7月23日、移動日
PaulとCheetieの家で午後一時まで寝てしまった一行。家を出た時には4時を回っていた。無理せず行ける所まで行こうと着いたのがAtlanta。この辺を行ったり来たり。Atlantaの南にホテルを取る。ホテルのフロントでやり取りをしているとバンの面々の所に自称"ホームレス"の男が現れる。「小銭をくれよ」「タバコくれよ」Jaredが少しの小銭を渡しても「これだけかよ。俺はホームレスなんだよ。I'm fu◯◯ed up(俺はメチャクチャなんだ)!」とやたらと強気な"ホームレス"。それにしては体格が良すぎる。筋肉むきむきのホームレスなど見たことがない。うそくさい。また治安の悪そうな所を選んでしまった一行。ゲート付きの駐車場を見つけその奥の方にバンを止め、遠目から機材を見えないようにした。
7月24日、Baton Rouge, Louisiana
高速は沼地のを横切って走るかのように川と沼が増えてきた。Mississippi川が流れる街の一つBaton RougeはLouisianaの首都でもある。会場Spanish Moonは都心からはなれ寂しい場所に位置していた。機材をステージに運びサウンドチェックを済ませ食事を取りに一旦会場を後にする。3分ほど走ると学生街となって人の姿も増え始める。The Chimeと言う店を会場の者から聞いていたのでそこに入る。ウェートレスが飲み物の注文に来たので, ビールは何を持っているか聞くと彼女は「A lot(沢山)!今、メニューを持ってくる」と言った。"また大袈裟だな"と思い彼女の持ってきたメニューを覗くと、決して大袈裟ではなかった。40種類前後はあった。その中から日本のヒタチノと言う地ビールを頼む。ちょっとフルーツっぽく自分にはあわなかった。それとは正反対で頼んだ料理は最高であった。Po-boyと呼ばれるLouisianaの名物料理。簡単に言うとシーフード・フライのサンドイッチ。自分が頼んだのはシュリンプ・ポーボイ。海老はあげられているのだが油が良いのか軽く、ソースがまたあっさりしていて美味い。このツアーで食べた物の中で最も美味しかったものの一つであることは間違えない。つまみにはワニの肉を炒めたもの。ワニ肉は以前、横浜の友人に食べさせてもらったことがあるが、その時よりやわらかく美味く感じた。確かその時はから揚げだった。
3人とも一日空き休養をとり,良いものを食べた所為か皆機嫌が良い。やたら広い楽屋でおおはしゃぎ。消防隊(又はストリッパー)が使うような滑り棒(正式名称不明)で記念撮影。ステージでもかなり気楽に演奏をしている。その雰囲気に流され自分も曲の間にキーボードでThe Whoの"Heinz Baked Beans”を弾くとJaredが"What's for tea, mom?" Coadyが”What’s for tea, darling?”とのってくる。女性客の一人が"今日は私の彼、Bの30歳の誕生日なの。バースデーソングやって!"と言うと、Jaredが嫌そうに"ハーッピバースデェートゥーユー"と歌いだす。自分がThe Beatlesの”Birthday"のリフを弾きだすとそれに続いてJaredが歌いだす。しばらくしてCoadyがドラムで続く。客は大喜び。BBの演奏に戻りしばらくすると自分の背後に数人いることに気付いた。ステージの上にいるので会場の者かと思いきやただの客であった。Coadyは迷惑そうにその連中をちらちら見る。自分も最初はやりにくかったが(ステージの前にいる)観客の雰囲気が自分を楽しませてくれ、ステージの上の連中のことをどうでもよく思うようになっていた。公演後ステージの上にいた連中に「なんでステージの上にいたんだ。今日の前座のバンド(観ていない)のメンバーか?」と言うと、ただ近くで見たかっただけだと言う。地元のバンドに入っている為BBの前座をやりたかったらしい。かと言いステージの上に上がるのはどうかと思った。
7月25日、移動日
Baton Rougeを発つ前にもう一度The Chimeで昼食をとる。Arkansas、Bill Clinton前大統領の出身地としても知られる。もの凄く田舎だ。大統領になりまわりからもてはやされ、舞い上がって秘書と寝てしまうのも何となくうなずけた。約6時間の運転でLittle Rockに到着。周りの田舎の景色に比べれば高層ビルが幾つか立ち並び大きくは見えるが、他の都市とは比べ物にならない。夕方の割合早い時間に着いたが何も遊ぶような所はなさそうなのでホテルでテレビを観てその夜は老けていく。ケーブルテレビでやたらとシュワルツネッガーの映画をやっている。"The Running Man(バトルランナー)"と"End of Days(エンド・オブ・デイズ)"を観て就寝。
