Thursday, April 19, 2007

コラム...久々!

日頃お世話になっている楽器輸入/楽器メーカーのPCIのサイトに自分の連載(?)コラムがある。http://www.prosoundcommunications.com/toshikasai/
新しいのを今日載せてもらった。ちょっと渋め。読んでもらいたい。

Tuesday, April 03, 2007

West Hollywood: あと味のよさ,悪さ(最悪の公演)

3月21日

移動日

LAまでの距離,800 miles(1290km)。Arizonaをまたいでの約14時間の運転が予想される。 Albuquerqueを発ち10分としないうちに砂漠が広がってくる。始めの内は見慣れない地層や岩で出来た山があり良い景色と思うが直ぐに飽きてく る。4時間くらい走りやっとArizona州に入る。かなり風が強くなっている。西部劇の決闘のシーンやコメディー映画等でしらけた時に出てくる転がる 草,Tumble Weed(タンブル・ウィード)が地面を走っている。インディアン(原住民)の土地と書かれたお土産屋やホテル等の看板が多く見られる。北へ2時間も走れ ばグランド・キャニオンが観られるのだが一行は早く帰りたく,誰もそんな事はお構いなし。数度の給油,トイレ休憩を挟みバンは西へ西へと向かっていく。 Arizona州をまたぎ終えると同時に日も暮れ始める。カリフォルニアに入ると皆の言葉数が一気に増えてくる。が街がなかなか見えてこない。高速だけが 長く続きガスが必要になる。ガソリン代が急に高くなる。皆驚きを隠せない。がLAに辿り着くにはガスが必要。直ぐに給油し高速に戻る。カリフォルニアに入 り3時間くらいったちようやく見慣れた街になってくる。そこからが長く感じた。日付変更線をまたぎ昼の10時から夜の12時過ぎまでかけようやく自分の家 に着く。連中に別れを告げ荷物を運び部屋に戻る。シャワーを浴び。ネットをチェックする。60通のメールが来ている。8割以上が迷惑メール。長旅で目がぼ やけているのにも関わらずそれを一つ一つブロックしてコンピューターを閉じ床に着く。残るは3日後のLA公演のみ。楽しかったが"これほど長い間,家に 帰っていなかったのか?"と思わせる旅であった。

3月24日

The Troubadour: West Hollywood, California

この2日間で洗濯,買い物を済ませた後,溜まっている仕事をしようと思いきや,今後のセッションの打ち合わせ,人との連絡等であっと言う間にライ ブの当日となってしまった。午前中も電話やメールで人との連絡が続く。昼を過ぎDaleからの連絡を受け5時に会場で待ち合わせ。久しぶりに自分の車での 移動。土曜日とは言え,地方公演が続いたためHollywoodを抜けていくのに車の数が多く感じられた。5時を少し回り会場に着く。今日のトリ,Red Sparowesがサウンドチェックをしている。

しばらくするとCoadyから連絡が入り渋滞にはまっている事を知らされる。20分くらい待った後,ようやくバンが到着。荷物を降ろすと同時に BBのサウンド・チェックの番となる。このツアー初めてのサウンドチェック。会場のサウンド・クルーが二人。Bobと言う兄ちゃんに自分役割を話すと「そ う言ったことをやる人は5年ここで働いていて3人目だね」と驚くと同時に何だか嬉しそうだ。「変わったことするバンドは好きだな~」ともの凄く協力的。 Hollywood界隈のライブハウスの人間は冷めていて,どのバンドが着ても愛想が悪い印象がある。Bobの積極的な行動を見ていてライブが楽しみに なってくる。

大きな間違えであった。問題はもう一人の方のサウンドエンジニアだった。名前すら覚えていない。と言うか思い出したくもない。"やっぱり Hollywoodだ"と思わせるこの男。今まで色々な嫌な奴と仕事をしてきたが...久しぶりに人を殴りたい衝動にかられた。ステージ上の設定は直ぐに 終了。まず自分の役割を伝えると自分に「音量はそっちで調整してくれよ」と"お前の仕事はなんなんだ"と思わせ,ちょっと腹が立った。そして自分の音を チェックし様とすると音が出ない。BobがDI(ギター等の楽器の抵抗のレベルをマイクの抵抗のれべるに合わせマイクプリアンプなどに注す事ができる機 材。言わばアダプター)を用意しくれて,それにケーブルをつなぎ自分の方は準備が出来ている。でも音が出ない。自分は"完全に向こうのミス"だと思っては いたものの,"もしも"のことを考え自分のケーブル等を換えてみる。その馬鹿は「こっちには問題ない。DIもこないだ使ったばかりだ。君の方の配線の仕方 か何かが悪いに決まっている」と自信満々。心の中では"お前がミキサーの何処かのボタンを押し忘れているだけだろ"と思いつつも「そうか。こないだ使って から何も変えていないのにな~?」と低姿勢。すると「後,2バンドあるからその間に配線調べておいてくれる?」とあくまでも自分を責める。その間抜けは Daleを含めたステージの3人に「キーボードの方がおかしいようだ。君達3人で演奏してくれる」それを聞いてだんだん本格的にムカついて来た。自分を除 いてサウンドチェックが行われる。

サウンドチェックが終了してBobにそのことを話すと「分かったバンドが機材を運んでいる間にチェックしよう」と協力的。Daleに食事に行くよ う誘われたがそれを断り,しばらくしてBobと配線のチェックをすることに。自分にキーボードにはスピーカーが付いているためそれを聴いてキーボードに以 上がないか調べる。Bobがコネクションが悪いのかとかいろいろケーブルなどを試す。低姿勢でいることが我慢出来なくなってきた。「本当にそっちのイン プットはDIに向けられているんだろうな?」と言うと。Bobが何かに気付いた顔をして慌ててミキサーのインプット・セレクト・スイッチを見る。「ああ! インプットBに繋いだのにインプットAが選ばれている!」それを切り替えると直ぐにキーボードからの音がPAから聞こえて来る。Bobはそのアホに向かっ て「インプットBにしていなかったよ」と大声で伝える。

