのか分からなくなってしまう(下手糞の言い訳)。今日も何とか終了。またもや客の反応が良い。自分では"本当に良かったのかな"などと半信半疑でステージを降りる。公演後、遊びにきてくれたChicagoの知人、Jimとその同僚と楽屋で盛り上がる。Toolのショーが始ると皆それを観に会場に戻る。昨日同様、Coadyはドラム・バトルに参戦。曲を覚え始めたのか、昨日よりスムーズに叩いている。

ドラムを片付け楽屋で祝杯していると、Dannyの友人のEがBBの楽屋にやって来て、自分とBBを目の前にして「君達3人は小さな人々かもしれない。でもサウンドはでかくて圧倒された。曲ものりのりだし、気に入ったよ」と言ってくる。このE、バスケットボール選手で2m16cmの巨人。自分と Coadyは小柄な方だから"小さい人"と言われるのは分かる。でもJaredは188cmと大柄だ。Eが楽屋を去った後、「"小さい人"って言われたのは生まれて初めてだ」とつぶやくJared。その瞬間、皆で声をそれえ「そりゃEからしてみたら誰でも小さい人だろうな~ぁ」と大笑い。

楽屋のビールがなくなってしまったので他の楽屋をさ迷いはじめる。ちなみに今日の地ビールはOntarioの会社Trafalgar Brewing CompanyのPaddy's Irish Red。ちょっとにがいが飲みやすいので直ぐになくなってしまった。楽屋を転々としているとAdamの楽屋に辿り着く。ビールを飲まないAdamの楽屋にビールがあったので"一本もらうよ"と言うと快く譲ってくれた。Adamは育った場所が近かったので今日は友人が沢山来ると言う。Adamの高校の時の友人、Rage Against the MachineのTom Morelloのお母さんまで来ているという。「Tomのお母さんは凄く優しくて頭の良い人だ。トシにも紹介するよ」と言ったところでAdamの兄、Aが入ってくる。AはAdamに「ちょっと多くの人呼んじゃったんだけど良いかな?」「良いよ、良いよ。その為に沢山の飲み物とか用意したんだから」と言うと Aは廊下にに戻り人を楽屋に連れ込んでくる。10人、20人を予想していた自分にはその人の数に驚かされた。120人は下らない。AdamがTomのお母さんを紹介してくれる事などわすれ、自分はその人ごみから非難するため、ビールをもう一本拝借してBBの楽屋に戻る。

会場を去り真夜中で渋滞の無いChicogoの都心に向かう。今日もJimの家にやっかいとなる。


6月28日、移動日

またJimと同僚とで食事をとりChicagoを去る。ChicagoとCincinnatiはさほど遠くはないのでその日に会場のある Cincinnatiに移動して宿を取る。Cincinnatiに着くと携帯の電波が全く途切れる。ホテルちかくのメキシコ料理やで夕飯を取る。久々に飲むNegra Modelo。メキシコのビールはライトなものが多いがこれは濃くて美味い。


6月29日、Cincinnati, Ohio

サウンドチェックを済ませ楽屋に戻るとDustyが野球を観に行くと言う。会場のUS Bank ArenaはGreat American Ball Parkと言ってCincinnati Redsのホーム球場の直ぐ隣。BBが始るまで観てくるとチケットを購入したらしい。今日の対戦相手はSt. Louis。対戦チームは観た事があるがRedsは観た事がない。Dustyを羨ましがる。楽屋に戻る途中の廊下でイギリス人のプロダクション・マネージャーのCが「トシは今日サウンドチェック(ギターのみ)で"Now I'm Here(by Queen)"を弾いただろ。嬉しいな~。俺はQueenが好きでこの仕事を始めたんだ」と言い、明日からリクエストをしたいと言ってきた。

開演の時間が来てステージに上るといきなり"としぃぃぃぃぃ!"と叫ぶ観客。自分は驚き、スポットライトで若干見えるステージの近くの席を見る。 Boltimoreの公演に来て、ビールまで奢ってくれたBBの友人のSであった。一人でもBBを知っているものが観ていると急に気分が楽になって来た。人の数、照明にもなれてきて以外にスムーズに演奏が出来た。自分としては上出来!Toolファンもかなり気に入ってくれたようだ。Sの近くに座っていた Toolファンの一人はステージを降りる時、「トシ、良かったぞ!」と名前まで覚えて声をかけてくれた。

片づけを終えると自分は駆け足で野球場に向かう。途中からでも観ると決心。7回から観戦。2階席のチケットを買ったのにもかかわらず1階席の踊り場で立ち観戦。8回にSt.Louisが逆点。将来、野球殿堂入りの候補、Ken Griffey Jr.とAlbert Pujolsが観れたのは嬉しかった。日本人の田口選手も相変わらずしまりのない口をして頑張っていた。

試合終了後、慌てて会場に戻り今度はToolを観覧。しかもこの会場にはホッケーのペナルティーエリアが設けられている。そこがステージからかなり近く、VIP用に確保されている。自分は楽屋の地ビールをプラスティックのコップに入れそこでToolを体感する。今日のビールはSummit GrandとPete'sと言うビール。SummitはBBのChicago公演でも飲んだビールだが、苦味がきつくなくスムーズなダークビール。今回の旅のお気に入り。Peteは60年代から80年代に大活躍した、元Redsの名選手Pete Roseにちなんで作られたビールかと思っていたが、Texas州San Antonioのメーカーらしい。ちょっとフルーツっぽい味が強く、薄口なので自分はあまり好きにはなれなかった。今日のCoady vs. Dannyは今の所一番のバトル。Coadyも慣れた来たようでDannyも遠慮をしていない。客も大喜び。

公演後はBBとDannyの楽屋で祝杯。BBの楽屋とは違い、ビールが沢山余っている。ビールを拝借してしばらく会話をしたのちDustyの運転でホテルに戻る。ホテルの直ぐそばにWhite CastleがあったのでまたCrave Caseを購入。今回は誰が一番食べるかのコンテストも行われた。自分はJaredと同一1位で8個。バーガーの包みであった箱が床に散らばる。

