7月14日、Albany, New York
予めホテルを予約をしていたのでホテルに直行。今日は友人が来るので皆で泊まれるように自分も一部屋予約しておいた。流石はNew Yorkの首都のど真ん中にあるホテル。今まで泊まったホテルとは比べ物のにならないほど清潔感があり豪勢だ。自分は荷物を置いて一人で会場に向かう。会場はホテルから徒歩2分。楽屋でギターの練習をして時間を潰す。サウンドチェック前になりCoady、JaredとLAから遊びに来たJaredの彼女S が到着。あとはいつもどおりに行われショーも好評。Toolの公演もいつもどおりに盛り上がる。
後2日の公演でこの夏のToolのUSツアーは終了する。そのこともあり、今日はToolの公演終了後パーティーを開くと言う。観客が全て会場を出たのを確認して自分たちも一度ホテルに戻る。綺麗なホテルのエレベーターのど真ん中に大きな下呂が。多くのToolファンもこのホテルに泊まっているようだ。一休みした後また会場に向かう。Toolの面々、クルー達と飲んで騒ぐ。Coadyはかなり酔っていた。明日は短いが運転を控えている自分達は1時間ちょっとでそこを去った。ホテルに戻ったときエレベーターの中の下呂はきちんと掃除されていた。
7月15日、移動日
明日の公演がPennsylvania州Readingとさほど遠い距離ではないので皆New Yorkの友人の家などでバラバラになり過ごす事にした。運転好きのCoadyは都会での運転を嫌っているようだ。東京の運転に慣れていた自分がNYの人込みの中を運転する事に。BBの友人Reubenとも再会。Coadyと3人でReubenの家の近くのバーに飲みに行く。そこでまたお気に入りの Brooklyn Lagerを飲む。その後は自分は他の友人の家に行き、そこへ泊まり、明日の朝地下鉄でReubenの家で待ち合わせすることにした。
7月16日、Reading、Pennsylvania
地下鉄でReubenの家に向かいそこからCoadyとホテルに泊まっているJared達を迎えにいく事に。またもや自分の運転。 Chinatownのホテルに泊まっていたJaredとSを拾い、大都会の人込みとおさらばする。SをNew Jersey州New Wark空港で降ろしSはLAに向かう。Pennsylvania州に入りReadingへ繋がる高速を見つけるが工事中で閉鎖されている。地図で一般道を調べながら予定より少し遅れて会場に到着。楽屋に入るとビールが既に用意されている。Molson Coors Brewing CompanyのBlue Moon。甘味が強いがあと味はそれほど悪くない。しばらくするとケータリングの飲み物担当のZが楽屋に来て「今日は地ビールもう一本見つけたから持ってきた。俺も後で飲んでみるけど感想を聞かせてくれ」と言い, Pennsylvania州Adamstownの会社、StoudtsのSmooth Hoperatorを持ってきてくれた。これは果汁の味が強くカクテルのようで、自分はこのツアーで飲んだ中、最も好きになれない味であった。せっかくZ が用意してくれたが正直にそれを話すとZも試すのをやめておくと言った。
BBの出番となる。演奏は自分達も納得が行くくらいうまく行っていたのだがブーイングこそなかったものの客の反応はいまいち。同じ州の PhiladelphiaのBB単独公演では客が狂っていたと言っていいほど盛り上がっていたので、その分期待してしまった。だが曲を重ねるごとに歓声は次第に大きくなっていく。そこでJaredは最後から2番目の曲で「ブーイングしてくれると良いんだが」と客にリクエスト。曲が終わると同時に大ブーイング。最後の曲が終わっても同じようにブーイング。しばらくするとその半分くらいが歓声に変わったものの、中にはやけになって罵倒している者も数人いた。その中の一人が半端ではなかった。ステージで片付けをしていると「早くToolだせ。お前達は最悪だ!」と会場の全ての客が聞こえるような声で叫び続ける。だがその男はこう続けた「お前達は酷い。もう2度と観たくない!けど何かくれ~。ドラムスティックくれ~」自分は笑いながらステージを降りようとすると「なんだよ。お前等!ピックくれ。なんでも良いからくれ~」と言い出す。機材を降ろし終えた自分はバックからピックを一枚取り出しその男の方へ向かう。 Jaredも同じ行動をとる。Jaredと同時にその男にピックをあげるを男は「君達は素晴らしいよ!Toolのコンサートなんども観たけど、前座は君達が一番よかった!」と小声で話し掛ける。笑いながら礼を言ってその場を立ち去ると男は「早くTool出せ~」と続けた。
Toolの公演はいつもどうり大盛況。会場から車で約40分の町でWhitehallにホテルを取り会場を出てそこに向かおうとする。まただ...バンがスタートしない。今度はNew Yorkの時と違い幾ら待っても全くウンともスンとも言わない。会場の係りのものが心配になって車を開けて調べようとしてくれる。その中の一人は車にかなり詳しい。マニュアルを見てああでもないこうでもないと。それでも部品を取り替える必要があるから牽引しないとどうしようもないと言う。明日は移動日で休みなため、とりあえず保険会社に電話をしてホテルまで牽引してもらい、明日なってから修理工に持っていくことにした。Jaredが牽引車に乗ってホテルに向かい、自分とCoadyは会場の係りの者に送ってもらう。悩みを抱えて床に着く。
7月17日、移動日
