Sunday, August 06, 2006

M x 4: Mastering

7月18日

レコーディング,ミックスは終えたものの音源処理の最終段階のマスタリングをVentura Countyにあり,馴染みのエンジニア,John Goldenのスタジオにメンバーとともに向かった。VenturaはLAから北に50分ばかり車で走った所にある小さな町。綺麗な田舎町といった所で自 分も時々和みに来る場所である。そんな場所にあるJohnのスタジオは低予算で出来,Johnは自分勝手に作業を進めずあくまでも客が望んでいる事を聞い て,それ以上の結果を出してくれる自分の最も信用しているマスタリングエンジニアである。

いつも変わった事をするMelvinsに慣れているJohnは「今回は何をやったのだ?」と言われる前に聞いてくる。するとDaleが新しい二人 を紹介し「ドラムが二つなんだ」と言うと「ちょっと待ってくれ,レコード(12インチの丸い物に溝が彫ってあり,その溝に針を当てて聴くCDの前にカセッ トともに市場に出回っていたもの)を作るって言わないでくれよ」とドラムが二つでは溝を作り難い事を十数分話始める。レコードを作るかは現時点では不明。

当初は11曲の予定だったが1曲減らし10曲をJohnに渡す。ちなみにその除かれた1曲は次のアルバムへ移行されると聞き,自分の名前が自動的 に次回作に載ることを知り嬉しく思った。初めてフルアブムを今回使ったスタジオ,WestBeachでミックスしたため自分は100%の自信はなかった。 が,Johnは「Toshi,いつもどうりいい音で出来ている。いい仕事してきたな」と声をかけてくれる。それを聞き後は彼に任せ仕事はどんどん進んでい く。約5時間半で仕事は片付き出来上がったCDをもってLAに向かう。


一旦,そのCDをコピーするため部屋に戻る。そのついでにメールを確認しているとノルウェーのMelvinsファンで友人の者から連絡が入り,このアルバムのことについての記事が載ったサイトのリンクをもらった。http://www.roadrunnerworld.com/blabbermouth.net/news.aspx?mode=Article&newsitemID=55257
発売日が載っている。自分も知らなかったが本当かどうかは定かではない。そのCDをもってDaleの家に向かう。ビール片手にBBQを食べながら聴く出来上がったCD。顔はにやけているのだが安堵からか急に疲れが出てくる。よく眠れそうだ。

M x 4: 十三日目-experimental

7月13日

最終日。本格的にやる曲は1曲と言う事で念入りに出来た。バンドも自分に任せきったのか,飽きてきたのかあまり口を出さない。やりたい放題。ドラム,ギ ター,そして2つのドラムが同じリフを2分弱その曲の終わりに行っている。これはいじるしかない。ただエフェクトを使うのはひねくれ者の自分には会わな い。こうなる事予想して使っていた遊びマイクや自分の部屋で作ったエフェクトでは出来ないような小細工を所々に使い聴き手を飽きないようにする。バンドに 聴かせると喜んでいてやっと今回少なかった実験的な音が入った曲になった。

2曲目,と言ってもノイズのみ,を終わらせ全ての曲を順番に並べて確認しようとCDを作っているとToolのAdam Jonesがツアーの半分を終わらせ,短い休みの合間をぬってスタジオに遊びに来た。全ての曲をAdam,Buzz,Daleそして自分とが真剣な眼差し で聴いている。Adamは曲をかなり気に入っている様子。自分の作った音にも「この音良いな」と反応したので,そのときばかりはあごを上げて軽く目でうな ずいたやった。最後から二曲目を聴いた時には「これはMelvinsの曲で一番好きな曲になるな!」と答えるAdam。

スタジオを早く引き上げる事が出来,時間が余ったのでDaleの家でビールをもらう事に。Daleも自分もアルバムの出来に手ごたえを感じたのかいい酒になった。来週のマスタリングへと流れていく。

M x 4: 十二日目-Steak

2曲のミックス。今日は始めてのダブルベースの入った曲。2曲目の方はアルバムの1曲目となるので慎重に行くようにとBuzzに言われ気合が入る。ステレ オのドライブしたベースがうねりを利かせドラムが適切な個所で跳ねギターが味を付け終いには3部ハーモニー。それでいてひねくれている。Melvinsの ようでなくてMelvinsよう。聴いてもらわなければ説明の仕様がない。

