8月2日、移動日
予定より4週間近く延び、ようやくLAに向かう事となる。Salt Lake CityからLAまで約10時間の運転。UtahからArizona、Nevadaを抜けCaliforniaに入る。California州に入ってから約4時間でLAに着く。Arizonaに入ってからの景色には圧巻。グランドキャニオンからさほど離れていない所為か、それに似た地層の山々が高速を囲む。赤土の流れる川なども目に入り西部劇を観ているようだ。Nevada州に入ってもその景色はしばらく続く。渋滞を抜けるとLas Vegas。ベガスに入って直ぐ高速の右手に、California、NevadaとArizonaにしかないIn-N-Out Burgerを発見。Coadyがそれを運転手のJaredに教えると2車線横切り高速の出口へ1直線。In-N-Outを出て給油をして帰路につく。ベガスを抜けた頃から急に風が熱風と変わっていく。エアコンの壊れているこのバンの中は外より暑く思えた。幾つかの山を越えようやく暑さがましになってくる。LAについたのは10時前であった。
8月3日、Los Angeles、 California
久々にゆっくりした昼間。ラッシュアワーを予測して早めに出ることに。前座のTweak Birdの2人は近所であり、酒を飲まないので迎えにきてもらうように頼んだ。彼等のリハーサルスタジオに行き、機材積みを手伝い会場に向かう。サウンドチェックを済ませるとCoadyとJaredはあまり腹が減っていないというので自分はTBを連れて隣のタイ料理屋に夕飯を食べに良く。ここはお薦め。カレーも麺類も量こそ少ないものの、味は品があり、幾らでも食べられそうだ。とまた、やたらと食べて動くのが辛くなってしまった。
開場されるとさすがBBの地元ともあり、友人達の顔が見られる。BuzzとDaleも来てくれた。一つ目のバンドはJaredの友人でSan DiegoのヘビーロックバンドOaks。この時、ステージ前には半分を埋める客が既に来ていた。Tweak Birdの出番になると、はじめはTBの家族、そしてDaleと自分だけがステージ前に立つ。曲を重ねる後とに人が増え始め、終わる頃にはステージの前に大勢の客で盛り上がる。Buzzも遠くから目を離さず観ている。
BBの出番になるとはじめからステージの前に大勢の人が集っている。友人が多くいるため自分への声援も聞こえる。地元を意識した所為か始めの内はミスが目立つ。3曲くらいになりようやく調子が出てくる。演奏も客の反応もうなぎのぼり。客が楽しんでくれているのがはっきり分かる。多くの女性客はCoadyのドラミングに釘付け。最後から2曲目の"Eastern Romantic"では中間部いつもジャムをする部分があるのだが、そこでJaredはステージを降り観客の目の前で歌い始める。しばらくすると自分の前に座って歌うので自分も座ってギターを弾く。すると今度は腹ばいになって歌い始めたので自分も横になってギターを弾き始める。写真を撮っている人が多く思えた。Photo by Shiya Aoki
公演は大成功。ステージを降りる時、何人もの人が自分に声をかけてくる。でも今日は何かがおかしい。女性客から声をかけられたり、一緒に写真を撮りたいと頼まれたりする。いつもは髪の毛の長い、根暗そうな野朗どもから声をかけられるのが殆んどだが、この公演だけは違った。しばらくすると知り合いの女性が2人自分の顔を見て「トシが凄いロッカーだなんて、知らなかったわ」と同時にハグされる。そのうちの一人Jは自分が汗をかいていない事と体臭がないことに気付いた。すると彼女は「日本人の体質なのね」と勝手に決めつける。前にも書いたが昔から自分はあまり汗をかかない。決して日本人の体質ではない。日本にいる時も真夏に友人達は背中がびしょびしょになっているのに、自分だけ脇のしたが少し濡れているだけのような事がしばしばあった。こうした友人たちとのやり取りは店の者に追い出されるまで続いた。
8月4日、休み
ただダラダラと過ごしてしまった。
8月5日、San Francisco、California。最終日。
12時を過ぎ、CoadyとJaredがバンで迎えに来る。LAから約6時間。日曜で道は空いているかと思いきや日曜ドライバーが多く、高速をゆっくり走る者が多い。LAから1時間ほど走ると急に車の数は減り始めた。途中給油のためスタンドに寄った時、SFと言う事でJello Biafraに電話をしてみた。「BBが来る事は知らなかった。でも多分行くと思う」と言う返事が返ってきた。