7月26日、Little Rock, Arkansas
ダウンタウンまで歩いて行って見る。町自体は決して大きくはない。近くに川が流れていてやたらと橋がある。お洒落な路面電車も走っているし、舗装されているし、町並みも綺麗だ。でも特に観るようなところはない。ホテルに戻ってネットやテレビを観て時間を潰す。夕方になり会場へ向かう。会場のJuanita's Cantinaはバーとメキシカン料理屋とを経営していてかなり広い。楽屋は会場から離れた場所の2階。Coadyがリクエストしていてくれようで、地ビールが用意されていた。ドイツのPaulaner Hefe-Weissbier。これが苦味が強くあと味が悪い。でも何故か止められない。自分はタバコを吸わないがそんな感じではないだろうか。出番になり会場へ行く。集った客はこのツアーの中ではもっとも少なかった内の一つ。観客の数とは関係なしに演奏は納得の行くものとなった。来てくれた人々は大喜び。客が10人であろうと10000人であろうと喜んでもらえるのは嬉しいことだ。
7月27日、Oklahoma City, Oklahoma
Little Rockのイメージからまた小さい町を想像していたが、高い建物こそ少ないものの思っていた以上に人の数が多く見える。郊外と言った感じであろうか。Little Rockに比べ色んな人種も多く見られる。サウンドチェックを行い、サウンドエンジニアの勧めでヴェトナム料理やを探しに行く。バンで10分ほど走った所に数件発見。一番近くにあったものを選らぶ。ここを選んだのは良かった。久しぶりに食べる、あっさりとした麺類。皆上機嫌。Adamはスズメのから揚げを注文。自分は何度か日本の飲み屋で食べた事があったが、それらと同じように小さい鳥だけあって食べられる所が少ない。一つもらって食べるとこれが結構いける。日本で食べたものより美味く思えた。勿論、日本にも他に美味い所はあると思うけど...
会場には数人のMelvinsマニアが来ている。その中の一人、TはTの11歳の息子を連れて早々開場された時から待っている。Tは自分に色々と聞いてくる。自分の手がけた作品を気に入ってくれているようだ。ステージの熱気でBBが大汗をかきながらの公演はまずまずの出来。ちなみに自分は昔からあまり汗をかかない。だがそのステージは汗はあまりかかなかったものの息苦しくなるくらいの暑さだった。公演後、一人ステージ横で呼吸を整える為、座って休んでいると数人の客が声をかけてきた。その中に一人の女性客がいた。彼女は自分に向かって「あなたがBBの中で一番のお気に入り!」と言って来る。自分の使っている機材を気に入ったようだ。彼女はCircuit Bending(音の出るおもちゃやキーボードをショート・サーキットする寸前のところまで改造して、それらから変わった音を作り出す方法や楽器のことを指す)にも興味があり、自分も一台持ってきて使っていたので、それについて話をしたかったらしい。自分が作った物がもしあまっていれば売って欲しいとも言われた。頭の中では"カチン!カチン!"とレジスターの音が鳴り響く。彼女との話を済ませると2バンド目、Whiteshipのドラマー、Bが自分の所にやってくる。BBの前座を勤められた事でかなり興奮している。それ以上にMelvinsの大ファンだそうだ。最も気に入っているアルバムがHoudini Liveで、その中でも"Sky Pup"が気に入っていると言う。自分がエンジニアをしたと伝えると、Bは一言「うそだね!」"Sky Pup(Houdini Live版)"の歌詞の内容を伝えると「うそだ~。絶対信じないぞ~」と頑なに自分がMelvinsと仕事してきた事を否定しようとする。「家に帰ってCDのクレジット見てみろよ」と言うとようやく納得し始める。すると「じゃ、それが本当だったら、トシに次のアルバムを作ってもらいたい」と言ってくる。またもや"カチン!カチン!"。自分がツアーに出る理由に、このようにバンドに出会いスタジオの仕事につなげると言う事もあった。"ライブも営業だがライブ後もまた営業"と言う事を再確認した夜であった。
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