昨日から自分だけがあくせくして,皆はビデオインタビューや取材でスタジオのロビーでくっちゃべっている。でも今日2つ目の取材は"The Future"http://toshimanaki.blogspot.com/2006/05/future.htmlの面々。知り合いでもある彼らはわざわざBBQのネタを用意してくれた。旨かった。こんな取材が続くと良いのだが...考えてみたら明日が最終日。スタジオでのBBQもこれでしばらくはないだろう。

M x 4: 十一日目-ahead & hot

7月11日

引き続きミックス。3曲終わらせた。3曲目は久々の短時間ミックス。2時間弱。録音状態が良いと早くミックスは進む。他の曲がその曲に比べ録音状態が良く ないといった方が適切かも。この時点で予定より先へ進んでいる事を確信した。でも何が起こるか分からない,気を引き締めて明日の仕事へ向かいたい。

7月4日以来続いていたBBQが今日で途絶えてしまった。その代わりはタイ料理。スタジオの近所の店でよく行く場所であるのだが,彼らは"マイルド"の意味がわからないようだ。いつも"マイルド"を頼むと激辛で出てくる。今日も例外でなかった。

残り3曲。ツインドラム,ダブルベース,たくさんのギターとボーカルとハーモニー。どれをとっても激辛な曲ばかり。辛い物食べて燃えて来た。

*http://www.kaztsurudome.com
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M x 4: 十日目-heaviness

7月10日

今日は2曲のミックス終わらせ,3曲目に入ったところで作業終了。軽いギターの入った曲は今日で終わらせ,残りは激しくなってくる。途中で終わらせ明日仕 上げる今日は車を運転しながら聞いたら180km/hくらい出してしまいそうなアップテンポで激しい。ギターの音も自分で取ってはいるものの聴いていて気 持ちが好い。

1曲目が終わったところで耳を休めるため休憩する。Coadyと2人で隣にあるスーパーに買い物に行く。よく考えてみるとここは Hollywoodにあるスタジオ,周りはやかましくとても耳を休める環境ではない。とどめには救急車もサイレンをガンガンして通り過ぎて行き,耳を休め るどころか余計疲れてくる。

今日,始めて4人の意見が割れる事もあったがその中間を取り皆が満足。皆満足の行った顔で2つのミックスを終わらせ帰路に着く。自分は一人寂しく 明日やる曲の準備のためスタジオに1時間くらい居残り。でも曲を聴くと早く終わらせたくなり燃えて来る。明日が楽しみになってくる

M x 4: 九日目-light to heavy

7月9日

朝起き自分の部屋でできることはしていく。家でスタジオまでの時間4時間あまりコンピューターを相手にミックスの準備をする。そこからスタジオで10時間。
ミックス2日目。わり合いストレートで軽いものから始め順調に進んでいく。日本の雑誌Grindhouse http://www.grindhouse.jp/のインタビューがあり,多少の中断はあったもののなかなか良いもが出来上がっている。実験的なものが 少ないとは言え,ツインドラムと言う事でス トレートな曲をやると言う事自体が実験。トラックの数が多い事に気付いた。自分も彼らもここまで多くのトラックを利用した事はない。軽めの曲でもドラムは 重い。
とりあえず2曲終了。あっという間に時間が経っていた。一曲をもう少しと言う所で切り上げ明日スタジオに戻りまた聴き直す。アパートに戻ってからもまた他の曲の準備。だんだんと重いものへ移行していく。

M x 4: 八日目-laugh, mix



7月8日

半日を録音で使いついにミックスへと移行した。アシスタントが今日は用事があったので休みで自分で全てをやらなければいけない。昨日の"ヒヤリ"とする出来事以来,BuzzとDaleは事あるごとに「バックアップしたか?」と言ってくる。

Jared とCoardyは用事があるので早めに引き上げ久々オッサン3人の仕事となる。とは言うものの全く仕事と考えているとは思えない。人が 一生懸命ミックスしているのに横でDaleはメガフォンで叫んだり,Buzzはスピーカーを妨げようとスピーカーの前に物を置いたりと自分の邪魔ばかりす る。それらを放って置き何とか一曲目のミックスができる。まぁまぁの出来。