Dale,Jaredたちとの食事を逃した自分は,ドラムのセッティングをするため残っていたCoadyとインド料理を食べに行く事にする。まだ セッティングが終わらないCoadyを待っていると,そのクソ野朗が自分の所にやって来て顔を近づけ「インプットBだって!ハハハ」と,もし自分が少し若 かったら鼻の形がなくなるまで殴ってやりたくなるような事を言う。CoadyとCodayの友人と3人で2件隣のインド料理屋へ行く。2人はカレーを頼 み,自分はチキン・カバブ。口内炎もほぼ治っていたので久々に美味いものが食べられた。ちなみにビールはTaj Mahal。http://www.stawskidistributing.com/India.htmlこくがあるのにすっきりしている。あと味が非常に良い。会計を済まそうとするとCoadyが「今回,トシにはいっぱい手伝ってもらった。奢らしてくれ!」と食事をご馳走になる。"Taj Mahalもっと頼めばよかった"と思ったり思わなかったり。

会場に戻ると一つ目の演奏が始まっている。William Elliott Whitmore(http://www.myspace.com/whitmorewilliamelliott) と言うブルーグラス,カントリー,フォークが基本のギターか4弦バンジョーでの弾き語り。声もよく,全曲最前列で聴き入ってしまう。CDも買ってしまっ た。後半はRed Sparowesの面々も彼のステージに参加し始め音に味付けをする。Williamの演奏が終わると知り合いも何人か来ていたので2バンド目を聴かずに 友人達と話しこむ。

3バンド目がBB。自分は2階にあるミキシング・ブースからの演奏となる。少しだけ音を確認して直ぐに演奏が始る。自分の音が小さい。カス野朗に 「少し俺の音とJaredのボーカルを上げろ!」と指示すると「大丈夫,下(観客)ではちゃんと聴こえている」と口答えをしてくる。自分が"何言ってんだ "と言うような顔をすると耳打ちで何かを言って来て自分を説得しようとするが爆音で何言っているかさっぱり分からない。"分かったか"と言わんばかりに自 分の肩を軽く叩くと即座に自分から離れていく。再三に渡って「ボーカルを上げろ!」「俺の音が聴こえない!」と叫んで言うが「下では大丈夫だ」「(ヘッド ホンを持ち)ヘッドホンではちゃんと聴こえている」とか言って来て,自分の要求に応えようとはしない。変えたフリだけでもすれば多少は自分の気もおさまっ たが何一つ要望が通らない。"フェイダーを上げる事など猿でもできる"と自分は思いつつも演奏に集中。最後の曲になるとCoadyとDaleのボーカルの 声がはっきり聴こえて来る。それを聴いて"Jaredのを上げろ"と言いたかったが全体の音の酷さを再度確認した時,手遅れだと諦めてしまった。とどめ は,最後に自分の音だけが残りバンドがステージから去っていく演出になっていた。だが自分の音が小さくて良く聞こえてこない。しかも自分の音がまだ流れて いるのにも関わらず,終わったものだと勝手に解釈してCDをかけ始める。

"終わった事だ,怒るな,怒るな"と心の中でつぶやく。怒りをこらえ機材運びを手伝いに行く。Melvinsとは長い間,交友関係にある元 MinistryのPaul Barkerがステージ裏に来て「トシよかったよ!」と励ましに来てくれる。忘れようとしていた自分だが,「そうか?音が酷くて何やっているか分からなかっ たよ。何度もJaredのボーカルを上げろと言ったけど...」と怒りを噴き返し状況を説明する。「確かにボーカル聴こえなかったな。音も酷かった。けど 演奏はよかったよ」と優しいPual。DaleとPaulが「トシがここまで怒るの珍しいな,でも過ぎた事だ気にするな」と自分をなだめてくる。会場では Red Sparowesが始っている。なだめられた自分は冗談で「な~。RB(ボーカルなしのインストバンド)のボーカル聴こえないだろう?」と言うと3人で爆 笑。後で知ったことだがRSの面々もこのイカレ野朗とやりあったそうだ。ちなみに数日前,RSの面々はBBの面々に「LA公演のサウンドエンジニアを探し ていると」聞いてきてBBは自分を紹介した。「前回来た時のエンジニア(違う人)は良かったから大丈夫だろう」とも伝えたそうだ。結局,何も連絡がなかっ たのでやることはなかったのだが,無理やりでもやれば良かったと後悔した。また自分の演奏を止め,ミキサーを乗っ取るべきだったとも後悔した。Paulや 他の来ていた友人と話をして何とか怒りを押さえる。

一人のやる気のない人間の所為で個々まで気持ちの悪いライブがこのツアーの締めとなった事が心に残り。怒りを押さえたものの,その場に残る事が不 愉快であった自分はRSの演奏が終わるのを待たずに皆に別れを告げ帰路につく。家に着き慌ててシャワーを浴びビールを飲み何とか落ち着き始める。老舗と言 う事にアグラをかいている人間が多いこの街のクラブ。完全にクライエントと言う考えがなく自分勝手に働く者が多い。世の中には心のこもった人間と心を失っ た人間がいるなど色々なことが布団の中の自分の頭をよぎる。だが,反面教師。ああならないように,と思わされた日でもあった。

Albuquerque: 休み,移動,移動,の後の絶"口"調

3月17日

Austin: 休み

口内炎の影響か,食べられる物が限られるのか,多くの時間を人ごみの中で過ごしているからか,ちょっと風邪気味。あまり無理をしないよう町をぶら ついてみる。薬局を見つけサプリメントや口内炎のクスリを大量に買う。道端で演奏しているブルーグラスのバンドを数曲観ていく。食料も買いホテルに戻る。 また何度も観た映画をTVで観たり曲を書いたりしているうちに休日が去っていく。SxSWは今日が最終日。夜中遅くまで外は賑やかであった。


3月18日

移動日

Austinから次のショーのAlbuquerque, New Mexicoまで2日かけての移動となる。その距離,618 miles(994 km)。昼過ぎにホテルを出発。高速の運転が続く。その間San Antonioを越えてからあまり大きな街がない。レストランの選択も限られまたファースト・フード店での食事が続く。夜になりまたEl Pasoで宿を取る事にする。


