Wednesday, December 20, 2006

辛いタレと醤油

11月30日

9時半頃めを覚ましトイレとシャワーを済ませる。それから20分くらいで出発となる。自分はBuzz, Kurt, Richie,そしてTimと移動。LAまでは渋滞がなければ4時間くらいでつくと思われる。SFからLAの間には大きな町はなく畑等の平地が続く。はじ めの内はIPodを車の中で流していたが電話などで中断され,いつの間にか何も流さず会話のみの移動となっていた。自分はおもむろにウクレレを出す。それ を見たBuzzからまた曲のリクエスト。しばらくするとBuzzが弾きたくなり自分からウクレレを奪い弾き始める。しばらくするとBuzzは飽きて自分に ウクレレを返してきた。そしてまたウクレレを取り何気なく"We Will Rock You"のソロを弾いてみる。"出来る!"これは行けそうとBuzzに聴かせてみる。「おお,じゃ今日はHot Sauceのサポートだな!」と嬉しそうに言う。

しばらくたつと皆が「ここだ、ここだ!」と高速の出口を見つけ一般道に降りる。今度は「あった,あった!」見つけたのはカルフォルニア,アリゾナ,ネバダ州にしか存在しないハンバーガーチェーン店,In ’n Out Buger http://www.in-n-out.com/。 彼等はツアーを何度も行っているので何所の高速のどの出口に何があるか把握している。11月の終わりだと言うのに半袖で良いくらいの陽気。ハンバーガーを 頼み外のテーブルで昼食を取る。運転中もそんな時もちょっと気になっていた事があった。今日の公演は完売でゲストリストが限られていると知らされていた。 日本から取材の為に来ている人にもリストの事を頼まれていて,それが上手く行くか不安であった。

高速に戻りそこから2時間半くらい経つと高速は2車線から5車線と変わり車の数も一気に増え始めた。LAに戻って来た。高速を降りてから Hollywoodのど真ん中を抜けるのに30分くらいかかりようやく会場につく。会場は老舗Troubadour。 1957年のオープンから,Steve Martin, Richard PryorをはじめとするコメディアンやJames Taylor, Joni Micheal, Neil Diamond, Elton John, Billy Joel等のシンガーソングライターからMetallicaやGuns N' Roses等のハードロックバンドまでもが立ったステージではある。

会場に着いてもゲストリストの事が気になっていた。日本のロック雑誌,Grindhouseの取材を行うため2人分のチケット,わざわざOhio 州から来る友人の写真家,K氏の分のものと抑えられる保証はなかった。それに加え,日本から旧友のMTが日本からこのステージに上がりたいがためにやって くる。そいつとの待ち合わせもあったので色々と気が気でならなかった。しばらくしてMTは何とか会場に自力で到着。K氏の分のチケットはあらかじめツアー マネージャーのTimと連絡を取るように伝えておいたのでTimからOKが出て,その数十分後,K氏も無事会場入り。Grindhouseの記者とカメラ マンの分もゲストリスト最後の二枠に収まり何とかその場をしのぐ。一気に気が楽になった。

そうこうしているうちにメンバーが入って来てサウンドチェックとなる。サウンドチェックが終わり開演が近づくと,皆楽屋に集まってくる。 Jaredを捕まえ自分がウクレレソロを弾く決心をした事を伝えると大喜び。するとJaredは笑いながら,「Toshiは名前(芸名)を考えた方がいい んじゃないか?」と言うので,とっさに出てきたのが「お前がHot Sauce(辛いタレ)なら,俺はSoy Sauce(醤油)でどうだ?」Jaredは大笑い。それを聞いていたDaleも大笑いしながら「オイ、Buzz,聞いたか?Toshiがウクレレソロを やるって?しかも名前はなんだと思う?」自分の方を見て"言えよ!"と合図を送ってくる。楽屋中,大爆笑。その後,Jaredと漫才のネタの構想に入る。 その後,開演されるぎりぎりまでウクレレのソロパートを練習。Buzzはそれを見るたびにクビをかしげながら笑いつづける。

準備をするために開場された会場へ行ってみると知り合いが何人か来ていた。取材陣も無事会場入りして挨拶をする。開場されて30分あまりで Altamontとなる。Hot Sauce(& Soy Sauce)はその後らしい。演奏の方はと言うとSoy Sauceの方が気になって集中できず酷いものであった。後で聞いた話だがCoadyの方もゲストリストや友人への挨拶などが気になって100%演奏に集 中できなかったようだ。いつもはあまり間違える事のない曲"El Stupido"を弾いていると,ステージの直ぐ横の階段から自分のことを呼ぶ声がした。DaleとDanの大親友でMT番組で映画にもなった Jackassの生みの親(Big Brotherと言う雑誌とビデオがJackassの前身)の一人,Dave(http://toshimanaki.blogspot.com/2006/05/future.html#links参 照)が大声で自分の名前を呼んでいる。爆音が鳴り響くためはっきりは聞こえなかったが,口の動きから「よーToshi,元気か?楽しんでいるな~」のよう に思えた。その口の動きを読むのに気を取られ何所を弾いているか分からなくなってしまった。少しの間自分の演奏が止まってしまった。"誰も気付かないだろ う"とは思っていた,後でDaveと話した時,"やべ~,俺の所為だ!"と自分の失態に気付きその場から逃げたらしい。写真家のK氏もそのことに気付いた らしい。ってことは他の客も気付いていたと思う。