Wednesday, August 08, 2007

Baltimore>>Saint Paul-Tool shows started

6月22日、Baltimore, Maryland

今日がPanthersとのツアー最終日であったのともにToolの前座を務める前の最後のショーでもあった。近くのホテルに泊まった Phanthersの一行と昼過ぎに合流。ホテルのプールで人汗かいた後皆で軽い食事を取りに行く。大手チェーンレストラン、T.G.I.Fridayがホテルの直ぐ隣にあったので、一行はそこへ流れ込む。こってりしすぎたアペタイザーと全く美味しくないカクテルが自分を不愉快な気分にする。しかもカクテルには虫が浮いていた。浮いていなくても飲み終えなかったであろう。

一時間強で会場入り。会場のThe OttobarはBBも以前ライブをしたことがあったらしく、楽屋が新しくなっていて綺麗に片付けられていたことに大満足。楽屋のクーラーボックスにはビールが用意されている。その中にNational Bohemianがあった。もともとはBaltimoreで作られていたこのビール。今は大手Miller Brewingに吸収されそこで作られている。案の定薄い。ライトビールの好きなCoadyは喜んで飲んでいたが自分には1本終わらせるのがやっとであった。ちなみに名前が近いMexicoのBohemiaと言うビールはなかなか味のこいビールで気に入っている。

Phanthersの公演を始終観てBBの出番となる。BBの友人も数人駆けつけてくれビールまでステージに持ってきてくれる。その時頼んだのは自分のもっとも好きなビールのひとつGuinness。のって来た。まばらではあったが来てくれた客は大喜び。Panthersの面々はBBの今日のライブが一番だったと誉めてくれた。公演後、機材を積み終え、記念撮影をしてPanthersと別れを告げる。宿は昨晩と同じNewarkのホテル。


6月23日、 移動日。

NewarkからNew York州Buffaloに移動。まだ観光の季節には早いのか、カナダの国境、ナイアガラの滝が近くにあるこの町であまり人が観られない。都心のホテルを抑える。


6月24日、休み。

パスポートを持ってきていないDustyと自分は、カナダでのBB初のToolの前座のショーに参加できず、一日待つこととなる。昼間街を歩いていると、ホテルから5ブロックくらい離れた場所に野球場を見つけた。ホテルに慌てて戻り同じく野球好きのDustyとAAAのゲームを観戦することに。この球場はCleveland Indians参加のAAAチーム、Buffalo Bisonsのホーム。対するはBaltimore Oriolesのマイナーチーム、Norfolk Tides。結構な人が入っている。自分の斜め後ろの方の若い2人組の兄ちゃん達の一人が手紙を書き、自分の前に座っている若くて可愛いねえちゃんに渡している。突然のナンパ(告白)のようだが、ねえちゃんはその文章にあきれた様子。一緒に来ていた家族にも手紙を見せていた。ナンパは失敗したようだ。野球を観終え腹の減った自分とDustyはスナックを買いに行くが、店が何処も空いていない。日曜には閉めている店が多い。2kmほど歩いてようやくガソリンスタンドの売店で飲み物とお菓子を購入。BBの二人とReubenは夜中にホテルに戻ってきた。


6月25日、移動日。

この日の朝ReubenはBrooklyに戻るためAmtrack(鉄道)の駅まで送られる。次の公演はMinnesota州のSaint Paul。距離にするとその間、1164km。その間で、約860km離れたWisconsin州Madisonまで行く事に決定。BBの単独ツアーで来た道を戻ることとなる。Chicagoを超えた頃にはもうあたりは暗くなっていた。そんな時、助手席に座っていたJaredが「蛍だ!」と大声で言う。高速の直ぐ脇を何千と言う数の蛍が舞う。排気ガスが多い高速の横で生息できる蛍がいた事にも驚かされたが、Madisonの近くまで100km以上その光景は続いたことにさらに驚かされた。しかも一匹車に舞い込んできた。自分はそれを手にとり車の外へ放つ。途中でシーフードレストランを見つけそこで夕飯を取る。その時に飲んだビールはMonty Python Holy Grail Ale。苦みと甘さがちょうど良い。夕食後40分あまりで抑えていたホテルに着く。残りの距離は300km。Toolの公演はサウンドチェックが早い時間に行われる為早起きが必要とされる。


6月26日、Saint Paul、Minnesota

ついにこの日が来た。ツアー、パフォーマンスの経験の浅い自分にとっていきなりのアリーナーショー。緊張が高まる。会場をに入る。スケールが違う。ホッケー用のアリーナ。楽屋は選手のロッカールーム。クーラーボックスにはBBの個々がリクエストした酒が入っている。Coadyはテキーラ。 Jaredはバーボン。そして自分は地ビール。この日の地ビールはWalkerville Classic AmberとSteam Whistle。どちらもカナダのビールだがSteam WhistleはライトビールでWalkervilleはかなりこいビール。ダークな味が好きな自分はWalkervilleを一気に気に入ってしまった。荷物をおき廊下に出るとMaynardに会う。自分に向かって中指を立て、Fワード連発で挨拶をしてくれる。歓迎のしるしであろうか(?)。機材を運び込みバンに戻るとそこで今度はAdamとJustinと再会。彼等とは1年近く会っていなかった為、笑顔でハグをしながらの再会。「トシがBBのツアーに参加しているのは聞いていたが、サウンドマンだと思っていたよ。でもギターなんだってなぁ?何して驚かしてくれるのか楽しみだ」と軽いプレッシャーを Adamから受ける。その後直ぐにDannyと廊下で再会。これまた笑顔とハグ。

Toolが先にサウンドチェック。それが終わるとBBが機材をステージに持ち込みサウンドチェック。それが終わるとケータリングの食事が食堂に用意されている。ビュッフェ形式で並べられた食事の数々。メインディシュも4、5種類の中から選べる。サラダバーもあり、ドレッシングは10種類以上。デザートも置かれている。どれも味が良い!食事を終わらせ楽屋に戻るとAdamが尋ねてくる。Coadyに1曲の途中からドラムを弾いてもらいたいとその曲のMP3を渡される。その話は前座を頼まれた時に聞いてはいたらしいが、まさかこんなに早く実現するとは。