3月19日

移動日

一番に起き,シャワーを浴びる。シャワーから出るとCoady,Jaredが目を覚ましている。自分は皆が起き準備が整うまでEl Pasoの街歩く事にする。ツアーに出て,その先々で質屋や楽器屋を見つけるのが大好きである。10分くらい歩くとようやく一つの楽器屋を見つける。地方 と思い掘り出しものが安く見つかると思いきや予想以上のに物が高い。いい物はあるのだがとても衝動買いしたくなるような値段のものはない。がっかりしなが らホテルに戻ると皆準備が出来ていたので間もなく出発。メキシカン料理のチェーン店,Taco Cabana(http://www.tacocabana.com/index.asp)で遅い朝食を取る。チェーン店とは言え,ここの食べ物は美味い。しかもアルコール飲料まで売っている。久々に良い物を食べた一行は元気を取り戻し数時間のドライブに戻る。

まだ明るいうちにAlbuquerqueに到着。学生街ともありなかなか綺麗な町並み。明日はJaredの友人の家に泊まる事を決めていたので今 日は贅沢にHilton Hotelに泊まる事に。それでも2部屋に4人。早く着いたので4人は町に繰り出す事にした。食事を済ませ,Jaredの友人Wongが薦めるバーに向か う。着いてしばらくするとWongが合流する。Jakeが「小銭があまっているからジューク・ボックスで曲をかけるから,トシ曲を選んでくれ」と言って来 る。驚いた事にMelvinsの"A Senile Animal"が入っている。それを冗談半分でかける。しばらくするとJaredが自分の所に来て「トシのお陰だ(皮肉)。バーテンダーにBBのベースだ ろ?って言われたよ」と恥ずかしそうに言ってきた。その後も誰かがMelvinsの曲を数曲リクエストしていた。街が小さいだけに誰がショーをやりにきて いるか街の人間には直ぐ分かるようだ。


3月20日

Launch Pad: Albuquerque, New Mexico

起きてシャワーを浴び,皆に質屋探しを提案。チェックアウトを済ませ4人で街をドライブしながら質屋を回る。あまりいいもの,良い店が見つからな い。高速の反対側に大学ありその並びに色々な店がある。そこで夜まで時間を潰す事に。自分はCD屋と質屋探しを続ける。皆は喫茶店に残りインターネットを チェック。2時間ほど色々な所を歩いたのち皆と合流。当初はWongの言えに泊まるはずだったが皆が仮眠を取りたいと言い出しホテルを取りに行く。格安の ホテルと見つけそこにチェックイン。自分は皆が寝ている間にインターネットをチェック。その時,今日が20日で自分の誕生日であることに気付く。食事を取 りにレストランに言った時自分の誕生日であることを言うと皆が「なんでもっと早く言わなかったんだ」と言ってくる。自分は「今日が19日か20日分からな くなっていた」と言うと長旅の続く中ゆえに皆が納得。

会場はホテルから歩いていける距離。機材があるのでバンで移動。会場に着き機材を取り込む。BBはこの会場で演奏したことがあり,サウンド・エン ジニアはBBのことを覚えていたようだ。自分の役割について話すとなんなく準備をしてくれる。一つ目のバンドがまたBlackmarket。3バンド目が AustinのEmo'sのステージでBBの前に演奏した,同じレーベルのバンドDAUGHTERS。ベースのSam,ドラムのJohnとギターの Nickと初めて会い,話をする。非常に気さくな面々でその場で仲良くなる。DAUGHTERSのライブはエネルギーがあって非常にタイトな演奏。”この バンドは人気が出てくる"と予感させるほど。

トリのBBの出番になる。サウンドチェックはなかったので始まる前に皆の音を確認する。自分の音のモニターを確認している時,Jaredが「トシ の音をちょっと下げてくれ。そうだ!皆,今日はトシの誕生日だ!彼はミキサーの後ろでキーボードを弾いている。祝ってやってくれ!」とか色々言い始める。 ご丁寧に年齢まで公表する。演奏はこのツアーもっとも良い出来。DAUGHTERSのJohnが自分のやっているの事が気になったのか演奏中「これ何?そ れ何」と色々聞いてくる。しばらくすると,また演奏中に一人の見知らぬ男性が「何飲んでいるんだ?」と聞いてきて,「ビールだ!」と言うと新しいビールを 持ってきてくれる。Jaredの話も止まらない。最後の曲,"Easter Romantic"の前にJaredはまた「次の曲は特別な人に贈る。このツアーに同行してくれて,キーボートとノイズとサウンドエンジニアをやってくれ ているToshiの誕生日プレゼントとして贈りたい」と言い曲が始まる。CDとは違って中間部がブルース調になり静かになっていくところがある。そこで Jaredはステージを降り,観客にマイクを向けて歌わせようとする。ステージに戻ったJaredは一人芝居まで始める。やっていることはかなり品がな い。絶"口"調。静かになる部分が長いのでわざと音を大きくすると「シャラップ,トシ!」と大声で言ってくる。客の反応も非常によい。色々な事を曲の途中 で喋るJaredに自分もお客も大笑い。

終了後,「おめでとう!」と声をかけれくれる人,「何か他の音がすると思った,君がやっていたんだね」とか「Melvinsを手がけているトシだ ろ?」と自分に話し掛けてくる客が多くいた。客は決して多くはなかったが皆が大喜びで会場を去っていった。片付けている時,Jaredに「今回の誕生日の プレゼントでもらったもので一番良かったよ!って他に何も貰っていないからな。年齢まで公表してくれてありがとう」と言うと2人で大笑い。誕生日を飾る楽 しいショーとなった。この時,ようやく口内炎がやっと治り始めた。ホテルにもどり明日のLAまで長旅に控えすばやく就寝。LA公演を残し,地方公演が全て 終了した。

Austin 2: ダブル・ヘッダー,ステージと言うなの食卓。


3月16日

Vice Stage: Austin, Texas

昼の1時ににロビーで待ち合わせをして会場に向かう。今日は野外ライブ。バンで5分くらいの住宅街の中にある会場。空き地にステージを設定したよ うだ。まだ客はまばらだ。係員の段取りがあまりよくない。あまり客がいないのにも関わらず,開場した後なのでバンをステージ近くまで乗り込むのは危険だと 言う。「責任者と話させてくれ」と言い,しばらくしてからようやく許可がおり,機材の取り入れば始まる。空き地なた目地は舗装されていないため機材を運び 込むのに一苦労。自分の機材をミキシングブースまで持っていきサウンドエンジニアと挨拶をする。無愛想でバンドの名前なども把握しておらず,やる気が全く 感じられない。が自分のセッティングに必要な機材を文句一つ言わず用意してくれる。