朝起きてバンのエンジンをかけようとしてもかからない。たまたま歩いていける距離に大手カー用品店のPep boysがあった。Pep boysには必ず修理工も備えられている。牽引を頼みバンを診てもらう。2人はバンのことが心配であまり眠れなかったようだ。夕方に近くになるとPep Boyから電話が入る。バンを診ようとエンジンをかけたらかかり、一応調べたがどこも悪くないと言う。結局バンは修理されないままBBのもとに戻ってきた。このWhitehallと言う町はBilly Joelの曲でも知られるAllentownの直ぐ隣にある。一行は戻ってきたバンでAllentownにレストランを探しに行く。だが曲の歌詞にも表されているよう、とても活気に溢れている町には見えず、めぼしいレストランも見当たらなかった。結局Whitehallに戻りメキシコ料理屋を見つけそこで夕食を取る。そらにはLAでは見られないいわし雲が。それを見ながら自分の頭の中では”Allentown"が流れつづけていた。
7月18日、Holmdel, New Jersey。Tool公演最終日
明後日からまたBBの単独公演が始まり、Dustyに代わるグッツ販売の者が必要だった為、JaredのOlympiaの旧友Adamが駆けつけてくれる。New JerseyのNew Wark空港までAdamを迎えに行く。会場は空港からさほど離れていなかった。が会場に近づくと大雨が降っていた。午前中から降っていたらしく、その所為で機材の取り入れも遅れていた。また野外だった為屋根のない所の席の客のことが気になったが開場の時間になると雨はすっかりあがっていた。
雨の影響か客の入りも遅れている。それでもBBを観た客は喜んでくれている。最後の曲になると上空からなにかが落ちてきた。一瞬発泡スチロールの雪にも見えたが...ポップコーンだ!しかももの凄い量。後ろを見ると覆面をかぶった痩せた二人組みが工業用の扇風機を使ってポップコーンを舞い上げている。覆面をかぶっていてもAdamとJustinであることは直ぐに分かった。自分のペダルボックスはポップコーンで埋まっている。しかもそれと同時にまたもやJaredのメインスピーカーがやられてしまった。曲はメチャクチャになった状態で終わってしまったが最後と言う事でステージ前に立ち観客にお辞儀をする。Coadyは客席に降り客に挨拶。自分はJaredに頼みスノー・エンジェル(雪の上に仰向けに寝て両手で雪を掻き分け羽に似た模様を作る)ならぬコーン・エンジェルを作っている所をカメラに収めてもらった。この後の片付けは大変なものとなった。
楽屋に戻った一行はToolへの逆襲の案を練り始めた。逆襲は3人でドラムバトルに参加することとなった。3人が準備をするのを見たクルーも大喜び。誰かが買ったソンブレロ(メキシコの帽子)が何故かステージ横にしかも3つあった。クルーからそれを渡され”Three Amigos(サボテン・ブラザース)"のように登場する。自分はステックと鉄のパーカッション、Jaredはカウベルを持ってCoadyの両脇に立つ。それを見たJustinとDannyは大笑い。MaynardとAdamは"聞いていない..."と言うような顔をして2人でこそこそ話し出す。話を終えるとAdamは自分を見てクビを横にふって"Japanese..."と口が動いたのが分かった。笑いたかったがステージの上だったので堪えた。この時点でかっこよくするはずのバトルを笑いに変えたので逆襲は成立したように思えた。自分とJaredはドラムバトルの邪魔にならない程度の簡単なリズムを刻む。自分はCoadyとDannyの間で彼等のアイコンタクトの邪魔にならないよう気を配らなければいけなかった。Coadyのソンブレロはいつの間にかに床に落ちていた。Coadyがドラムバトルに参加するようになって3回目あたりから、そのパートでは観ること意外なにもしないMaynardは工業用の扇風機を使い、これまた工業用のトイレット・ペーパーを舞い上がらせ客を喜ばしていた。ここ2公演、それをCoadyのドラム目掛けて舞い上がらせていた。今日もCoadyのドラムはトイレット・ペーパーで埋まってしまう。バトルが続きいつもはそのまま曲に流れ込むのだが、今日は最後という事もあり、曲の途中ではあるがバトルが終わった時点でCoadyとDannyは席を立ち硬い握手を交わす。その近くにいた自分を見てDannyは笑顔で"もっと叩け、もっとやれ~"。Coadyはトイレット・ペーパーをドラムから取り除きそれを自分の頭の上に。Dannyのリクエストに反してそれを知らずに引き際と思ったJaredがソンブレロを客席に投げステージから下がる。それを見て見た目のバランスを考えた自分はトイレット・ペーパーを抱えたままフェイドアウトしていくように後進してステージから去る。それを見ていたJustinは大笑い。負け時と思ったかJustinはCoadyが落としたソンブレロをピックとして持ち替えベースを弾き始める。客も大喜び。
こうしてToolとBig Business最後の公演は幕を閉じた。多くのクルーは明日の朝の飛行機でそれそれの家路に着く為パーティーはなし。BBの単独公演に戻るので機材をバンに詰め込み出発の準備。JustinとDannyと楽屋で長話をした後、クルー達に別れを告げ会場を離れる。そこから30分の所にホテルを取っていた。 Adam以外は皆多少酒が入っていたので運転はAdam。自分は突然、New Jerseyと言う事でBon Joviの曲を歌いはじめる。Jaredも一緒に歌い始める。それを止めるかのようにCoadyがPoisonの曲を歌い始めJaredがそっちに乗り出す。その後は80年代ヘアー・メタル・バンド・ソングが次から次へとバンの中で合唱される。Extreamの"More Than Words”になった時、皆が曲と歌詞をはっきり覚えていず、だらしない合唱となり、Adamに「お前等プロの音楽家だろ?」と言われ、皆返す言葉を失いバンの中でのライブも終了。その直後、ホテルを着き明後日からの単独ツアーに向け深い眠りにつく。
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