6時半に開場となる。BBの出番は8時から8時半まで。普段は45分のセットなので曲数を削らなければならない。8時十分前になるとステージマネージャーのEが楽屋にやって来て「そろそろ行こうか?」と言ってくる。ステージ横で待機する。まだ全ての席が埋まってないとは言え凄い人の数。開場が暗くなると観客は大声で叫びだす。ちょっとした硬直状態。深い息を吐き、気を取り直し、いざステージへ。歓声なのかブーイングなのか分からないがとにかく客は叫んでいる。1曲目2曲目とまだ硬くなっている自分が明らかにわかる。だが2曲目の真中あたりで一箇所小さな間違いをした。それを気にしつつ曲を終える。それでも歓声が起こっている。一つのミスが逆に気を楽にした。ブーイングも聴こえない。客は間違えなくBBを気に入ってくれている。公演は無事終了。 30分がやたら長く感じた。暖かい歓声と拍手を聞きながらステージを後にする。

Toolのツアー・クルー達にも暖かく迎えられ楽屋に戻る。Walkerville飲みながらやっと一息。だがCoadyはIpodを聴きながらドラムの練習。1時間ちょっとでToolとのジャムが行われる。グッツ販売は会場に任しているため、会場では何もすることのないDustyと、公演を終えた自分は観客に混じりToolの公演を観る事にした。凄い人の数。爆音。そして効果抜群のビジュアルアート。このバンドには大きな会場が合っている。マッシュピットも起こるほど客は大興奮。スローな曲になるといちゃつくカップルもいた。レーザー・ビーム・ショー、ビデオとのシンクロなども含めテンポ良くショーは進んでいく。最後から2曲目の途中でようやくCoadyの登場。もの凄い数のドラム、ドラム・パット(サンプル・トリガー用)、シンバルに囲まれたDannyのセットに対して、ベース、スネア、ラック・タム、フロア・タムに2つのシンバルとシンプルなCoadyのセット。ドラム・バトルは7分程度続いた。曲を把握していない為か時々おぼつかない所もあったようだったが、Coadyの気のこもった一発一発は観客に届いたようだ。このショーのクライマックスであったことは間違えない。Coadyは曲の途中であったものの、ドラムバトルが終わると速やかにステージを降りる。

Toolだけでもう1曲演奏すると全ての公演が終了。自分はステージ裏にもどりCoadyのドラムの片付けを手伝う。「緊張した~」と大声で叫ぶ Coadyに、自分は笑顔で「客は大喜びだったよ。誇りに思うよ」と言うと肩に手を置くとホッとしたようだ。片づけを終え楽屋に戻ろうとするとDanny がCoadyを捕まえ「なんで途中でステージ降りちゃったんだ?曲の最後まで弾いて欲しかったのに」と笑いながら言ってくる。DannyはCoadyのドラミングをかなり気に入ったらしい。

この日からToolのクルーがBBの機材を運んでくれる為後片付けはなし。贅沢すぎる。シラフのDustyの運転で1時間くらい走り、またMadison近くに宿をとり、まずまず納得行くショーで合った事を皆で確認した上で床に着く。

New York>>Washington DC>>Philadelphia

6月19日, New York, New York

約4時間でNew Yorkに着く。他のどの街より人の数が多い。人ごみをすり抜けどうにか会場のKnitting Factoryに到着。モニターエンジニアのMは、以前Coadyのルームメイトだったらしく話が止まらない。サウンドチェックを済ませると、カメラや録音機材を運んでいるクルーが目に付く。guitarworld.comがBBをインタビューをしにきたらしい。http://blogs.guitarworld.com/metalkult/videos/big-business-the-metalkult-interview/ Coadyは友人と食事に出て、Dustyは新しいTシャツが届いたのでその整理、Jaredはそのインタビューで自分だけが取り残される。腹の減った自分はDustyとJaredの分も含めチャイナタウンへ夕飯を買いに行く。一番近くの店に入り適当に注文。チャーハンや春巻きなど5点ほど買って帰りそれを楽屋にて3人でほうばる。必ずそうとは限らないがLAのチャイナタウンの飯より美味く思えた。

数日間ツアーをともにしているThe Panthersの公演が終わった頃には会場は人で溢れている。Mixi、Myspaceで連絡を取り合っていた日本人のネット仲間、Yとその友達も駆けつけてくれた。guitarworld.comは公演の模様もビデオに収めると言う。気合が入る。演奏は今まで最高の出来。自分も殆んど間違えがなかった。最後の曲"...Something Cry About"の出だしのタイミングを間違えた時、Jaredが自分の方を見て大笑い。それを見て自分も大笑い。客の反応もこの旅で一番と言っても過言ではない。自分の脇からダイブするものまでいた。BBの友人で今晩宿として世話になるReubenは最前列から自分の方を見て「ギターパーツ("ギターが入って良くなった"と言う意味だと思う)」と連呼する。最前列で写真を取っていた男性が、ステージから降りようとした自分に「君はBBのメンバーじゃないよね。でも君の事を調べて記事に載せたい。名前を教えてくれ!」と言ってくる。すっかり上機嫌な自分。

機材を積み終えた後、友人と話しこみ、さらに酒をくらいに会場の地下にあるバーで乾杯。Coadyは友人(彼女???)と街のホテルに泊まると言い一行に別れを告げる。別れ際、自分は大きな声で「Have Good Sex!」と言うと皆は大爆笑。残った一行は3時過ぎまで飲みまくる。Reubenの家に向かうためバンに戻る。酒を飲まないDustyが運転席でエンジンをかけようとする。かからない...まただ...小雨降るNew Yorkのど真ん中でエンジンストップ。はしゃぎ過ぎで撥が当たったか...20分格闘した頃、バンを止めた通りにあるバーの店員が何か手伝えるかと声をかけてくれる。自分はその言葉に甘えトイレを借りる。トイレからもどり数分、牽引を考慮し始める。Dusty以外は皆酒が入っていたため、こんな状態でも冗談が耐えない。誰かが「皆で手を繋いで祈りながらエンジンかけてみよう!」と言い、冗談半分で試してみる。すると見事にかかった。自分は皆の手を取り目を瞑っていた時"腹減ったな~。何か食いて~"と思ってたが...かかった。皆笑いがとまらない。車を止めたくなかったので何処にも寄らずReubenの家に到着。彼の家の残りものを食べ就寝。