客の少ない会場を見渡すと奥の方に車が2台止まっている。これらはCoadyから聞いてはいた"Melvins Cars"なのである。今回のScion主催の14日のショーのためにScionの2台の車にMelvinsの絵を書いたものである。その絵の写真はメー ルで送られてきたものをCoadyがあらかじめみせてくれていた。Guns 'N Roseのアルバム”Appetite For Destruction”の表紙のような4人の骸骨の絵である(写真)。ちなみにCoadyの絵にはなぜかサングラスが。それを見て「どうせ俺は見た目が 普通だよ」と嘆くCoady。

一つ目のバンドの準備が終わると一気に客が入ってくる。開場にアナウンスが流れる。「Borisがキャンセルしました。その代わりに Turbonegroのセットが長くなります」歓声が起こる。続けて「それと2バンド目の予定のQuiが車の故障の為,来れません」ただでさえ段取りの悪 いこのショーがますますメチャクチャになってくる。

BBの出番は2バンド目。機材をステージに取り込むときQuiのメンバーがやって来た。どうやら間にやったようだ。Quiは最後の方に演奏すると アナウンスで訂正される。BBの演奏が始まると1バンド目の時は半分くらいしか埋まっていなかったステージ前がぎっしり埋まる。Daleは今日も参加。な かなかの盛り上がり。観客の直ぐ隣で"誰かいつか自分にぶつかってくるのでは?"と思いつつも演奏を無事終える。

機材をバンにつみなおそうとバンに戻ると通路は他の車で埋まっている。どうするものか,とJaredと待っているとDaleがやってきて「トシ, そろそろ行かなきゃ」とPornのライブの時間が迫っている事を知らされる。積み込みは残った面々に頼み,Jaredがホテルまでバンで送ってくれた。ホ テルに戻り着替え次の会場へ向かう。TimとKurtが会場で合流。楽屋で機材の準備をする。しばらくすると前のバンドの演奏が終わる。機材をステージ上 にセットする。それを終えるとまた楽屋に戻る。彼等は前回のMelvinsツアーから衣装を着るようになっている。その衣装に着替えるため楽屋に戻った。 その時,Timが「トシは何を着るんだ?」と言ってくる。今回限りの自分も何か着なくてはいけないようだ。昨晩,飲んだ時に彼等からそれは言われていたの で,一応,海パンを持ってきておいた。Timはサンタ。Daleはエルビス。Kurtは短パンに上半身裸でその上からベスト。それにスポンジで出来たカウ ボーイ・ハット。自分は海パンに上半身裸で乳首を一直線のダクトテープ隠し,それにサングラス。

その格好でステージに上がりあらかじめ用意していたBBQを持ってステージに上る。会場は狭いバーで,前にいたバンドの時は少ししか客がいなかっ たがPornのバンになった時は満員になっていた。1曲目(曲と言って良いものか?)の時,それぞれが自分の楽器でノイズを出しそれと同時にBBQを食べ 始める。Timはギター・エフェクトで作ったループ。Kurtはベース・フィード・バック。自分はフォト・テルミン(光に反応するテルミン)を使い, Daleはベース・ドラムを踏みながら片手でドラムを叩き,もう片方でBBQを食べる。自分はまだ口内炎の痛みがあるので,少しかじってはビールをがぶ飲 みして肉を喉に流し込む。しばらくするとTimの合図でノイズが曲になっていく。正直言って彼らの曲は1曲も知らない。Kurtがベースの指の動きを大袈 裟に見せてくれて,それを観ながらの即興。個々の長いソロなどを含み1曲1曲が長い。自分はベース・ソロの時,テルミン用に持ってきている懐中電灯を Kurtに渡し,Kurtが懐中電灯でスライドを弾きながら,その光で自分のテルミンを照らす。その光を手でコントロールしながらエフェクトなどをかけ Kurtのソロに味付けする。いい加減な即興ながらお客は喜んでいたようだ。写真を撮っているものが多くいた。

客の反応もよく,昨日決まった上,曲を知らないのに何とかのり越えたライブ。気のあった連中だけに緊張はなかった。ステージはまだ慣れていないが もっと色々なバンドとやってみたいと思った午後であった。ホテルに戻りまた風呂に浸かり,口内炎の痛みがあったため人と喋るのが辛いために部屋に残る事 に。何度も観た映画がテレビでやっていたのでそれを観ながらライブや機材,これからのスタジオでの仕事のことなどを考えていると,いつの間にか Austinの夜はふけていった。

Austin: Treated Me lLike A King!

3月15日

Emo's Annex: Austin, Texas

MelvinsのサウンドチェックがあるのでJaredは8時に目を覚まさなければならない。Austinに着いた時には2時を回っていて,ホテ ルのチェックイン等が長びき寝たのは3時半を回っていた。目覚ましがなり自分もなんとなく目が覚める。ベットにようやく座るJared,深く息を吐くと同 時に「フ~~~~~⑨ッ」短い睡眠でご機嫌斜めのようだ。自分はサウンドチェックに行かなくて良いので,それを聞きながら笑いを堪え寝直す。起きると11 時近くになっていた。シャワーを浴び準備をする。

準備を済ませベットに横になりテレビを観ているとDaleから電話が。「送迎者がホテルに付いた」との事で出発する事に。会場はそこから3ブロッ クあまりだがわざわざ車で迎えまで来ている。会場に着くとBorisが演奏をしている。なかなか盛り上がっている。ちょっと観た後バックステージへ行くと いつもの面々がそろっている。Buzzと挨拶。BBの面々があらかじめ彼等に自分の口内炎のこと,自分が喋り辛い事を話していたようだ。バックステージに は会場がBBQハウスの庭であるためBBQが置かれている。自分は痛みが走るので少ししか食べる事が出来ない。満腹にならない。冷蔵庫にヨーグルトが幾つ か入っていたためBBQのにおいが充満する部屋の中それを食べる事に。