その失態等をカバーしたのがMTだったのかもしれない。MTは数回Altamontのショーに来ては"Stage Crew"と書かれたつなぎに星条旗のヘルメットをかぶり,その上にゴムバンドで固定できる強力に明るいヘッドライトを2個つけ,それを開場とバンドを目 掛けストロボライトのように点滅させる。しかも今回はダンスをマスターしてきたと言う。Daleが1曲目からMTに"ダンスをしろ"とゴーサイン。MTは ステージ中央よりやや右側で高田純次氏ばりに足を小刻みにばたばたさせたランニングダンス(?)を披露する。客も喜んでいる。ダンスをするは,照明係をす るは,写真を撮るはでバンド以上に汗をかいていた。終わった後に話した事なのだがDaleとDanはMTをメンバーとして考えているらしい。「なら,クレ ジットともちゃんと考えなきゃナ。ダンスと照明‐MTでどうだ?」と自分が言うと,「何言っているんだ。奴はCDの表紙になるんだよ」とDale。自分は 次回のレコーディングの時にも,スタジオで演奏にあわせMTにはダンスと照明をやってもらいたいと思っている。

酷い演奏で終わってしまったが,後悔などしている時間はなかった。その10分後にHot Sauce & Soy Sauceが控えていた。楽屋に戻るとJaredはHot Sauceの衣装に着替えている。"自分も何かしなくては"と思ったものの衣装は用意していない。とりあえずカツラをかぶりサングラスをかけ何とか衣装代 わりを見つけた。ネタはSF公演と同じ内容だが,それにSoy Sauceが加わる。自分は全く言葉の通じない謎のアジア人と言う設定で,何故Hot Sauceの隣に立っているか分からないが,突然ウクレレを弾きだすといった演出。まずはHot Sauce自身を紹介したあと「そして今日は相棒を連れてきている。Soy Sauceだ!あらかじめ言っておくが,この名前は彼自身がつけた名前だ!差別しているわけではない」と付け加える。と言うのは,この公演の10日ほど前 にこの開場から5kmと離れていない所にあるLaugh Factryと言うこれまた老舗のコメディーシアターで,人気TV番組,"Seinfeld"で有名な俳優,Michael Richardsが差別的な暴言をして問題になった。その事もありJaredは自身をかばっていた。何を言われても無視しつづけるSoy Sauce。観客のなかから「馬鹿か?そいつは」などという声も上がる。Jaredは「おいおい,そう言う事は言うなよ!言葉が通じないから馬鹿って事は ないだろう」などと言いその場をしのぐ。次々に出てくるジョークに笑いを堪えるのが必死であった。

そして"We Will..."が始まった。客の反応はSFに比べるとかなり悪い。後で聞いた話だが楽屋では非常に受けが良かったらしい。曲に入っても自分はしばらくウ クレレを持って立ったまま何もしない。3番の歌詞に入りそのあとコーラスが繰り返される。Jaredの合図とともに自分のウクレレソロに入る。ディストー ションのかかったウクレレが大音量で会場に響き渡る。大成功。今日の自分のAltamontでの演奏よりはるかに良かった。楽屋に帰りJaredと硬い握 手を交わす。「あまり受けていなかったんじゃないか?」と聞くと「いや,俺は面白いとおもったよ,十分だろう!」Buzzが横から出てきて「よかったな ~」と言ってくる。コント,演奏をしている時の客の反応は悪かったものの,後で開場に戻った時に色々な人から「さっきのウクレレソロよかった」と声をかけ られる。本当にLAは分からない。

その後はいつも通り,Porn, Big Business, そしてMelvinsと流れる。Melvinsでの客の反応はフル回転。マッシュピットは起こるし,ケンカまで始まってしまった。そのケンカは周りの客に 抑えられ直ぐに落ち着く。ステージ最前列中央の客がステージに上り他の客に向かってダイブを慣行。ダイブした後もまた最前列に戻り祈っているかのように上 半身をステージに叩きつける。かなり酔いしれている様子が伺える。周りのことなどお構いなしと言った感じに見えた。またダイブを2度,3度と試みる。3度 目は大男Jaredがすぐさま中央に来て,その男を突き落とす。それを機にその男はいじけてしまったのかステージに上がって来るどころか会場からも姿を消 してしまった。

公演は大成功であった。お客の満足な様子が伺える。客が半分くらい帰り始めた頃,自分はGHの取材陣をはじめ,他の友人たちに挨拶をする。その 時,Buzzの奥方でグラフィックデザイナーのMachieが自分の方を見て笑っていた。何故笑っているのかと聞いてみると「アメリカ人と話している時の Toshiと日本人と話している時のToshiの態度があまりにも違うから...」と言う。そう言われると確かに...アメリカ人に対しては 「Thanks, man!」と言った感じに気軽に挨拶をするが,日本人に「今日はお越し頂き,ありがとうございました」と両手で握手をすると同時に頭を下げながら挨拶をし ている。

今日は久々に自分の部屋で寝ることが出来る。自分の家に泊まるK氏の運転するレンタカーで帰宅。途中でハンバーガー屋(Jack in the Box, 大手チェーン。In ’n Out Bugerには何所もかなわない)により今日2回目のバーガー。自分のリビングでビールを飲みながら友人達と食べる夜中のハンバーガーは格別。演奏は酷 かったがコントが納得行ったのでとても良い公演に思えた一日であった。

Photo(上): http://www.kaztsurudome.com
     (下): http://melvins.sunishun.com/troub_113006/

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