6月20日、Washington DC, Washington DC

昼過ぎ、Reubenの案内でGreenpointと呼ばれるポーランド人の多い街で食事をすることに。Lomzyniankaと言うポーランド料理レストラン。
http://www.lomzynianka.com/ (メニュー http://www.bridgeandtunnelclub.com/bigmap/brooklyn/menus/lomzynianka.htm) 自分はサンプラー/プラター(メインエントリーの料理が一つづつ載せられたディッシュ)を頼む。ソーセージがジューシーでやわらかくしつこくない。ロシア料理にも出てくるピロシキはさっぱり揚げられていてうまい。今回の旅の食べた物の中で5番以内に食い込む美味さ。全体的にはこっているしているので夕飯に向いている気がする。ちなみに今日から数日間Reubenも旅についてくる。

Washington DCに着いたころには日が傾いていた。会場はDave Grolhもオーナーの一人だ(った?)と言うBlack Cat。その割にはあまりカッコいいとは思えなかったが...何時もはBB含めて最低3バンドでるのだが、今日は珍しく前座はPanthersのみ。BB の出番になると会場は売り切れとまでは行かないが満員。ショーが始まり演奏しているとヴォーカルが聴こえ難いことに気付いた。何時もはショーが始ればモニターに文句をつけたりはしないのだが酷かったのでそのことをマイク、PAを通して伝えると、観客の多くが「そうだ、そうだ!ヴォーカル上げろ!」と言う。後でDustyに聞いた話だが5人ほどの客が直接サウンドエンジニアにヴォーカルを上げるように言いに行ったそうだ。それでもショーは盛り上がった。公演後はMarylandまでドライブして宿を取る。


6月21日、Philadelphia, Pennsylvania

夕方、Philadelphiaの都心に着く。高速の脇の看板が幾つか目に付く。その中の一つにRock系のラジオ局(アメリカは音楽のジャンルに別れて局が作られることが多い)があり、"Rockしているラジオ"と書かれていたので、Jaredが「へー本当にそうかね?」と周波数を合わせる。流れていたのはCheap Trickヴァージョンの"California Man(原曲はRoy Wood)"。Phillyに着くなりCalifornia。でもロックしている。次に流れた曲は糞だったので直ぐに切り会場探し。ちょっと迷った後何とか到着。

ステージがやたらと高く、照明に近い所為もあったのか非常に暑い! でも客はもっと熱かった。あとで聞いた話だが、CoadyとJaredはステージの暑さで気を失いかけたと言う(多分大袈裟)。Jaredは何時も曲と曲の間に長くならない程度に笑える話をするのだが、今日は2日前にあったことを話していた。BostonからNew Yorkに行く途中、サンドイッチのチェーン店で食事を取った。自分がまだ注文を取っていた時、残りの面々はテーブルで待っていた。その直ぐ隣のテーブルにその店のマネージャーとその部下らしき人間がミーティングを行っている。新入りのアジア人女性が彼等に挨拶に来る。部下は「新人のJennifer(仮名)です」とマネージャーに紹介する。Jennifer(仮名)が去った後、マネージャーは部下に難しい顔をして「おい、じゃ、今この店には2人のアジア人がいるのかよ」と言ったらしい。それを聞いたJaredはその2人が席を立った瞬間、彼等のノートに"アジア人"と書きそこにアンダーラインを引いて店を出た。その場にいないとちょっと分かり難い人種的冗談(実話)だが数人の客は笑っていた。バンドは暑さでまいっていたものの、客の盛り上がりにも押されショーは大成功。

New Yorkからわざわざ観に来てくれた友人Yがタクシーの迎えがきたので出入り口で別れを告げる。会場に戻ると3人の観客が自分を待ち伏せしていた。と言っても勿論良い意味(?)で。彼等は自分に酒を奢りたいと言う。もらったのはPhilly Cream Ale。それを手にとり乾杯。いまいちパンチにかける。会場を後にして1時間弱車で走りPhiladelphiaと明日の公演地Boltimoreのほぼ中間点のDelaware州Newarkに宿を取る。

Tuesday, August 07, 2007

Columbus>>Boston

6月16日、 Columbus, Ohio

一行はJimの案内で遊びに来ていたJimの両親とJimの仕事場の数人とホットドック屋へ食事に行く。その名もHot Doug's(http://www.hotdougs.com/menu.htm)。ホットドックの名前がElvisを始めとするミュージシャンや俳優などの名前になっている。店長自らがオーダーを取り、店長が来れない日は店を閉じるという変わった所。昼前後は行列が絶えないほどの人気。自分はその"The Elvis"を注文。こってりしたソースとやわらかいソーセージがパンになじんでとても旨い。食事を済ませ、Jimと両親、同僚に別れを告げ、 Chicagoを発つ。

約6時間の運転の後、会場のLittle Brother'sに到着。CoadyとJaredはその会場に着く前に、以前同じ場所で演奏した時サウンドエンジニアの態度の悪さにあまり良い印象をこの会場に残していない事を話していた。バンを止めるとその目の前にそのエンジニアのKが座ってタバコを吸っている。CoadyがKに挨拶をしに行く。遠目から見てもKの様子がおかしい事は分かった。なにやら悲しそうだ。それもそのはず、このLittle Brother'sは2週間後に店を閉めるそうだ。この日はKの態度は一転していたらしい。公演は大盛況。公演後、Kの友達も含めBBと自分とでKの新しい門出を祈って乾杯。彼女はBBが最後の思い入れのあるバンドであった事を皆に伝える。彼女はここ数年、仕事をしていて彼女が好きになれるバンドが無く、音楽自体を嫌いになっていたとも告白する。そこで自分は「辞めたらまた音楽が好きになれるんじゃないか?」と言うと、皆が「良いこと言うね」と納得。彼女が涙を流し、空気が重くなった所に自分が思い切り屁をこき、ムードをぶち壊して会場を後にする。