ツアーマネージャーのTim(Daleとのサイドプロジェクト"Porn"http://www.myspace.com/pornmusicの ギター)が何か起こった時の為にステージの横で見張ってくれと頼んでくる。Melvinsの出番。何度もMelvinsのショーは観た事があるが初めて観 る野外コンサート。新鮮に感じられた。会場は凄い数の人で埋め尽くされている。演奏も上手く行っているしお客も大喜び。結局,何も起こらず自分はステージ の横でその全てを観ていた。

ホテルに帰りしばらくすると今度はBuzzから電話が入る。Buzzは今日の晩の飛行機で帰るので,彼が使っている部屋を自分に譲ってくれると言 う。30分後にロビーで待ち合わせて部屋の鍵をもらう。King BuzzoからもらったKingサイズベットの一人部屋。贅沢すぎる。

夕方になり今度はBBのショーがあるので準備をする。彼らの所属レーベルHydrahead Recordsのショーケースである。ホテルから2ブロックくらい離れた会場に着くと,入りきれない,もしくはチケットを買わずに立ち聴きしている人々が 出入り口に溢れている。もともとは駐車場であるスペールにステージ,バーと仮設トイレを儲け,その上にテントを張っている。こちらも野外コンサートであ る。会場に入ると熱気でムンムンしている。BBの出番はHHの中で勢いのあるバンドの一つ,DAUGHTERSの直ぐ後。彼らの演奏が終わると慌てて機材 を運び込む。今日はDaleもギターで参加。自分はいつものようミキシングボードの裏に準備をする。ステージにいたサウンドエンジニアを捕まえ状況を説明 する。自分のやることに対して始めは驚いていたが非常に協力的に手伝ってくれる。自分の準備が終わるとそのエンジニアに音的なことを色々指示する。自分の 横にいたMelvinsのサウンドエンジニア/PornのベースのKurtが「なんだ,トシはBBのGoerge Martinだな」と言い,二人で大笑い。

演奏が始まると音も良く聴こえて来て客の反応も良い。Kurtの隣にいたTimが自分が演奏しているのに話してくる。「トシ,面白そうな事やって いるな~。明日Pornのライブがあるからそれやってくれないか?」それに対して自分は「ああ,分かった。やるよ...Tim,演奏中に話し掛けるなよ! 自分のパート飛ばしちゃったじゃないか」と言うが,ライブの爆音でTimの耳には届いていなかったようだ。BBの演奏中にPornのライブに参加する事が 決定。4曲目からDaleが登場。客も分かっているようで歓声が起こる。最後の曲の前にJaredが「今日参加してくれたDaleと後ろで弾いている Toshi,ありがとう」とお礼を言ってくる。非常に満足の行くライブとなった。

その後,機材をバンに詰め,会場に戻り,いつものMelvins関連の仲間とビール等で乾杯。Borisのドラマー,アツオさんまで参加。ちょっ とだけ話をする。Daleと久々に喋れてかなり嬉しかったようだ。TimがDaleに自分が明日のPornのショーに出ることを伝えると「オーライト!」 とそこでまた乾杯。いいライブを観ていいライブを行った後に気のあった仲間と飲むビールは口内炎の痛みまでも忘れさせていた。ホテルに戻りこのたび初めて 一人部屋で過ごす。バスタブにはジャグジーまでついている。久々にシャワーだけでなく湯に浸かりジャグジーで癒される。ここまで贅沢なツアーは初めてであ る。キングサイズベットで眠りにつく。

San Antonio: 14の杭, 20の口内炎, 200人の兵隊

3月14日

Rock Bottom: San Antonio, Texas

長旅の疲れか,雨で街が静かな所為か12時近くまで寝てしまった。今日の運転はそれほど過酷ではないのでゆっくり出ることに。小雨が降り続く。バ ンを走らせると直ぐに「Cracker Barrelだ!」とCoadyが声をあげる。これはテネシー生まれの南部料理チェーンレストラン(http://www.crackerbarrel.com/)。  店に入ると店の半分ではオモチャや雑貨が売られている。古臭い建物にお洒落なつくりで,全てのテーブルにはPeg Gamesが置かれている。ゴルフのティーのようなプラステックで出来た杭が三角形の板に浅く掘られた15個の穴うち14個に刺されている。一つの杭を選 びその直線上隣にある杭を飛び越え,その杭の反対側に空いている穴に入れる。飛び越えられた杭は抜かれそれが最後の一つとなったら大成功,と言ったゲー ム。http://www.crackerbarrel.com/games-kids.cfm?doc_id=218, http://gotofreegames.com/IQGame/free_peg_game.htmこ れが以外に難しい。 この頃から自分の口内炎は悪化している。20個近い場所が炎症をおこしている。トーストなどを食べると口の中全体に痛みが走るのでやわらかい物を注文する 事にした。と言ってもハムやベーコン,目玉焼き,スープにグリッツ。このグリッツとい言うのが南部州独特の食べ物。'92年の映画"My Cousin Vinny"で詳しくその作り方を説明している。あらびきの穀物で味は薄く油が濃い。でもやわらかくこの時の自分にはちょうど良かった。

まだ日も暮れぬ夕方,San Antonioの街に着く。時間があるので街を歩く事に。200人の兵隊がその数十倍のメキシコ兵と戦い伝説の地となったAlamoが街の真中に公園とし て残っている。多くの映画で語り告がれている。でも自分が考えてしまうのは85年のコメディー映画"Pee-wee's Big Adventure"である。占い師に探している自転車がAlamoの地下にあると言われ,たどり着いたPee Weeにツアーガイドは「Alamoには地下なんて無いわよ」と観光客と大笑い。自分を含め皆がそのセリフを言いながら街を歩く。

近くにあったホテルのドアマンに会場への行き方を聞き,そこからバンで5分と走らないうちに到着。舌に出来た口内炎の所為で会話がし辛くなってい る。痛みを堪えサウンド・エンジニアに自分の役割を伝えると手際よく準備してくれる。自分の準備と荷卸を済ませる。BBの番まで時間があったのでその間に 夕飯を食べる事に。Coadyが会場の人間にレストランが固まっているところを聞き出しバンで移動。ベトナム料理やを見つけ,全員一致でそこに入る。メキ シコ料理が続き軽いものが食べたかった。アペタイザーで注文した春巻きが変わっていた。皮の周りにひき肉が散りばめながら揚げられている。これが美味いの だが口内炎の所為であまり食べられない。自分が個人で頼んだのがブン・ボー・フエ(簡単に言えばラーメンみたいなもの,ちょっと違うけど)。人類皆麺類と はよく言ったものだ!救われた。口内炎もさほど気にならない。この旅でもっとも上手い夕飯となった。