それをCDに焼いてくれと頼まれ焼いている時,Buzzがどれ くらい時間がかかるか聞いてくるので,自分は「かなりかかるね(冗談)」と言いかえ す。"1分46秒"最近のテクノロジーは素晴らしい(昨日と言っている事が全然違う)。コンピューターの画面を観ながら残り時間のメーターが減っていくの にあわせて自分は効果音を口で作った。それを聴いたBuzzが「Toshi,お前はコンピューターの前に居すぎだ。休んだ方がいいんじゃないか?」と言う ので自分は「休みくれよ」と言う。その横でその効果音の音がツボにはまったのかDaleが泣きながら笑っている。「今のどうやったんだ?俺には出来ない」 とヒーヒー泣いている。それを観て自分ももらい笑い泣き。その2人を観てBuzzが笑う。まだ10時前だったが夜の2時を越えたときのような状態。3人で 笑いが止まらない。

*Photo By http://www.kaztsurudome.com

M x 4: 七日目-shit happens

7月7日

スタジオに着いて直ぐに昨日やったファイルをバックアップする。その直後メインドライブが使用不能となる。何度叫んだか,"F"ワード。慌ててバックアッ プのバックアップを始める。今までに2度起きていることだからそれほど驚かなかったがこの短期セッションで起こって欲しくはなかった。今までの時間的貯金 が半分に減ってしまった。バックアップしている間に聴いた今までのラフミックスでだんだん気持ちも高まってくる。
テクノロジーとはなんとも便利であってまた面倒くさいものだ。2時間後,気を取り直して録音再開。何とか軌道に戻り録音も進んでいく。

M x 4: 六日目-70s sound


7月6日


次々に終わっていくボーカル,ギター取り。細かいギター取りが続く。自分の作ったFuzzボックス,T-Fuzzも2曲 で使われる。今日のメインの曲はT‐Rex,Cheap Trick,そしてZeppelinをMelvinsとBig Businessでわったような曲。ギターはBuzzのレスポールカスタム。アンプは自分のGretsch 6161。それにBB PreAmphttp://www.prosoundcommunications.comをかましなんとも懐かしく暖かい音を作った。MesaのRectifierのホワイトノイズ的な音が蔓延るメインストリームロックの中,この 音は聴いていて気持ちが良い。自分でセッティングしているのでほぼ自画自賛(?)。
この曲と言い他の曲と言いポップな曲もあり,なんとなく"Houdini"を思わせる。前回のアルバム"Houdini Live"が彼らを原点回帰させたのかも。勿論,ヘビーネスも忘れてはいない。
夕飯は3晩連続のCoadyのBBQ。ホットドック。
Daleの赤ちゃんをスタジオに連れてきたのとJaredが見て,「"赤ちゃんがいるから,赤ちゃんの鳴き声録音しようぜ"って言う奴多いよな。 犬を連れてくると必ず録音する奴も多いし」と言うので。自分は「"日本人がいるから日本人を録音しようよ!"って奴もいるのかな?...待てよ! Melvinsがそれやったわ!」と言い大爆笑が起こった。

M x 4: 五日目-V x 4


7月5日

ギ ター,パーカッション,(これでもかと言わんばかりの)ドラム・オーバーダブそしてボーカル取り。マスタリングの日にちも決まりますます燃えてくる。一 番驚いたのがCoadyまで歌うと言い出したこと。4人が歌っている。Buzzの声にJaredの声がまた良く合う。Daleはハーモニーを重ねる。 Daleは「Toshi(今更名前隠しても...),お前はハーモニー好きだから曲を気に行ってきたろ?」と図星を指される。
こ う言う風に書くと 彼らが真剣に取り組んでいるようだが実際はふざけている。トークバック(録音している側に卓からコンタクトできる装置)で 歌っている人に大声で叫んだり,ふざけた事を言ったり。余裕があるのか,それともただ子供っぽいだけなのか...でも練習を念入りにしていただけ進み具合 が半端ではない。スタジオのオーナーも「なんでこんなに早くできるのだ?」と驚きを隠せない様子。"時間をかければ良いものができる"と考えている大手レコード会社やミュージシャン,プロデューサーに"目に物見せる"ならぬ,"耳に物聴かす"作品になれば良いのだが...