会場に着き機材を運び、即、サウンドチェック。サウンドチェックをしていると携帯に何度か電話が入る。メッセージを聞いてみるとAltamontのベースのDanとJelloからそれぞれ一つづつ伝言が残っていた。Jelloに電話をかけなおすと他のバンドが誰だか知りたかったらしい。一番手がSFのバンド、Replicatorと言うと「えっ!好きなバンドだ。早めに行く」2つ目のバンドを話すと「え~!俺は奴等、あまり好きじゃないんだよな。まいったな~。順番がちがったらよかったのに」とわがまま。自分は「その間、楽屋で喋ってたら良いんじゃない」と言うと納得してくれた様子。Danとは2ブロックはなれたメキシコ料理屋で待ち合わせ。自分はそこでタコスを2つ頼む。Coadyが「ここのブリトは最高だ」と自分がタコスを頼んだ後に言ってきた。Danとは数ヶ月ぶりの再会。
開場され客が沢山入ってくる。Replicatorが準備をしているとJelloも到着。挨拶をすると数枚のCDのお土産をくれた。Replicatorのショーが始る。演奏技術もしっかりしているし、アグレッシブで非常によい。Jelloは自分の横で「な、いいだろ!」とまるで自分のバンドのように言ってくる。電話で話した通りにJelloは2バンド目のになると楽屋に来てCoadyと話している。自分はDanと話が盛り上がる。楽屋にはどのバンドの友人か分からない、バンドのメンバーでない人間が多くいる。狭い部屋でタバコを吸っているものが2人いたので外ですうように言うと、一人は「ごめん、ごめん。気を使わなくて」と言い即座に外にタバコを吸いに行ってくれる。もう一人は凄い目をして自分をにらみつけ外に出て行く。Jelloは「トシがそんなにタバコに敏感だったとは知らなかったよ」風邪の前兆か、喉の調子がおかしいことを伝えた。にらめつけた男に対して自分が「なんだあの野朗!」と言うと、Coadyが「トシがバンドの一員だって知らなかったんだろう。まあまあ」と自分をなだめる。険悪な雰囲気を作るつもりはなかったので「まぁそうだな」とそれを忘れて、Danとの話に盛り上がる。
このツアー最後のショーともあり3人とも気合が入る。公演は大成功。間違えも(少)なく非常に楽しめたライブであった。公演後、ステージで片づけをしていると何人かの客に話し掛けられる。一人の客と話しているとDanがやって来て、自分に別れを告げる。しばらくすると今度はJelloも帰ると言い出す。別れ際にJelloは「トシがこんなギターを弾くとは思わなかったよ。色んなタレント持っているんだなぁ」あのJello Biafraから言われた。"自信が付いた。明日からのショーはのって来れそうだ!"と思ったがこれが最後の公演。Jelloは家に泊まりに来いとも言ってくれる。Jaredは友人の家に泊まると言う。機材をバンに積んだ後、Jelloの誘いに甘え、CoadyとJello宅に厄介になる事となる。会場からさほど離れていないJello宅。Jelloは歩いて会場に来ていたらしい。都心からも離れていない、景色の良い丘の上にある一軒家。中に入ると階段だらけ。何階建てだかわからない。もの凄い量のレコード・コレクションは幾つかの部屋に広げられている。オフィスが何個あったか分からない。昔のホラー映画に出てくるような家だ。大抵、人の家に止めてもらう時、BBの面々と同じ部屋で寝ることが多い。が、Jelloの家ではCoadyと自分が違う部屋どころか違う階で寝ている。「良いタイミングで買った」とは言っているものの、とんでもない家である。話をし出したら止まらないのがJelloである。この夜も例外ではなかった。4時まで話は続いた。Coadyの3回目の「じゃ寝るわ」でようやく床についた。
8月6日、帰宅
寝る前「起きれたら一緒に朝飯を食おう」と言っていた夜行性のJelloを起こすこともなく、紙にお礼を書いてJello宅を離れる。またバンがかからない。だが今回は5分でかかった。Jaredとその友人Sとレストランで待ち合わせをして、食事を取り帰路に着く。いつもは5番高速を使っていくのだが、今日は少し遠回りをして海の見える101番を使ってLAに向かう。自分の最も好きな町Venturaに近づくとやっと見慣れた景色が広がってくる。3人はIn-N-Outのことを考えている。自分はVenturaに行く時必ず行くIn-N-Outがある。そこへ寄りちょっと早い夕食。ツアーの最初と最後の食事がIn-N-Outであった。そこから約40分で自分のアパートに夜の8時に到着。こうして約25000km、2ヶ月に及ぶ28州での38公演の旅は終了した。
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