久々に上手い食事を済ませ会場に戻ると演奏が始まっている。またメタル系ばかり。2つ目のバンドのボーカルが上半身裸になり一生懸命踊っている。 時々見せるハイ(?)キックがステージから30°くらいしか上がっていなのを見た時には笑いを堪えるので必死だった。BBは最後から2番目。演奏は上手く 行った。音もまあまあ良かったが客の入りはこの旅最悪。

ステージを片付け最後のバンドが終わるのを待たずに会場を去る。と言うのも今晩中にAustinに入らなければならない。明日昼からから South x Southwestのプロモーションの一環でMelvinが演奏を行う。そのサウンドチェックが朝の8時半からだと言う。San Antonioを発ち1時間半くらいでAustinにはいる。トヨタの子会社Scionのプロモーションのショーとあり今までのツアーでは泊まった事の無 いような高級ホテルが用意されていた。でも自分はJaredと相部屋。ホテルに付き間もな床につく。

Houston: 悪天候,悪印象

3月12日

移動日。

朝,目が覚めると口の中が芳しくない。不摂生からか口内炎がいくつも出来ている。昼頃に皆準備を済ませBBの友人宅から長旅に出発。朝食を取って いない為レストラン,ドラムの換えのヘッド買うために楽器の両方を探す事に。BBの2人は以前その楽器屋とその近くの日本料理屋に行った事があったらし い。が一度しか行った事がなかったため30分近く探して見つからず,電話のインフォメーションでようやく見つけ出す。その日本料理屋はファーストフォード 店でセットメニューが売り物。自分が頼んだのは照り焼きどんぶり。味はそれほど良くなかった。口内炎の所為もあり味は分かり難くもなっていた。

注文を済ますとTOTIMOSHIのT-シャツを来た子供とその母親が店に入ってきた。彼等が注文を済ますと自分等の隣のテーブルに座った。昨日 会場に来ていたTOTIMOSHIの友人であることが分かった。地方公演に行くとこのように公演の次の朝,客の何人かに町で会う事が多い。彼女は昨日の ショーが凄く楽しかったと自分らに話し掛けてきた。彼女は自分の仕事のこともよく理解しているようで「何か面白いプロジェクトはないの?」など聞いてく る。昨日,彼女の友達が自分と話しているのに気付き,その友人が自分のことを知っているか聞いたと言う。その友人に「あなたは今凄い人と話していたのよ。 トシはMelvinsを4枚も手がけている人なのよ」と彼女は大のMelvinsファンである事を主張するとともに自分の事を買いかぶっているようだ。 「大袈裟だよ」と自分が言うと,すかさずJaredが「トシの仕事は良いけど,基本的に人間が悪いから誰も尊敬しないんだよ」と言い皆で爆笑。あまり美味 くはないが楽しい昼食となった。

食事を済ませ,隣の楽器屋でドラムヘッドを購入。ようやく高速に乗り町を出る。かなり遅れての出発となり,Texas州に入った時には夜中になっ ていた。高速から見える夜景の先に一つながり電灯の列。Coadyが「あの向こうはメキシコだよ!」その向こう側が妙に寂しく思えた。El Pasoと言うTexasの一番南西の町でホテルを取る事に。2人部屋に4人。荷物を降ろすと直ぐに"Easter Romantic"のキーの確認。こう言った時のためピアニカを持ってきておいた。CDの音源から半音下げで行っている事が判明。その模様をCoadyが ビデオに撮っている。コード確認が終わると皆でテレビを観始める。自分のもっとも好きな映画の一つ"Three Amigos(サボテン・ブラザース)"がやっていたのでそれを観ることに。メキシコが舞台にしたコメディー映画。あの物悲しい景色も一気に忘れてしまっ た。疲れた時にはこう言った映画は最高。観終えた後,自分は寝袋で寝る。

3月13日

The White Swan Live: Houston, Texas

Phoenixからか出るのがかなり遅れたため,PhoenixからHoustonの2/3を今日一日で走らなくてはならなかった。約750マイ ル(1200km)。San Antonioを越えた辺りから大雨が降ってきた。Jaredも速度を落とし始める。かなり危険なドライブ。数時間後,すでに開場されている会場に"無事 "に到着。荷卸の際にも雨は降りつづける。雨の中慌てて機材を運んでいると一人の酔っ払いが「お前達はビールを売っているのか?」と聞いてくる。機材を濡 らさないため必死になっている所にこのふざけた質問。危険な運転の後で気が立っていたのか,メンバーが声をそろえて「ビール売っているように見えるのか? 忙しいのが分からないのか?」でもその男は「ビールが欲しいんだ」としつこく言ってくる。「邪魔だ,あっちいけ!」と何度か言うとようやくその場から立ち 去る。警備員は見てみぬふり。

楽屋で渇いた服に着替え準備を済ませる。ハウス・エンジニアは無愛想だが協力的。BBの出番となる。自分は何時もの通りミキシング・ブースでの演 奏とちょっとしたエンジニア作業。1曲目が始まって直ぐに中年のバーテンダーらしき男性(おそらく店のオーナー)がブースにやってくる。ハウス・エンジニ アの女性に何か話している。彼女は両手を方まで上げ"お手上げ"のポーズ。するとその男性は演奏中の自分に話し掛けてくる。「音がでかすぎる!近隣から苦 情が来てしまう!」と言って来る。自分は演奏中であまりにもくだらない文句だったので無視。1曲目が終わると店のものがJaredの近寄り,耳打ちする。 Jaredは"ええっ"と苦笑しながらアンプのボリュームを下げる。勿論,音量は大して変わっていない。自分はハウス・エンジニアと顔を見会わせ同時に" お手上げ"のポーズ。後で話した事だが,自分はJaredに「ロックバンド雇って置いて"うるさい"はね~よな~。だったらJames Taylor(フォーク・アーティスト)でもブッキングしろよな~」と2人で爆笑。