*Photo:http://www.kaztsurudome.com

M x 4: 四日目-BBBQ

7月4日

ベース取りに集中。基本的にはダイレクトとアンプにマイクをつけたものがロックのやり方と言っても過言ではないのだが,ベースアンプとキャビネットが2 つ。それぞれの音が違うため2つのマイク,それプラスダイレクト。計3つのトラックが使われる。しかも3曲はダブル。つまり6個のトラックを使う曲もあり とてつもない低音が響きそうなアルバムになって来た。
Jaredはツアーの場数を踏んでいるだけに録音がスムーズに進む。夕飯をまえに11曲のベース取りが全て終了。Buzzのギター取りに移行。
その飯がCoady,Daleの二人が暇していて,独立記念日と言う事もありBBQに。ハンバーガー二つにホットドック一つ。この二人BBQを作 らせると半端ではない。これはBuzzも何処かのインタビューで言っていた。Jaredもかなりの腕らしい。自分は食う方専門。BuzzとDaleは BBQをするたび「日本人は皆,ホットドックの大食いコンテストで優勝できるくらい食える」と自分の大食いにあきれかえる。録音しながら食べるハンバーガーは格別。機材がベトベトになっていないかが心配。

M x 4: 三日目-ah-yeah!

7月3日

写真家の友人http://www.kaztsurudome.comが 初日の後半から撮影でわざわざ来てくれた。今日が彼の最後の撮影の日。自分の家を宿にしてもらっていたので行動は スタジオまでは一緒。早めに着いたため早めの昼飯にする事に。これが今日のキーだったかも。これを一気に食わずに合間をみてかじっていたので満腹になら ず,眠気もなく仕事に集中し始めた。
4人は昨日難しいのを終わらせていたため乗りまくる。次々に終わっていくドラム取り。自分の曲の整理に追われ るのだが自分も乗っている。難なく 片付け気付いてみればドラム取りが終了。友人も納得の行った写真がとれた様子。ベースのダブにそのまま流れ込む。ツインドラムにベースのダブル。4人がそ れぞれの意見をもってはいるものの方向 性は離れていない。Buzzがアイディアを出すが「それは後にしよう」と自分が言う。するとJaredが「Toshi,ベース同じ音でダブ ルにしよう」と言う。「OK,とりあえずやってみよう」と答えて録音するとBuzzが「これ良いな」 このまま突き進めると良いのだが。油断大敵。それにしても曲が良い。出来上がりが楽しみだ。

M x 4: 二日目-smells gold

7月2日

久々に興奮してあまり寝れなかった。あの爆音がスピーカーから流れてくるのを思い出しニヤニヤして寝れなかった。眠気が残る中ス タジオに向かい早速レコー ディングに移る。昨日の悪夢も忘れ(てはいないが)何とか立ち直りやっと軌道に乗り出し5曲とり終える。ドラムがメインのこのアルバムだけにCoadyの みならず珍しくDaleまでがピリピリしている。遅い曲,速い曲,ちょっと軽い曲,かなり重い曲,やる曲やる曲が多少違い今回のアルバムの期待は高まるば かり。Buzzに「今回のはまたラジオで流れるな~(皮肉たっぷり)」と言うと「何か臭うか?臭うだろう?ゴールドの臭いだ!」とお互いにふざけあう。 ゴールドと行ってもらいたいものだ。

M x 4: 一日目-one too many



7月1日

バ ンドの到着が渋滞で1時間遅れたり,機材が壊れたりさんざん...曲が1曲しか終わらなかったのが今日の段取りの悪さをものがったている。でも曲がカッ コ良いし,ツインドラムの迫力は完全に収められていると思う。とりあえず明日から全力疾走するしかない。ドラムに使われたマイクの数:普通のが22本,ふ ざけたのが3本。明日はふざけたマイクを2本ばかし増やすつもり。

*写真は機材がぶっ壊れて慌てふためくおろかな自分,(Photo:http://www.kaztsurudome.com)