ちなみに話は前後するが会場から約500m南にあるNorthstar Cafeで夕飯を取った。豆腐のブリ-トを注文。ヴォリュームがあり野菜や豆腐でさっぱりしている。この旅で食べたもののなかでもっと美味しかった一つ。ビールはMichigan州の会社、Bell'sのOberon Ale。ちょっと果汁っぽい味が強いがこの食事とは相性がよく味わえた。公演後の夜食は西海岸では決して目にすることが出来ないバーガー・チェーン店 White Castle。"Harold & Kumar Go to White Castle"と言う映画が出来るほど東海岸等の州では根強い人気。"ハンバーガーがメチャクチャ旨い"と言うのが人気の理由ではない。映画を観れば分かるのだが、パーティー等(映画はもっと他の理由)で遅くなって他のレストランが空いていなく、24時間営業のここを選び、それが癖になる人が多いそうだ。バーガー、チーズ、たまねぎ、ピクルスが挟まれた、小さいハンバーガーが30個入っている"Crave Case"を注文した。3時過ぎの空腹にそれがたまらなく感じた。


6月17日、移動日

約1030kmの移動のため、6日ぶりの移動日。途中から自分がバンを運転。Ohio, Pennsylvania, New Yorkと3州を一気に横断。自分はただ高速を運転しいるだけなのに、それに気付いたDustyが「トシ、3州、一気横断!さすが、やる~!」と叫びだす。笑いがおこったあと、自分が大声で"New York、New York"の前奏を歌いだすとJaredが唄を歌い始める。Jaredはのりが良い。6時間ほど運転した後、ほぼ中間点のRochesterで宿を取り就寝。


6月18日、Boston, Massachusetts

この街には昔からあこがれがあった。シーフードがもっとも旨い場所でもあり、自分のもっとも好きなアメリカのビールの一つ、Samuel Adamsが作られた町でもある。音楽ではアメリカで最も有名な音楽学校、バークリー音楽大学があることでも有名。Aerosmith、Boston、 Cars、J.Giles Band等の大物ロックバンドを輩出した所でもあり、アンダーグラウンドではハードコアパンクが根強い人気を保っている場所でもある。そしてRed Sox...いろいろな面で期待は高かった。

約6時間の運転で会場のThe Middle East Cafeに着く。サウンドチェックを済ませると、同系列のレストランで食事の割引券をもらいそこに夕食を取る。多くの客で賑わっている。自分はチキンサンドイッチを注文。会場名の通り中東料理風でピタで野菜とチキンが包まれている。Red Soxの試合をテレビで観ながらそれを食べ始める。まずい...テンションは一気に下がった。この旅で一番不味いものと確信。食べ終える事が出来ず空腹を満たす事なく席を立つ。会場にもどり口直しとばかりにビールを頼む。地元のHarpoon BreweryのUFOをタブで注文。味が薄くパンチにかける。口直しにはならなかった。

月曜にもかかわらず、BBの出番になる頃には会場は満杯。食事とビールの嫌な思いは一気に冷め、演奏にも気合が入る。疲れと足りない夕飯の所為(言い訳)で演奏の方はまずまず。客の反応はこのツアーで5番目くらいのよさ。Coadyはかなり満足な様子で、ステージを降りる際、自分にハグをして軽く頭の上にキス。公演後は観に来てくれた、BBと同じレーベル、Hydra Head Records所属アーティスト、Cave InのAdam McGrathの家に向い泊めてもらうこととなる。

Sunday, August 05, 2007

Minneapolis>>Chicago

6月14日、Minneapolis, Minnesota

今週行った町とは比較の出来ないほどの大都市。街行く人達の数も比にならない。Minnesota Twinsのスタジアムを横目に会場入り。会場も広く店員もBBを知っている為、愛想が非常に良い。バーテンダーが着いていきなりビールをご馳走してくれると言う。自分が選んだのはMinenesotaのSurly。タブビールだったのでSurly(会社名)のどのビールかは分からなかったが、空腹の自分にはこのスムーズで重過ぎないビールは旨く思えた。この後自分はSummit、Blue Moonと言った地ビールも試してみた。会場の隣が同じオーナーシップのレストランで、会場のはからいで飯が用意される。暑さや疲れであまり重い夕飯は食べたくなかった一行はチキンサラダなどを頼む。

飯を済ませるとショーが始っていた。自分はMinneapolisに住む友人Mikeとその弟Tomと飲みながらバーで話し込んだ。以前、彼のバンドをオーバーダブ(自分が楽器を弾いた)とミックスをした事もある。That's What You GetというバンドでMikeとMikeの奥さんDawnとがボーカルを務める、初期のB-52'sに似たサウンドに政治的な歌詞を交えたシニカルでコミカルなバンド。http://www.thatswhatyouget.net/ 自分が仕事したなかでもっとも好きなバンドの一つ。Jello BiafraにCDを渡したら気に入っていた。ちなみにこのバンドはひねくれているのでMyspaceは存在しない。

前座がBBの一つ前のバンドとなったのでウォーミングアップをしに楽屋にこもる。しばらくすると突然、モヒカン頭の大男が楽屋に入ってきて、「Toshi、覚えているか?」と自分に握手を求め入ってくる。別に驚きはしなかったが、見覚えの無い顔ゆえ困った表情をすると、「驚かしてすまなかったな、俺だよ。Fargoの客にいたDaveの友達のJoeだよ」と大声で言ってくる。確かにDaveと言う客と喋ったのは覚えているが、このJoeと話した覚えはない。観客は200人を超えていたしスポットライトを浴びているステージからは観客の顔は見づらい。喋った事も無い人間を覚えられるわけがない。 Joeは他の友人2人とともにしばらく楽屋に居座り、狭い空間でタバコを吸いながら「終わったらパーティーしようぜ!」などと話を止めようとしない。絶えかねた自分は練習するから出て行ってくれと何とか連中を追い出す。Joeは出て行く瞬間、バンド用に用意されたビールを指差し、「もらっていいか?」と尋ねてきた。一本ならと言う意味をこめて「ああ」と言うと4本取って行った。しばらくして自分がトイレに行き楽屋にもどるとその3人は楽屋で話し込んでいる。今度はJaredを捕まえ喋りまくっている。自分はその部屋の片隅で彼等を無視して練習。全く出て行く様子がない。我慢できずに廊下へ避難。