最後の曲になるとまたオーナーと思われる男性が近寄ってくる。自分が「これが最後の曲だ」と伝えると,「そう願いたい」と言う。「警察が今向かっ ている」と続ける。またその嫌味のこもった嘘を無視して,ようやくキーを確認した"Easter Romantic"を演奏してショーは無事終了。片付けの途中に手を休め人と話していると警備員がやってきて自分の方をじっと見ている。「何かようか?」 と尋ねると「いや,別に...ただ早く帰らないかな~と思って...」それを聞いた自分は返事をしないでメンバーの所に行く。皆が観に来てくれた友人と話 しているところを割って入り,「もうここを出よう」と言うと皆がここの店の人間から嫌味を言われたようで,直ぐに自分の意図が伝わったようで「ああ,とっ とと出よう」と片付けに入る。雨は弱くなっていた。

Houstonの都心近くのモーテルを二部屋かりる。自分はJaredと相部屋。濡れた服を乾かしニュースをネット見て直ぐに就寝。ショー自体は良かったが店の人間の所為でかなり悪い印象が残った夜になってしまった。

Las Vegas-Phoenix: 東から来たハンサム

3月10日

The Bunkhouse: Las Vegas, Nevada

スタジオで一晩を明かして,通りの音で目が覚める。Coadyもちょうどおきたところ。二人で喫茶店に行きコーヒーを飲みながらコンピューターで Las Vegasまでの道を調べる。スタジオに戻りJared,Jakeを起こし,お世話になった友人達に別れを告げ出発する。5時間半の道のり。高速15番を ひたすら北に向かう。ガスを入れにCoronaと言う街で一旦高速をおりる。おりて直ぐのところのハワイをテーマにしたレストラン,Island Restaurants(http://www.islandsrestaurants.com/)で昼食を取る。BBQソースがかかったSunsetと言うハンバーガーを注文。他のチェーン店とは違った味。ソースが非常に良い。

日が暮れて直ぐにLVに到着。会場の場所を確認したあとホテルを確保。ホテルで少し休憩した後会場入り。前回のMelvinsツアーとの会場とは 違いこじんまりとしたBar。BBの前に演奏するバンドは地元の若者たち。ミキシングブースを探すとそこにはDJ機材のみ。ミキシングボードはステージの 直ぐ横の棚の上にあった。それをBBの連中に話すと「んじゃ,トシは今日はステージだな」と人前で演奏する事が急遽決まった。とは言うもののステージは狭 くJaredのベースアンプの陰に隠れているようだ。DaleがAusitnで競演するため持ってきていた彼のギターアンプを使用する。演奏中はじめて自 分の演奏がこのツアー初めて耳に届きJaredが自分の方を見てにっこり笑った。「今日は自分らの友達がわざわざ日本から来て,一緒に演奏してくれてい る」と大袈裟な紹介まで。演奏終了後それを真に受け「このために日本から来たのか?」と話し掛けてくる客もいた。

ライブは大盛況。普段ステージではあまり喋らないCoadyとJaredの喋りもさえ渡り,観客は勿論の事,店の人間,プロモーターも大喜び。マ ネージャー兼サウンドエンジニアのTherryは「ノイズ系のバンドもくるから,トシがやるような事は観た事ある。でも見事にバンドの音楽と一体化してい てのは初めてだ。是非また来てくれ!」と絶賛してくれた。プロモーターの一人の女性も「よかった。また来て欲しい。他にもバンドやっていないの?」と聞く ので「Altamontってバンドに入っている」と言うと「冗談でしょう!」と言いながら漫才の突っ込みのように裏手で自分の胸を軽く叩こうとする。自分 の体重の1.5倍以上あると思われる彼女の体からなる腕力と,それが来る予想をしていなった自分の胸をそれ,ミゾオチに裏拳が食い込む。一瞬,息が出来な くなり目の前が白くなった。しかも彼女はAltamontと他のバンドを勘違いして大喜びしていた。

満員とまでは行かなかったものの大盛況に終わった公演。前回のMelvins公演での動員数のイメージもあり,あまり良い印象をもっていなかったLVだけに皆ニコニコ顔でホテルに戻る。ホテルに戻ると疲れが一気に来てまもなく就寝。

3月11日

The Brickhouse: Phoenix, Arizona

昼過ぎにLVを発ち,約6時間高速を走る。雲が少ない小春日和の中,バンの中で一日を過ごす事が残念に思えた。辺りはすっかり暗くなり,会場に到着。荷物を降ろしながら会場入り。ステージも含め会場内はかなり広い。スタッフも協力的であっという間に準備が整う。

自分の機材をブースの後ろにおき準備を済ませるとJoeと言う地元の人が自分に話し掛けてきた。Joeの兄がDaleと高校をともにしていたらし い。自分の仕事やAltamontの事もよく知っていたが,自分がこのツアーに参加している事は知らなかったと言う。ビールまで買ってきてくれた。はやく からJoeのような人が来ているので,他にもそう言った人が来るのかと客入りを期待してしまった。が,結果はこのツアー最悪の入り。それでも来てくれた客 はBBの演奏に大喜び。自分も含めBBの演奏もかなりのってきている。

ハウスエンジニアの協力もよく音も良い。その所為か自分の音も良く聴こえる。また最後の曲"Easter Romantic"で自分の音が外れているように聴こえた。その曲に入る前にJaredが自分の事を紹介してくれた。「今回のツアーには自分らの影でキー ボードとノイズを担当してくれている友人がいる。トシという奴でブースの後ろにいる。ハンサムな日本人がいたらそいつがトシだ」と言う。演奏終了後一人の 男性客が自分の所にやってきて「Jaredの言う通りだ!君はハンサムだな!」と大声で言ってくる。その他にも自分の名前を知って「Melvinsの作品 を手がけているトシだろ」と言って来る人間が何人かいた。TOTIMOSHIの連中もTexasに向かう途中と言うことで会場に足を運んでくれ,友人まで 連れてきてくれた。何人かの一般客と同じよう,その友人達の中にも自分の存在をMelvinsのCDで知っている人もいた。嬉しい限りだ。

客は少ないながらも盛り上がり後片付けをして宿に向かう。今日はBBの知人の家に宿泊。途中BBの知り合いの多くが働くバーで少し飲んだあと, 24時間営業のメキシコ料理屋で遅い夕飯を済ませて家に向う。移動中,自分はJaredに「また,最後の曲のチューニングが違って聴こえた」言う。 Costa Mess,San Diego公演後もそのことについて話したがベースのチューニングを下げているためイントネーションの悪さから来るものと二人で判断していた。「それにし ておかし過ぎる」と自分が言うと「あっ,CDの音源とはチューニングが違うぞ」とその時初めて聞かされる。それを知らずにずっとCDの音源と同じキーで4 公演を行った事を知り,皆,大爆笑。明日は移動日。「ホテルでもう一度練習しよう」と休日に課題を残し就寝。次のショーはHouston。その距離 1158マイル(約1864km)。

CM-SD: 期待,ジンクス

3月8日,

The Detroit Bar: Costa Mesa, California

夕方にJaredの家で待ち合わせ。ラッシュアワーを避け1時ちょっとで会場入り。この会場は去年の12月のAltamont, Pron, Big Business, Melvins全米ツアーの最終日に行った場所。その時は完売で客の反応も凄くよく,そのイメージが残り今回も期待した。自分は今回,Altamontで はなくBig Businessとしてまたサウンドエンジニア兼キーボード奏者(かなり大袈裟)として行くので勝手が違った。客に気付かれないよう,ミックスに厚みを作 るのが彼等が自分を雇った目的。

着くともう開場間近だったためサウンドチェックはなし。ハウスエンジニアと相談して何とかミキシング・ピットに自分の機材の置き場を確保。準備を しているとビデオモニター担当のBartと言う男が色々話し掛けてくる。自分が日本出身だと知ると,「今,妻が日本に行っている」「王貞治に会いたい」 「格闘技の...」「日本のバンドの...」と話を止めない。作業が捗らない。

開場され直ぐに1つ目のバンドの演奏が始まる。客はまばら。自分の知り合いが2人ほど来ていた。日本人の知人,Aさんも忙しいなか来てくれた。 オープニングはBlackmarketと言うアリゾナ州出身の若者のバンド。かなりポップ。2バンド目はサンフランシスコ出身の3人組, TOTIMOSHI。このバンドはMelvinsとの交流が深いため名前と音楽は知っていた。自分はその時,初めてメンバーと会ったが直ぐに気が合い, 「近い将来,一緒に曲を作ろう!」なんて話しにもなった。人気もあり開場の半分以上は埋め尽くされた。

TOTIMOSHIが終わると客は若干減っていた。BBの人気はCosta Mesaでは今一歩。演奏の方でも落胆,戸惑いを隠せないよう。と言うのもこの開場での前公演,7日に行われたリリース・パーティーの人の数に比べると話 にならない。自分の方と言うと,ツアー前の練習は2度しか行っていなかった。その所為もあり間違えも多かった。それに加え,演奏中,例のBartに話し掛 けられるのには困った。公演終了後,BBの二人に自分の演奏はどうかと聞いたところ,モニターにはあまり入ってはいず,聴こえていなかったようだ。

ツアー初日,悔いを残してLAに戻る。イラダチは空腹からも来ていたようだ。地元に戻りDel Tacoと言うメキシカン・ファースト・フードのチェーン店で夜中の2時過ぎに食事を済ませる。個々の家に戻り明日からの遠出に控え床に着く。

3月9日,

Casbah: San Diego, California

昼過ぎにJaredが自分の所まで迎えに来る。そこまで(準備段階)は時間どおりに行っているので車に乗ると「こんなに順調なツアーの出発は珍し いな」と言い,彼の73年製の愛車ダッシュボードをなでる。その途端「しまった! ジンクスだ!言うんじゃなかった!」それから5分しない内に車はものの見事に高速のど真ん中でガス欠。惰性で何とか路肩に停止。燃料のメーターが壊れてい て分からなくなっていたようだ。Jaredの友人に連絡を取りガソリンを持ってきてくれ事に。待っている間,「(順調だと)言うんじゃなかった~」とか "F"ワードを連発するJared。対して自分は「ガス欠だろう。他のことでなくよかったな」とか「それにしても良い天気だな」と言うとJaredは「ポ ジティブだな~」と感心するので冗談で「オーマイゴット,もお終わりだ!」と言いながら高速の路肩で狂ったふりをすると二人で大笑い。友人が到着して車は 復活。Jaredの家に無事に着きそこでCoadyを待つことに。そこで彼らのSeattle時代の友人Jakeと合流。彼はグッツ販売担当。

Coadyを待つものの出発の予定時間を大きく上回る。ツアーで使うBBの所有するバンのスモッグ・チェック(日本で言う車検みたいなもの),カ リフォルニア州ナンバー登録,保険,ライセンスの書き換え(筆記試験要),その全てをその日に行っていたらしい。出発は大きく遅れる。ラッシュアワーも重 なり現地に着いたのは8時過ぎ。開場されていた。客はまばら。昨日と同様,初っ端はBlackmarket。その後,3バンドはメタル色濃い目のバンドば かり。

BBの出番になると客は多少増えている。まあまあと言った入り。演奏も昨日に比べるとかなりのってきている。自分はミキシング・ブースからちょっ とはみ出ていた為,数人の客に自分が演奏している事を気付かれる。昨日により演奏にも余裕が出てきて,ミックスの事にも気をくばい音も良くなってきてい る。と同時にはっきり聴こえる為,最後の曲で自分とJaredのチューニングが若干違っていることに気付く。でもBBの二人には自分の音はあまり聴こえて いなったようだ。

演奏を終え片づけをして宿にむかう。今日はホテルではなくBBの友人の家。バンで10分くらいでその家に着く。家に入ると騒がしい。パーティーを 行っている。2バンド目,Portalsの連中も来ている。夜中の3時にカラオケが始まる。自分はすぐにでも寝たかった。数分後,JaredはJakeが ソファーで寝ているの気付き,パーティーを終わらせ寝る事を皆に伝える。元々服屋だったようなところを改造して家にしたのか,広い部屋が1つある。そこは 今スタジオにもなっていて機材等も入っているが,4人が十分寝られるサイズ。そこで明日のLas Vegasまでの運転に控え就寝。LAから2時間弱の距離。まだツアーが始まったようには感じられなかった。