廊下で待っていると直ぐにBBの出番となる。準備にをしているとステージ前には既に人が集っている。Joeを含めた3人も自分の横に来ている。 The ShinsのDave Yanul Hernandezが来ていたので挨拶をする。客ののりはSeattle公演と同じくらい乱れている。それ以上だったかもしれない。"Easter Romatic"の途中でDaveが自分の目の前に立っていることに気付き、"やりにくいだろう"と言う意味をこめて彼を指差すとお互いに噴出してしまう。終わってみると大歓声が沸き起こっている。いつものよう、自分のYamaha PSS30の自動演奏"Yankee Doodle(アルプス一万尺)"を流しっぱなしにしてステージを去るのだが、この晩、客はそれに合わせ手拍子をして「もっとやってくれ」とアンコールを求めてくる。今までにない大歓声。しばらくするとCoadyがステージに戻り「もう弾ける曲が無いのでこれでお終い」と観客をなだめる。それを見終え楽屋に戻るとビールがすっかりなくなっている。Jaredと顔を見合わせ「あいつら~(Joe達)」と声まで揃える。グッツ販売はSeattleの時を超え BB結成以来最高の売上であった。楽屋にビールがあれば最高のショーのエンディングとなったのだが...「あいつら~」

6月15日、Chicago, Illinois

6時間かけて会場入りする。6時間の中に渋滞が多く含まれている。Chicagoはアメリカでもっとも渋滞の酷い街の一つ。会場の直ぐ裏は住宅地になっていてバンも止め難い。荷物を降ろした後、ちょうど出て行く車を見つけその場所を確保。その後直ぐにサウンドチェック。チェックを終えるとThe Panthersと言うバンドが機材をステージに運び込んでいる。この公演からBaltimoreまでの7公演をBBの旧友でもあるこのPanthers とツアーをともにする事となる。PanthersのメンバーはJason、Jeff、Joe、Justinと、皆"J"から始るので名前を覚えるのに時間がかかった。

食事は会場が用意してくれた。自分はハンバーガーを頼んでそれにビールをつけてもらった。そこでは312とGreat LakeのEdmund Fitzgerald Porter を飲んだ。312はGoose Islandと言うChicagoの会社が作っているウィートビール。自分には軽すぎてパンチに欠けるような気がした。Great LakeはOhio州Clevelandの会社。これは旨かった。今の所、このツアー一番の味。

昨晩に引き続き、公演は大成功。またアンコールが起こる。公演終了後、今晩宿を提供してくれるSouthern RecordのJimとレコーディングについて話し込む。Southern Recordは主にディストリビューションをしていて、一番大きなバンドにはFugaziがいる。BBから自分のことは聞いていたようで、Jimは少し興奮気味に話してくる。レーベルも経営しているようで、近い将来2バンドほど自分に手がけて欲しいと頼んでくる。そのJimの案内で夜食としてメキシコ料理を食いに行く。この北の街に多くのメキシコ系の人がいたのには驚かされた。重いメキシコ料理を食べJimの家でありSouthern Recordの倉庫でもあるその屋敷で就寝。勿論、寝る前には歯は磨いた。

Saturday, August 04, 2007

Missoula>>Fargo>>Omaha>>Des Moines

6月9日、Missoula、Montana

Daveの家を昼前にでる。高速を数十分東へ走ると、景色は直ぐに大都会から大自然と変わっていく。雨が多い地域なため緑が多く見られ湖にも水嵩が多く水も澄んでいる。今まで色々な場所で"鹿注意"の写真を見てきたが、鹿が飛び足した所や死骸を見たことは無かった。Seattleから Missoulaの間、約630km、2頭の死骸を見付けた。Missoulaについた頃には日は傾き始めていた。

学生街で知られるこの町は夏休み中であり、人の数もぽつぽつ。動員数もあまり期待できない。会場、The Badlanderについた頃には開場の時間が近づいていた為サウンドチェックはなし。機材を運び終えた頃には数人の客が既に来ていた。その中に3人の若者がいた。自分を知っているかのようにじろじろ見ている。彼等の近くを通り過ぎようとした時、「トシだろう?」とその中の一人がニコニコしながら話かけてくる。「AltamontのCDは売っていないか?」と自分の事を知っているようだ。話し掛けてみるとMelvins/Altamontの大ファンらしく、自分がBig Businessのツアーに参加していることをMyspaceで知り、わざわざNorth Dakotaの中心に位置する町、Bismarckから11時間かけて来たという。

その3人組としばらく会話したのち、メンバー2人とDustyに声をかけ食事をすることに。近くのお洒落なピザ屋を見つけそこで夕食をすることにした。酒の供する免許を持っていない為、酒をこの店で頼む事はできないが持ち込可だと言う。その隣がバーであったのでピザを注文したあとCoadyとそのバーにビールを買いに行く。映画に出てきそうな典型的なアメリカのバー。アジア人が珍しいのか自分の事をじろじろ見る人も多い。そこで残りの2本であった地ビール、Moose Droolを購入。この旅初めての地ビール。ちょっと甘いがしつこくない。まあまあと言ったところであろうか。

開場に戻るとショーは始っていた。前座の一つに二十歳前後(推定)で作られた初期のMetallicaやMegadethを彷彿させるバンドがいた。長くストーレートな金髪。80年代に流行った、タンクトップではなく、肩まで覆われた袖のないTシャツ(名称が分からない)、薄い青のジーンズ、スニーカーとファンションまで80年代。客も大のり。隣接しているバーに行くとジュークボックスから、全盛期のPhil Collins等の曲が流れてくる。時代が止まっているように思えた。Bismarckの3人組とCoadyと5人でそのバーで酒を交わし、80年代の音楽を聞きながらしばらく盛り上がる。ちなみにBBショーは大盛況。

6月10日、移動日

会場近くのホテルに一泊して昼に出発。次のショーFargoまで1300km強あるのでMontanaの東の町、Glendiveでホテルを見つけることにした。Glendiveの近くになった頃にはあたりは真っ暗になっていた。真夜中の高速でバンを走らせていたCoadyが突如減速。それに驚いた自分は"何があったのか"と高速の先を見つめる。すると大きな鹿がバンを怖がる事もなくゆっくりと高速を横切ろうとしていた。

6月11日、Fargo, North Dakota

暑い...Fargoに着くと、暑さと長い運転の疲れが4人を襲ってくる。会場、The Aquariumに着くとまだバーの店員は着ていないようなので食事を取ることに。近所で見付けたベトナム料理屋に行く。クーラーのガンガンにかかったその店で暑いフォー・ボー(牛肉の麺スープ)を食べる。パワーが蘇ってくる。が、勘定を済ませ外に出るとまたその暑さで疲れが戻ってくる。会場はスポーツバーの2階。階段を使って機材を運ばなければならない。ステージにはクーラーがガンガンに利いているものの、過酷な機材運びで殆んどその効果がメンバーには伝わらなくなっていた。予想を大きく上回り、観客数は約200人。にも関わらず自分はステージ上で集中できず最悪のショーとなってしまった。残りの2人にもあまり納得の行くショーではなかったようだ。

6月12日, Omaha, Nebraska

ちょうどこの頃、Omahaでは大学野球の決勝が行われていて、ホテルの予約が困難と考えられていた。が、思った以上に簡単に予約が出来た。町にもそれほど人が多く見られない。自分は「この町も大学野球で大興奮みたいだな」と嫌味を言うと面々が大笑い。会場からバンで離れ都心に出てみると多少の人が目につく。メキシコ料理屋を見つけそこで夕飯を取る。ウエートレスに"地ビールは無いか"と聞くと分からないから他の店員に聞いてくると言う。それもそのはずまだ19歳の学生で、この仕事を初めてまだ2週間弱。彼女が他の店員に聞いて持ってきたのがSpring Heat Spiced Wheat。好んで飲もうとは思わないが軽くてさっぱりしていて、重いメキシコ料理と疲れている自分にとってはちょうど良い。

昨晩の失態を忘れる為、会場に戻ると自分は楽屋で黙々とウォーミングアップ。その所為もあり公演は納得の行く形で終了。観客数はこのツアー最悪の70人強と言ったところであろう。会場が広かっただけに隙間が目立った。

6月13日、 Des Moines, Iowa

会場はほぼ都心に位置している為、回りはお洒落な建物が並ぶ。会場から2ブロック離れた所にあるCourt Avenue Restaurantと言うお洒落なレストランで食事をする。ここはビールも作っていてIowaではかなり名の通った場所なしい。店員も愛想がよくてきぱきしている。が、Jaredが頼んだビールに洗剤か何かの液体の粒が浮いている。同じ物頼むとそれがまた入っている。違うビール頼みようやく食事にありつく。自分はBlack Hawk Stoutと言う黒ビールを注文。こくがあり甘すぎない。注文したパスタともよく合い大満足会場に戻る。

会場には昨日と同じくらいの人数が集っている。会場自体が小さい為多くの人が集っているように見える。公演は無事終了。演奏もまずまず。皆が満足した様子でホテルに着く。空腹に絶えかねたJaredがピザを注文する為にネットや電話帳で狂ったように調べ始める。その中の一つのメニューをネットで探していたら、そのピザ屋への不平のページを見付けた。http://www.complaints.com/directory/2004/january/17/1.htm内容はある男性が以前その店に注文した時、その人の住んでいる地域には配達しないと言う返事が帰ってきたらしい。何故かと尋ねると"それらの人々"が多く住んでいるからだと言う。"それらの人"とは黒人を示している事を伝えられたと言う。なんともふざけたピザ屋である。他のピザ屋に配達を頼み空腹をしのぎ就寝。

Los Angeles >>Portland>>Seattle

6月6日、移動日

昼にリハーサルスタジオで待合、荷済みを始める。自分の機材の準備が終わるとCoady、Jaredの2人はまだ時間が必要だと言い自分は家で待機する事に。車に戻ろうと駐車場に行くとBuzzに出くわす。「まだ出ていないのか?俺だったら昨日の内に発っている」と嫌味を言ってくる。「所でトシは秋のツアーに同行するんだろう?」と聞いてもいないのに既に決定しているかのように話してくる。

Buzzと別れ部屋に戻り待機する。予定よりはるかに遅れ、2人が自分の家に到着して出発となる。皆、腹が減っていたので高速を30分走った後に In-N-Out Burgerで遅い昼食。カルフォルニアをひたすら北上する。3時間弱走った後にトイレ休憩でガソリンスタンドに着く。皆がようを済ませた後、ぶっ通しの運転で疲れたCoadyが自分に運転を頼んでくる。鍵を渡され運転席に座りいざ出発。...何かがおかしい。エンジンがかからない。アクセルを踏みながら鍵を回すように言われ、その通りにエンジンをかけ始める。…かからない。数分、数十分まってかけ直してもかからない。ボンネットをあけ色々調べてみる。エンジンにガソリンが届いていない。典型的なヴェイパーロック現象(日本語版と英語版のWikipediaでは意味が違っている)。砂漠の中のスタンドで車が冷えるのを待つのみ。

車が止まり既に三時間が経っていた。キャッチボールなどして気を紛らわせるものの、個々の表情は硬い。友人、家族の中で車に詳しいものと連絡を取るものの、バンは"うん"とも"すん"とも言わない。諦め牽引車を呼ぶことに。電話でのやり取り。保険会社は一番近い修理工が見つからずCoadyの家に牽引しなくてはいけないと言って来る。それを聞き個々に絶望感がよぎる。保険会社から折り返しの電話があり、牽引車が向かったと連絡が入る。それを聞き皆が必死になり、給油ポンプを開け閉めしたり、オイルを足したり色々し始める。Coadyは半分気の狂ったような顔でエンジンをかけ始める。すると音が変わった。皆が手を止め、お互いの表情を伺う。またかけるとかからない。3度目にアクセルを思い切り踏みながらかけた瞬間、爆音とともにエンジンがフル回転し始める。保険会社に電話を入れ、牽引をキャンセル。北へと向かう。予約していたホテルに着いた時、二日で16時間の運転の予定が一日目で14時間費やしてしまった。


6月7日、Portland, Oregon

悪夢のような運転から一夜(睡眠時間、約5時間)たち、バンは順調に目的地のPortlandに向かう。Portlandまで後2時間と言った所でCoadyの携帯に連絡が入る。「ヘイ、Adam...ウン、ウン...分かった。メンバーと相談してかけ直して良いかい?」と電話を切る。驚いた表情で一つため息をした後、Coadyがその内容を自分とJaredに伝える。電話はToolのAdam Jonesからであった。前座として6月の後半からToolのツアーに参加して欲しいとの要望。CoadyがJaredに相談し始める。Jaredは「って事は自分達の単独ツアーの後半をキャンセルしなきゃいけないってことだよな?期待している人達に悪いよな~」とか金銭面なども気にし始める。しばらくすると「トシだったら、どうする?やるかい?」と尋ねてくる。自分は「Hell yeah!」まだ一公演もこなしていないのに嬉しい悩みが舞い込んでくる。

バンも止まる事なく無事に会場、The Doug Fir、に到着。一回がレストランになっていて地下が会場。機材を入れ、サウンドチェックをしたのち、会場に計らいで上のレストランで食事を取る事に。自分は"Crunchy Trout"と呼ばれるマス揚げを注文。新鮮で品のある味のマスがしつこくない程度に揚げられ、さっぱりしたドレッシングとレモンが合い、ツアー初日からめちゃくちゃ美味いものをご馳走になる。このツアーへの期待が高まる。

前座の2バンドが終わった頃、会場にはBBの友人達も含め270人の客が来ていたと言う。ツアー初日とあり多少の緊張はあったものの美味い飯、良いニュース(Toolの前座)、そしてビール(PBR)が自分の気分を和ませる。演奏の方はまあまあ。CoadyとJaredの二人が4曲目と5曲目の順番を間違える。が二人同時に間違えそのまま演奏しつづけた為、曲順どうりに弾いていた自分だけがあたかも間違えたようであった。公演終了後2人がその間違えを認める。

寄り道をしたあとCoadyの友人の家で就寝となる。その家の近所はThe Simpsonsの作者、Matt Groeningが住んでいた場所でもあり、そのキャラクター達の名前の元となった道が続く。家に着くと玄関の前に大きな犬の糞が置かれて(?)いた。それに気付かなかったJaredはそれを踏み部屋までそれを引きずってしまった。就寝前に大掃除が始ってしまった。


6月8日、Seattle, Washington

Portlandを経つとJaredの出身地Olympiaに寄り、Jaredの旧友Adamをピックアップする。Adamはこのツアーの後半、グッツ販売件ローディーとして同行する事となる。Coadyの地元Seattleに着くとガソリンがかなり減っていて、運転していたCoadyはそれを気にし始める。Jaredはメーターを見て会場までは何とかなると判断。その直後、ラッシュアワーで交通量の激しい丘の上の通りでガス欠。Adam、 Jared、自分の3人でスタンドを探しに行く。一キロ弱歩いてようやくスタンドに着く。予め携帯で連絡を取っていたJaredの弟でこのツアーのグッツ販売/ローディーを担当するDustyとスタンドで初対面する。ガソリンをプラスティックタンクに入れるとDustyの車でバンの止まっている場所までそれと自分達を輸送。ガス欠から30分立った後に給油。


Dustyは一旦家に戻り会場で待ち合わせする事に。会場に着き、機材を持ち込み直ぐにサウンドチェック。それが終わると家族が来る予定の Jaredを残し、Adam,Codayと自分の3人で食事をしに出かける。数ブロック歩いた所にあったお洒落な寿司屋で夕飯をとる。二日続けて良い食事。レストランの種類の少なさにファーストフードばかりの食事をしていた前回のツアーとはかけ離れている。会場に戻ると2つ目のバンドの演奏が始まっていた。狭い会場に凄い数の人。370人。BBの出番の前に2人からイントロでノイズをしばらく流して欲しいとのリクエスト。自分の機材を使ってノイズをかけ始める。5分以上かけつづけても2人は出てこない。長すぎる。客が飽き、疲れるのではと心配し始める。自分はノイズを流したままアンプの裏に隠れひたすら待機。7、8分が過ぎたころようやく2人が登場。予想を裏切り客は大ノリ。ショーは大成功。

ライブ終了後、隣のバーで数杯飲んだ後、Coadyの旧友で、今のっているバンドThe Shinsのギターリスト、Dave Yanul Hernandezの家にやっかいになる事となる。DaveはBBのファーストアルバムでギターを弾いている。公演直前に彼等からDaveを紹介され、彼がCDでギターを弾いている曲を自分がライブで弾く事を知り、ちょっとした違和感...だがDaveは自分のプレーにかなり満足だったようだ。彼の家に着きしばらくするとDaveがDVDを観ようと言ってくる。ケーブルTVのチャンネルの一つにCartoon Networkと言う物がある。朝から夕方まではアニメを流しているのだが夜になると"Adult Swim"と呼ばれる時間帯になり、大人が楽しめる(助平な意味ではない)アニメやコメディーを流す。その中の一つに"Tim and Eric Awesome Show"がある。DaveはそのDVDを皆に披露。Ali G. Show, Little Britainと好きなショーが終わってしまい、新しいコメディーに飢えていた時にこの新鮮な衝撃。一つのショーが11分と短く、安上がりなコマーシャルやTV番組を皮肉ったテンポの良いスケッチの数々。作るほうも安上がりだが、ゲストやアイディアが非常に良い。ガス欠に出くわしたものの美味い飯、良いショー、良い客、新しい笑いを知り大満足な一日が終わる。